第15話 きっかけ
俺は今日の戦いの結果をエルに伝えるために、街を歩いていた。
エルになんて言われるかな?今日の戦い、もっと上手く出来なかっただろうか?
そんな事を考えながら歩き、もうすぐスラム街に入りそうな時だった。
ーー女性の悲鳴が、聞こえた。
それを聞いて、すぐに音のするほうへ駆け出す。
ここはまだスラム街では無いとは言え、十分治安の悪い所だ。こんなところに女性で女性の悲鳴が聞こえたという事は、絶対に碌なことじゃない!
そう思った時、悲鳴がどんどん小さくなり、遂に途絶えてしまった。
早くしないと、女性の命が危ない!!
更に速く走り、悲鳴のしていた方向に向かっていく。
そうすると、乾いた音と湿った音が混ざったような気持ち悪い音と、下卑た笑い声が聞こえてきた。嫌な予感がしつつも、その音のもとに辿り着くとーーーーーー
「......ッ!?ゲスがァ!」
目の前で行われている、道を踏み外した最低な行為をしているゲス共に、一瞬で怒りが頂点に達した。吐き捨てた罵声とともに全力で斬りかかる。
「うおっ誰だおま...グハッ!」
「くたばれぇ!」
こんなゲスに生きる価値はないッ!!
怒りのままに首を跳ねる。
「なにしやがる!」
「ぶっ殺すぞ!!」
今更ながらに事態に気が付いた間抜け共。そいつらが、仲間を殺された怒りで俺に斬りかかってくる。
「死ねェ!」
「死ぬのはてめぇらだぁあ!」
だが、所詮はこんなところでこんな事をする底辺以下。落ちこぼれとは言え、学園で人の殺し方を学んできた俺に勝てるはずもなく。
一瞬で一人の腕を斬り飛ばし、そのままもう一人の頭を横から切り裂く。
「...ッ!う、あ、あぁ、アァァァア゛ア゛!いだい痛い痛いぃ!」
二人目は一瞬で一瞬で楽になれた分まだましだろう。だが、腕を斬り飛ばされた一人目は遅れてきた激痛に悶え苦しみ、情けなく泣き叫んでいる。
「た、頼む!もうこんな事しないから助け」
「死ね」
ーーー容赦せずに、殺す。
○
「ーーーーハァ、ハア...」
...犯罪者とは言え、人を殺したのは初めてだ。腕を、首を、頭を斬り飛ばした。肉を斬り、骨を断った時の気持ち悪い感触。自分の周りは、生首や腕が転がり、血塗れになってしまった。思わず吐き気が込み上げるが、何とか抑えた。
まだ、やる事が残っているーーーー。
○
最悪な一日だった。
屋敷の部屋で、本日何度目か分からないため息を漏らす。
ーーーあの後、被害にあった女性を助けるために、女性を抱え、傷などがないかを確認した。
泥や髪でよく顔は分からないが、意識を失ってただけらしく、ホッとした。
そしてゲス共が視界を塞ぐためにつけたのであろう目隠しを外たのだがーー
目に光が入った瞬間目を覚ましたらしく、女性が目を開る。状況を掴めていなように何度か瞬きするとーーー
「あ、あぁぁあああ!!」
暴れながら俺を押しのけて立つと、フラフラしながら走り出してしまった。
「ちょ、大丈夫ですか!?」
「来ないでぇ!!」
思わず心配して声を掛けるが、拒否されてしまう。
...よほどショッキングな出来事だったのだろう。多分、意識が混濁しているのだ。
あの感じだと、俺が加害者だと思ったんだろうな......
そして、あれがあった後にエルと会いに行く気力など湧くはずもなく、そのまま屋敷にとぼとぼと歩いて帰り、今に至る。
もっと助けに入れていれば...と自責の念に駆られるが、もうどうしよう事なのだ。
再び、深い息を吐く。
「はぁ、最悪だ...」
ーーーーーーーーーだが、嫌なことというのは総じて連続で起きる物だ。
そしてそれはライトも例外ではなく、“最悪な一日”はすぐに更新されてしまうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つ、次までにあらすじに追いつくんで!
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