第22話
「ところでお前ら。この後はどうするんだ? わしはセイルに留まってくれるとありがたいが。」
「いや、もう一泊したところで明日から王都を目指そうと思う。」
「町のことは大丈夫でしょう。もし何かあっても冒険者の方々がいますから。」
「そうか…。それは残念だ。しかしなぜ王都に? 」
「私の両親がいるんですっ! 」
ティナは王都へいる両親とこれまでの経緯をジャストンへと話した。
「なるほどな…。わかった。明日出発する前にわしのところへ寄ってくれるか? 」
「ああ、わかった。」
一行はジャストンと別れ宴会場を後にし宿へと戻った。
明日の出発に備えて休んだ。
翌朝、一行はジャストンのところへと向かった。
「ジャストン。来たぞ。」
「おお、待っておったぞ。」
そこには、数日分の食料とテント、さらには荷馬車まで用意されていた。
「これは? 」
「ああ。お前たちへの報酬だ。受け取ってくれ。」
「俺らに報酬はなかったんじゃなかったかー? 」
「あの戦果を見せられて、報酬はなしだ。とは言えんだろ。それにほかの冒険者たちが一番功労者はお前たちと言っていたからな。それに王都へ行くのだろ? 歩きだとだいぶ時間がかかる。馬車なら三日ほどあれば着くからな。」
「ありがたく受け取らせていただきましょう。」
「そうだな、ジャストン助かる。」
「こちらこそ助かった。ありがとう。」
そして一行は荷物を馬車へ積み、出発の準備を整えていた。
その最中、ルマリーザが潜伏していた廃墟について話していた。
「あの廃墟はもともと私のものじゃない。好きにしてくれていいよ。もちろん罠や魔物などはすべて排除してある。」
「そうか、ではこちらのほうで処理させてもらう。」
「ああ、勝手に住み着いてすまなかったね。」
「もう済んだことだ。気にするでない。」
そうこうしているうちに旅の支度が整った。
セイルの町を出ようとすると、ジャストンや冒険者、町の住人たちが見送ってくれた。
「お前たちと戦えてよかったぞー! 」
「何かあったらまた協力させてくれ! 」
「元気でなー! 」
「ああ、みんなありがとう! 」
セイルの人々からの声援を受け、王都へ向けて出発した。
馬の手綱はエドが握り、荷台にみんなが座っている。
王都には一つ山を越えなければならないという。
歩きではとても大変だっただろう。ジャストンには感謝だ。
食料はパンと肉や野菜、スパイスなど困らないほど積まれていた。
更には調理器具まで積んであった。ジャストン様様である。
「わーすごいですっ。たっくさん食料がありますよー。食事には困らなそうですっ。」
「本当だね。ティナ食事は作れるのかい? 」
「はいっ! 作れますよ! 食事は私が腕によりをかけて作っちゃいますっ! 」
「お、ティナの料理かー。旨いから期待してるぞー。」
「はいっ! お任せください! 」
しばらく雑談をしながら一行は王都へと歩みを進める。
一方そこのころ神界では異様な盛り上がりを見せていた。
「やっぱあいつらただもんじゃねぇな…。」
「ああ、今回は勇者側で決まりだろう。」
「いや、まだ早いだろ。魔王側の目立った動きもない。」
大勢の神たちが今回のゲームを見ながら意見を交わしている。
そんな神たちを見ながらニアがつぶやく。
「相変わらずだねぇ…。」
「なーにが相変わらずなんだぁ? 」
「ガルフか。いやいやこっちの話だよー。」
「この野郎、またもったいぶりやがって。」
「ちょっ、揺らすのやめてよー。」
「まったく気楽なもんだな。」
「あ? ってお前…。」
「エジル…。」
ニアたちの前に現れたのは、今回のゲームで魔王側の神。対戦相手である。
エジルと呼ばれたその神は、長く黒い髪をオールバックにしており、
鋭い眼光をニアたちへと向けている。
先ほどのお気楽ムードから、一気にその場の緊張感が増した。
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