第8話 試験



「今のはーーー証?」


先程の不可解過ぎる現象。あれは、魔術なんて物じゃない。

そして、この世界で魔術以外の人智を超えた力と言えば一つしかない。


さっきのアレは、間違いなく“証”だ。


「ぶっぶ〜!いやぁ、惜しいな~!」


だが、俺の予想と反し、エルの口から出てきた言葉は、俺の質問を否定するものだった。

そんなエルのふざけた返事に、思わず眉をひそめる。


「じゃあ何だっていうんですか?」


「うーん...なんて言えばいいんだろうね。いや、まあ似たようなものかな?」


エルの言っていることがイマイチ理解できず、首をかしげる。



「そんな事より、いいのかい?呑気に話してたら5分過ぎちゃうよ?」


「...あ」


しまった、すっかり見落としていた。

五分以内にエルが俺のことを認めなければ、俺はその場で殺されるのだ。

このままではまずい。何か行動に移さなければ。

そう考えて少し焦るが、無策で突っ込む訳にはいかない。

唯一の取柄である剣術が通じないとなると、こちらにできる事などない気がする。


だめだ、考えろ考えろ考えろ!

あんなインチキじみた技に弱点がないはずがない。

そう自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせる。


そして、改めてエルのことをよく観察し、状況を整理する。


...が。だめだ、特に変わった所などない。

気になるとすれば、その仮面くらいだが、あれは単純に顔を見せたくないからつけているような気がする。

そもそも、さっきのアレはどういう技なんだ?

手応えはあったのに、エルは全くの無事。

エルの一撃を避けたときに風を感じたから、実態がないなんてことはないだろう。

何とも言えないが、無理やり言葉にするなら“なかった事にされた”といった感じだ。


考えられるのは、俺に「斬った」と感じさせる程高度な幻惑か、もしくは切った瞬間回復したかだ。


...どちらにしても、こちらにできる対策などない気がする。

魔力切れになるまで斬り続ければなんとかなるかもしれないが、そもそもさっき斬れたのはエルに避ける気がなかったからだ。本気で戦ったらそもそも近づけすらしないし、昨日の戦いでコイツが見せた圧倒的な魔術力から考えると、5分程度じゃコイツの魔力は切れない気がする。



「ハァ...クソが。」


無謀だし、勝ち目もないが、もう何も考えずにガムシャラに戦うしかない。これは勝つための戦いじゃない。相手に認めさせる戦いだ。

死ぬ気で戦って、何としてでも認めさせる。


「やってやるよ!」



...............

.........

......

...




「まあ、面白みには欠けるけど、悪くない判断だと思うよ。」




汗だらけになり、ゼェゼェ言ってる状態で地面に仰向けになってる俺に向け、エルが声を掛けてくる。


「ハア、ハア...ご、合否は?」


めちゃくちゃ緊張する。あれしか出来なかったとは言え、自分はエルに手も足も出なかったのだ。合格だったら良いが、不合格だったらこの場で殺されるのだ。


「う~~ん...」


緊張の一瞬。

先程の戦いでかいた汗とはまた違う、嫌な汗が出てくる。

そして、エルが口を開きーーーーーーーーー









「合・格♪」






「ッ...ハァァァアアア...良か...ったあああ」


その一言で体中から力が抜ける。

そして、緊張の糸が一気に切れたせいか、呼吸が一層激しくなる。

先程の戦いの終盤、何としてでも認めさせてやるという鬼気迫る思いで限界を超えて戦ったのだ。体中が悲鳴を上げている。


「にしても、君の攻撃、全然通じてなかったね!」


「......いや、無理だろあれ!あんなの...ゲホッ...ど、どう対処しろってんだっ!!ズルだズル!」


「だから言ったじゃないか。悪くない判断だ、って。君がどんな策を弄してこようと、僕には通用しないよ。そういう意味では、ある意味最善だったかもね。君の“認めさせてやる!”っていう気概は伝わったからさ。」



...まあ、そうなんだけどさ。

ヒロの時といい今回といい、自分の力が全然通じないと自信なくすよなぁ...






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

星ついたあああああぁぁぁぁあああ!?

よっしゃあああああ!イエエエエェェェイ!

フォオオオオオ!見たかゴラアア!カモオオオン!


ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!



ここから俺の成りあがりが始まるんだああ!!

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