第17話 地獄へと

またも説明回になってしまう...

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その後俺が過ごした一か月は、正に地獄のようなものだった。



誰とも面会を許されず、鉄格子すらない鉄の箱のような馬車で港まで移送され、カビだらけで鼻が曲がるほどの悪臭が漂う船内の牢獄に押し込められる。


酷い船酔いで何度も吐く。しかし、行き場のない自分の吐瀉物が悪臭を放ち、更に吐き気を催す。


食べ物は、カビの生えかけたガチガチのパンと腐敗臭のする謎の肉が一日に1度だけ投げ込まれるだけ。



あまりの酷さに精神が壊れそうになる。


それでも、自分の中にある何かを削ぎ落して、ただ怒りだけを支えにして何とか耐える。



(許さない、許さない、許さない、許さない。絶対に許さない。何があっても、どんな目にあっても、絶対に復讐してやる。どん底から這い上がってやる...)




―――いや、俺の精神など、既に壊れているかもしれない。







「出ろ」


そうして船に揺られること数日。船に乗ってから何日経ったのかを数える事すら諦めた頃、久しぶりに自分のではない声が聞こえた。


その声に従って、数か月振りに見る太陽のまぶしさに目を細めながら甲板に上がる。


何度か瞬きをした後、しっかりと目を開くと――



そこには、要塞とも監獄とも言える、巨大な建造物があった。





~三人称視点~


監獄島という場所について説明するには、監獄島周辺の情勢について理解しておく必要がある。


ライトがかつて居た王国、アルハイマー王国は広大な領土を持つ国だ。

東側には王国と非常に仲の悪い帝国が存在しており、更にその東側には竜が住むとされる山脈が広がっている。その先には別の国が存在するらしいが、王国との繋がりはほとんどない。



そして、王国の西側、“アトランティック海”と呼ばれる大海を超えた先には、王国をは違った人種、文明圏を持つ大陸があった。

そして、その国には豊かで広大な農作地や鉄鉱石などの豊富な資源が眠っていた。

それらを欲した王国が、その大陸全てを植民地にしようと画策し、第一次征伐軍を派遣。

それにより“異大陸征伐戦争”――王国側の一方的な呼称だ――が勃発した。


当初、征伐軍は快進撃を続けた。それは、その大陸には大きな国家というものがなく、いくつかの都市国家が点在するのみだった。


王国が欲するのは資源のみだったため、王国にとって住民は不必要だった。そのため、征伐軍は嬉々として原住民の部族を蹂躙、虐殺して滅ぼして回った。


そして、それに激怒した各都市のリーダー達が結託し同盟を発足。当初は数個の都市間の同盟でしかなかったそれの規模はどんどん大きくなり、やがて一つの国家に匹敵するものになった。


それが、その異大陸に唯一存在する国家、所謂“合衆王国”の誕生の理由だ。

部族間での垣根を取り払い、一致団結した合衆王国軍は第一次征伐軍に反撃。

王国が橋頭保として一番最初に攻め込み、王国側の要塞とした都市“ローム”まで撤退させた。


合衆王国軍はすべての土地を取り返さんと猛攻を繰り返したが、何としても橋頭保を残しておきたい王国はロームへ援軍を派遣。そして、異大陸への中継地、オースティン諸島を要塞化した。


そして、ローム周辺に流れるアルベイン川での戦闘は激戦となった。


技術面では優位に立つ王国側が優勢だったが、目立った戦果が得られなかったため、国内で反戦運動が起きた。

そして合衆王国側としてもこれ以上の戦線の拡大は避けたかった為、両国の間で停戦協定が結ばれることとなった。


それは、王国がローンから撤退する代わりに、合衆王国は王族――かつて最も有力都市国家だった一族が王族となっていた――を一人、王国の戦果として差し出すというものだった。


両者はこれに調印し、合衆王国は王子を王国に引き渡した。

征伐軍も本国からの艦隊に乗り込み――



―――そのまま、合衆国王国の島、“ジョスティック”へ攻め込んだ。

戦力のほとんどをローン周辺に配置していた合衆王国はこれに対応できず、そのまま王国軍に占領されてしまう。



その後もなんやかんやあったのだが、説明すると長くなってしまうので、それは省略しよう。


ともかく、王国が占領したその島はオースティンよりも異大陸に近く、重要度も高かったため要塞化された。そして、オースティン諸島の要塞群は無用の長物となったのだ。



この無用の長物の用途が見つからなかった為、一時は廃棄する案もあったのだが、そこで浮上してきたのが監獄島案だ。


重大な犯罪を犯したものの何らかの理由で処刑できない者、その人物の危険性から本国に居て欲しくない者、そして合衆国軍の捕虜などを収容するためにちょうどいい環境と設備が揃っているため、バミューダ要塞群は監獄島へと変貌することとなったのだ。



長くなってしまったが、つまり、監獄島とは戦地に程よく近く、敵国の捕虜と凶悪犯が押し込められた、正に地獄のような場所。




―――そう、つまりライトは、更なる地獄へ送られる事となるのだ。



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9/25修正済み

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