第18話

<君たち、私は砦付近で敵大将を足止めしておく。その間に周りを崩して砦まで来てくれ。>

<承知した。>


ルマリーザはアロンを足止めし、廃墟で大和たちに対峙させたスケルトンと泥人形を使い砦周辺の敵を相手している。

砦を目掛けて大和と白を筆頭に次々と冒険者たちが魔物と対峙する。

しかし、魔物達の数が多く統率がとれておりなかなか砦までたどり着けない。

近接戦闘はもちろんだが、砦を覆うように柵が点々と設置されており、

そこから弓矢で攻撃を仕掛けてくる。

味方の冒険者たちも徐々に負傷しているが、後方ティナ率いる回復班によって治療されている。


「大丈夫ですかっ。今治しますからね! 」

「ありがとう嬢ちゃん。」

<なかなかやりますね、この魔物達>

<頭の奴が相当頭の切れる奴だな。>

<エド、後方からの援護射撃で向こうの弓部隊を迎撃できるか?>

<おうよ、任せろ。>

「野郎ども、火矢を放て!」


エドの号令と共にエド部隊は弓部隊の柵へ火矢を放つ。

そして白が機転を利かせて風魔法で突風を起こし、燃え広がる速度を加速させる。

弓部隊の魔物達は炎と無数の矢で混乱し始めた。


<エドさんナイスです。>

<白もサンキューな!>

「みんな敵が混乱し始めた。一気に攻め込むぞ! 」

「あいつらに続けぇー!」

「ニンゲンドモニスキニサセルナ!」


燃え広がる炎の中、冒険者たちは一気に前線を押し上げる。

魔物達も負けじと応戦しているが、大和たちの勢いは止まらない。

あと少しで砦という所までたどり着いた。


<あと少しだな。>

<ええ、早くルマリーザさんのところへ向かいましょう。>

<大和、白。砦の入り口の前になんかでかいのが見えねーか? >

<え? >


三人と冒険者が見たものは巨大な岩でできた人型の魔物だった。

その魔物は巨大な壁のように砦を守っている。


<ルマリーザ聞こえるか? >

<どうしたんだい? >

<砦の前に巨大な魔物がいる。ありゃなんだ? >

<おそらくそれはゴーレムだろう。 とっても固いから気を付けるんだよ。>

<気を付けるって…。なんかないのか? >

<私も手が離せないんだ。それに君たちなら倒せるはずさ。>

<わかった。>


三人はゴーレムの前までたどり着いた。

ゴォォっと轟音を上げながらゴーレムはこちらににらみを利かせている。

ゴーレムに向け大和が跳躍し斬りかかるも、ゴーレムの体は固く刃は通らない。


「くっ、固いな。」


そしてゴーレムはその巨大な腕を振り回し、大和たちへと攻撃してくる。

動きは鈍いが破壊力は相当なものだ。

その巨大な一振りに冒険者たちは吹き飛ばされる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ。」

「大丈夫かお前ら!? いったん下がれ! 」

「こいつだけでも厄介なのに周りの魔物もわらわらわいてきやがる。」

「大和さん、エドさん。こいつ僕にやらせてもらえます? 」

「白いけるのか? 」

「はい、必ず。大和さんとエドさんは周りの魔物と負傷した冒険者の救援を。」

「わかった。白頼んだぞ。」


白は単騎でゴーレムへと向かった。


「さてまずはどんなものか。」


白は身体強化、打撃強化、硬化のスキルを発動し、ゴーレムに打撃を叩きこんだ。

が、ゴーレムは少しよろけた程度で致命傷には至らない。


「流石に硬いですね。ただの岩ってわけじゃない。ただ、そのスピードじゃ僕は捉えられない。」


白はさらにスピードを上げ、ゴーレムへの猛攻を仕掛ける。

ゴーレムの鈍い動きでは白のことは捉えられない。

白はゴーレムの周囲を目まぐるしく回り、頭、胸、腕、腰、足、にひたすら打撃を重ねていく。

徐々にゴーレムの体に亀裂が入り始めた。


「あと少し、でも決定打に掛けますね。そしたら…。」


白は風属性の魔法を使い、空を蹴り高速で移動し始める。

その疾さはゴーレムはおろかほかの冒険者や大和たちからも見えない速度である。

そして飛びながらの助走ともとれる空中移動で、ゴーレムの頭上へと跳躍した。


「これで終いです。セイヤァァァァッ! 」


ゴーレムの頭上から空を蹴り、さらに回転しながらゴーレムの頭への踵落とし。

圧倒的スピードと圧倒的なパワー。

その威力はゴーレムを破壊するには充分であった。

途轍もない衝撃音と共に、ゴーレムは木っ端みじんに砕け散った。


「ふぅ…。」

「白! やりやがったな! 」


エドが白の頭をなでる。


「やめてください。子供じゃないんですから。」

「わりいわりい。」

「いやでもかなりのものだった。流石だ。」

「いえいえ。さあ、回りの魔物達も片付けましょう。大和さんはルマリーザさんの元へ向かってください。」

「わかった。任せたぞ。」

「流石にちょっと疲れましたね。」

「ティナからもらった薬があるから飲むといいぜ。」

「ありがとうございます。エドさん。そしてティナさん。」


白とエドは再び冒険者たちと共にいまだ残っている魔物達の殲滅を始めた。

大和はルマリーザの待つ砦へと向かった。


「ルマリーザ! 」

「おお…、大和か。いいところに来てくれたっ…。」

「ほう。ゴーレムを突破してきたか。」


ルマリーザは敵大将と砦内の魔物を一人で相手していた為、相当疲弊していた。


「ティナから預かった回復薬だ。それを飲んで少し休め。」

「ありがとう。後は残るはあいつ。敵大将アロンだけだ。」

「わかった。後は任せろ。」


ルマリーザを後ろに下げ、前に出る大和。


「貴様か人間。魔女に味方し魔物達を殲滅し始めたのは。」

「そうだがお前は?」

「俺の名はアロン。セイル周辺の魔物を統括する魔王軍隊長だ。」

「そうか。ってことはお前を倒せばいいんだな? 」

「クククッ。笑わせるねぇ人間。貴様ごときでは俺を倒せんわ! 」


大和とアロンが互いににらみを利かせた。

セイルの運命がかかった対決が始まる。

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