第23話

「んで、エジルよ何の用だ? 」

「ガルフ。貴様には用はない。そこのお気楽な神に用があるだけだ。」

「んだと? 」

「ガルフちょっと下がってて。それにお気楽ってそんな言い方はないんじゃない? 」


ニアとエジルはお互いに火花を飛ばす。


「たかだか下っ端を倒したところで浮かれるなよ? ニア。」

「別に浮かれてなんかいないよ。それより自分の心配したほうがいいんじゃない? 僕が送った彼ら相当強いよ。」

「そんなこと見ればわかる。が、魔王に勝てるかどうかは別だ。」

「やってみないと分からないよねぇ? それにあの魔女。こちらには好都合だ。」

「魔女一人ごときでこちらの有利は揺るがない。また勇者たちが負けるのをそこから見ておけ。」

「そっちこそ後で吠え面かくなよ? 」

「フン、言ってろ。」


エジルはそういうとニアたちの元から去っていった。

ガルフがエジルの態度に憤りを感じていた。


「ったく相変わらずいけ好かねー野郎だぜ。」

「まったくだよ。」

「あーもうこうなりゃ酒だ酒! ニア付き合えよ! 」

「えー…。」

「えーじゃねぇ。行くぞ。」

「わかった!わかったから引っ張らないでっ! 」


ガルフは半ば強引にニアを酒場に連れて行った。


(まだ油断してはダメだよ。まだ始まりに過ぎない。ここからだ。)


神界は只ならぬ盛り上がりを見せているが、

ニアは静かに三人たちを見守っていた。

神界で色々と起きている中で、

大和一行は王都へ行くためには超えないといけない山の麓までたどり着いた。

あたりはすでに暗くなっており、今日はこの場で野宿することにした。

ティナがせっせと料理の準備をしている。とても張り切っているようだ。

ルマリーザがティナを手伝い、その間に男性陣がテントの設営をしている。

しばらくするととてもいい匂いが漂ってきた。

ティナお手製の料理が完成し、皆で食事をとり始めた。


「いただきます。」

「うん。やっぱティナの手料理はうまいな! 」

「そうだね。とてもおいしいよティナ。今度私にも教えてくれるかい? 」

「皆さん褒めすぎですよっ。ルマリーザさん私でよければ教えますよ!」

「ルマリーザ、料理できないのか? 」

「多少はできるさ。ただここまでのものはなかなかね。」


大和たちはわいわいと雑談を交え食事を楽しんだ。

すると、ルマリーザが真剣な顔で質問を投げ泣けた。


「一つ聞きたいことがあったんだか、君たち三人はどこの生まれだ? その剣術や体術はどこで身に付けた? 」

「それは…。」

「うーん、まあその…。なぁ? 」

「いずれ話しておかないとといけないことだ。今のうちに話しておこう。」

「…ですね。」

「ああ、そーだな。」


大和たちは別世界から来たことを話した。

別世界では死んでおり、神に召喚され用意したゲームに参加させられていること。

そして勇者としてこの世界の魔王を倒さなければいけないこと。

そして元の世界での記憶がなくなっていること。

すべてを二人に話した。


「神…ね。にわかには信じがたいが、どうやら噓を言っているわけではなさそうだね。」

「ああ。この世界に魔王が復活したのも神のせいだ。」

「なるほどな…。人を導くはずの神がね…。なんか笑えてくるよ。」

「つまり、お三方はこの世界の人間ではないってことですよね? 」

「おう、その通りだ。ちなみにベイルじいさんには見抜かれていた。」

「ええ、なんでもこの世界の人間と気が違うそうです。」

「おじいさまは知っていたんですね。」

「別世界から来たとなると色々合点がいく。君たちの戦闘術はこの世界では見たことないものだったしね。でも前世での記憶がなくなっていることはちょっと引っかかるね。」

「ええ。僕たちもそこは引っかかっています。」

「自分の名前や自分の特技などはわかるんだが、それ以外の事が全く思い出せない。」

「俺達を召喚した神は召喚の影響で一時的に記憶がなくなっていて、そのうち思い出すとかなんとか言っていたが全く思い出せん。」

「そうか…。でも魔王を倒すことができれば元の世界に帰れて記憶も戻るのだろう? 」

「ああ、そのはずだ。」

「であれば問題なしだな。目的は一緒だ。」

「そうですねっ! でも私を両親のところへ連れて行ってくれるのは迷惑じゃないですか? 」

「いやそんなことないですよ。この世界の話を聞いたときにどちらにせよ王都には寄らないといけないと思いましたから。」

「ああ、俺たちはまだこの世界についてはぺーぺーだからな。色々と知っておきたい。」

「それにこれから先どんな敵が待ち受けているかわからない。王都軍の協力も必要だと思う。」

「ああ。それについては私も賛成だ。君たちはとても強いが、魔王軍に立ち向かうには数が少ない。味方は多ければ多いほどいい。」

「そうだな。さあ今日は休もう。夜の警備は男三人で交代してやる。二人はゆっくり休んでくれ。」

「すまないね。ティナ、お言葉に甘えることにしよう。」

「はいっ。ありがとうございますっ! 」


ティナとルマリーザは設営されたテントに入り眠りについた。

大和たち三人はそれぞれ時間を決め、夜間の警備をすることにした。

色々な思いが渦巻く中、静かに夜は更けていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る