第29話
王都を探索したメンバーは、皆宿へと戻っていた。
辺りはもう夜になっているため、夕食を摂りながら王都で集めてきた情報を共有した。
「じゃあまず俺と白から。」
「僕と大和さんで、冒険者ギルドへ行ってきました。そこで王都の軍がなんでセイルなどに派遣されない理由がわかりました。」
「理由っていったい何だい? 」
「王都の守護はもちろんだが、王都から西に位置するレゾルト山脈を拠点にしている山賊たちの被害に苦しんでいるらしい。」
「なんでもその山賊は獣人を中心として構成されているらしく、王都軍もなかなか手を焼いているそうです。」
「獣人? 」
「獣人とはその名の通り、獣と人両方の特性を持つ者たちのことさ。身体能力が高く、知性もある。」
「それで苦戦している訳なのですね。」
「ああ、だが俺と白は少し引っかかっている。」
「何に? 」
「今日王都に入る前、少し多いぐらいの軍の兵士たちがいましたよね? 」
「確かに多かったが、それがどうした? 」
「魔王騒ぎで王都を守っているってのはわかるが、山賊に手を焼いている割に王都周辺に兵を配置し過ぎではないか? 」
「確かに言われてみるとそうかもしれねーな。」
「ええ、なのでちょっと怪しんでいます。」
「なるほどな。」
続いてエドの順番。
エドは自分の作成した銃弾をみんなに見せた。
「これはなんだい? 」
「ああ、これはなこの世界には概念すらない武器の弾だ。銃のな。」
「銃? 」
エドは指輪を銃へと変形させ、弾を込めた。
「これが銃だ。そしてこの銃弾が発射される。」
「ほお。それは興味深いね。威力はどのぐらいなんだ? 」
「心臓を貫けば人でも助からない。殺傷性は高い。ただ、こんな街の中でぶっ放すもんじゃない。」
「なるほどな。」
「あと今日買ってきた鉱石でとりあえず作ってみたんだが、数が少なねぇからあんま無駄撃ちもできん。」
「数がいるのか? ちょっと貸してみろ。」
そういうとルマリーザは銃弾を手に取り、魔力を込めた。
そして銃弾を複製した。
「これで数は問題なかろう? 」
「すっすごいですっ。」
「ま、魔女って何でもできんのな…。とはいえありがとうルマリーザ。」
「このぐらいお安い御用さ。」
そしてエドは王都直属の鍛冶師、バイアンという男がいるとみんなに話した。
エドはそのバイアンがとても気になっているという。
「そのバイアンって鍛冶師に会うためには、軍に入らないとだめなのか? 」
「ああ、弟子を何人も持って軍の装備を作っているらしい。」
「でも君らには指輪があるだろう? 鍛冶師に武器を作ってもらう必要はないんじゃないか? 」
「そうなんだが、この指輪は一つの武器にしかならないみたいだ。大和も脇差が欲しいと言っていたが、この世界には両刃の剣しかない。」
「そうか…。」
「ただこっからは俺のカンなんだが、そのレベルの職人ならきっと銃や日本刀に興味を持つと思う。もしかしたら武器作ってくれるかもしれねーなと思ったわけよ。」
「それで気になっていると。」
「そーゆーこった。」
そして最後にティナとルマリーザの番。
色々な出店や市場で人がにぎわっていたことと、
王都軍の隊長が、メイアという女性であり、とても民から人気があったということを伝えた。
「その隊長さんなら、ティナの両親の事わかるかもしんねーな? 」
「ああ、私もそう思ったがどうも一般人にはとても話せるような人物ではないみたいだ。」
「軍の仕事で民には構っている暇はないみたいですっ。」
「なるほどな。」
「そういえば、お揃いのネックレスしていますね。」
「いいだろう? ティナが買ってくれたんだ。」
「よく似合っている。」
「ありがとうございますっ。」
それからしばらく今後の方針について話をした。
ティナの両親、王都軍、山賊、どれも魔王を倒すには避けて通れなさそうだ。
皆が頭を悩ませ、色々と案を出し合った結果、一つの答えにたどり着いた。
「軍に入隊しよう。」
「ええ。」
「まあそれが一番近道かもしれねーな。」
「でも入隊試験があるんですよねっ? 私、大丈夫でしょうか…。」
「やってみないと分からないよティナ。それにみんなついている。大丈夫だよ。」
「…そうですよね。私頑張りますっ! 」
「うっし、じゃあ明日早速軍の元へと行ってみるか。」
「そうですね。」
明日に備えて今日はもう休むことにした。
それぞれ部屋に戻り、ティナとルマリーザは少しだけ魔法の修行をした後、眠りについた。
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