第30話

翌朝、一行は朝食を済ませ、早速入隊するために王都軍本部へ向かうことにした。

宿屋の主人に聞いたところ、大通りをイゼクソン城方面へ進むと、

街の中心部の噴水広場に行きつくという。

その噴水広場から右側、王都の東に本部は位置しているという。

そこで試験を受け合格すれば入隊が認められるという。

ちなみに、王都の南側に店や市場、今泊まっている宿屋がある商業区。

王都の西側に、居住区があるという。北側にはイゼクソン城及び、貴族などが住んでいるらしい。

大和たちは主人から貰った地図を頼りに、王都軍本部へと向かった。


「さて、このあたりだと思うぜ。」

「あ、これじゃないですかっ? 建物も大きいし軍の兵士もいますし。」

「よし、行ってみよう。」


その大きな建物の前には大きな門があり、両脇に兵士が待機していた。


「すみません。王都軍本部はこちらで? 」

「ああ、そうだが。何の用だ? 」

「入隊希望で、ここで試験を受けられると聞いたんだが。」

「入隊希望者か。では、こっちへ来い。」


門の前にいた兵士に連れられ、本部内へと入った。

本部内はとても広く、綺麗に整頓されていて隅々まで掃除も行き届いている。

そして大和たち以外にも多くの入隊希望者が見られた。

大和たちは兵士に正面の受付に案内された。


「入隊希望者だ。案内してやってくれ。」

「かしこまりました。では皆さんまずは王都軍の説明と、試験の内容について説明させていただきます。」


王都軍の受付は淡々と説明を始めた。

まず、王都軍の中には四つ部隊があり、それぞれの部隊で試験の内容が変わるとのこと。

一つ目の部隊は前衛部隊。主に近接戦闘を得意とするもので構成されている。

二つ目は後衛、援護部隊。後方からのサポートを得意とする者たちで構成されている。

三つ目は魔法部隊、文字通り魔法を得意とする者たちで構成されている。

かつてベイルじいさんが隊長を務めていた部隊である。

そして四つ目は医療部隊。回復、治癒を得意とする者たちで構成されている。

以上四つの部隊で王都軍構成されている。

まずは、どの部隊に入隊したいかを決めるところから始めるとのこと。

大和と白は前衛部隊、エドは後衛、援護部隊、ルマリーザは魔法部隊、ティナは医療部隊、それぞれ得意なものを生かせる部隊を選んだ。


「ではそれぞれの部隊から案内がありますので、しばらくお待ちください。」

「ああ、わかった。」

「ティナ一人で大丈夫かい? 」

「はいっ! 頑張って絶対合格しますっ! 」

「お、張り切ってんなティナ。」

「俺達も気を引き締めていくぞ。」


「じゃあまたあとで。」

「ええ、皆さん頑張りましょう。」


しばらく雑談をしていると、各部隊から兵士が大和たちの元へきて、

それぞれの入隊試験会場に案内された。

本部の中には複数の訓練場や、部屋が存在しており、それぞれ案内された。

前衛部隊の試験会場は、本部の中庭に位置する訓練場。

訓練場には試験官が待っていた。


「王都軍前衛部隊、入隊試験へようこそ来てくれた。私は第二前衛部隊隊長ルピエだ。よろしく頼む。早速だが、試験内容を説明させてもらう。」


ルピエは説明を始めた。

試験内容は二つあり、一つは一対一の戦闘。

もう一つは、複数対一の戦闘。もちろん一人はこちら側である。

敵の多い前衛に出るため、一対一はもちろん複数の敵相手にも対応できるか見られるようだ。

二つの試験とも兵士と模擬戦を行い、勝利を収めれば合格である。


「以上が試験内容だ。試験の前に何か質問のある者は? 」

「武器は何を使ってもいいのか? 」

「こちらで用意した訓練用の武器から選んでもらう。素手で戦いたい者はそれで構わない。ほかに質問のあるやつは? 」


すると一人の入隊希望者が質問をした。


「メイア様はこちらにはいないんでしょうか? 」

「はぁ…。毎回いるんだよ。メイア様に会いたいがために、入隊を希望する輩がな。そんな邪な理由で入隊希望する奴はわが軍には不要だ。今すぐ帰れ。おい、こいつを外へ。」

「ちょっ…、何するんだよ、離せよっ! 」


ルピエに指示された兵士は、その入隊希望者を外へとつまみ出した。

そしてルピエは呆れたような口ぶりでこう続けた。


「だいたいメイア様をなんだと思っているのだ。王都軍の総隊長だぞ。入隊の試験官なんてするわけなかろう。」

(メイアってやつは総隊長だったんだな。)

(ええ、女性で総隊長とは。凄いですね。)

「コホン。あー少し邪魔が入ったが、試験を始めようと思う。よし、まずは黒髪のお前。準備はいいか? 」

「ああ、いつでも構わない。」


大和はルピエに指名され前に出た。

試験を目前に、大和は一呼吸着いた。

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