第19話
両者にらみ合う大和とアロン。
先に仕掛けたのはアロンだった。
「死ねぇぇぇぇ!」
アロンは長い槍のリーチを生かし、大和目掛け突きの連発。
大和は一打一打丁寧に刀でいなすが、リーチの差で間合いに入れない。
大和は攻撃を受け流すと同時に跳躍し、アロンに刀を振りかざすも槍によって受け止められてしまう。
「くっ…。」
「なかなかやるな。しかし貴様の剣では俺まで届かないわ! 」
「大和! やつは毒を使う。きっとあの槍に掠りでもすれば体中に毒が回る。気をつけろ! 」
「わかった。 気を付けよう。」
「ルマリーザめ、余計なこと言いおって。」
スピードはたいしてないが、リーチのある槍に毒。
武器だけでも厄介なのに毒まで使ってくるアロンは、大和には分が悪い相手だった。
アロンはリーチの差を生かしどんどんと攻勢を強めてくる。
大和も攻撃を仕掛けたいが、アロンの攻めをいなすので攻撃に転じられない。
「おらおらどうしたぁ! そんなもんか?」
「くっ…。ならば…。」
大和はアロンと距離をとった。
そして刀をある武器へと変化させた。
「な、なんだその武器は…。槍か?」
「お前のそれとは違う。」
大和が新たに変化させた武器。それは薙刀である。
長刀ともよばれるそれは、アロンの槍よりは少し短いが日本刀よりはリーチの差が埋まっている。
そして槍との一番違いはその切っ先である。
槍は”突く”という攻撃に対し、薙刀は”薙ぎ斬る”のである。
槍に対する大和の回答が薙刀であった。
大和は薙刀を、刃を上に向け、柄を胸に沿わすように構えた。
「なんだその構えは。上ががら空きではないか。」
「いいから来い。」
「ふん。そのまま死ぬがいい!」
アロンは大和へ走り出し、突きを繰り出す。
大和はその突いてきた槍を上えと弾き、そのまま薙刀を振り下ろした。
振り下ろした薙刀はアロンの胸を切り裂く。
「ぐはっ…。」
「まだ浅いか。」
「なるほどな、やるではないか。」
アロンは傷を抑え少し後退する。
すかさず大和は距離を詰め、先ほどまでアロンから受けていた突きを連発する。
アロンは傷をかばいながら受け止めるだけで精一杯であった。
しかし、薙刀の突き、振り下ろしなどの様々攻撃パターンに徐々にダメージを受けている。
「ここで終わらせる! ハァッ!」
「まだだ! 」
大和は脳天掛け薙刀を振り下ろすが、アロンが防ぎ逆にやれで大和を飛ばし、お互いの距離が離れた。
「くっ。」
「クックック…。」
「何がおかしい?」
「ここまでやられたのは久々だ。認めてやろう人間。そして終わりだ人間。グォォォォ。」
そういうとアロンは槍を地面に突き刺し力を蓄え始める。
するとミシミシと音を上げながら体の筋肉が肥大化していき、二回りほど大きなくった。
「久々だ。この感覚は。さあ終わらせるぞ人間。」
アロンは槍を再び握る。
そして大和へと再び向かうが、そのスピードは先ほどの比ではない。
「ヤバいっ! 」
「遅いわ! 」
大和突きを弾こうと薙刀で槍に触りに行くが、スピードと先ほどより強いパワーで弾かれてしまう。
そしてアロンはそのパワーを生かし、突きからでたらめに槍を振り回す。
そしてアロンの振り回した槍が大和の脇腹を捉え壁まで吹き飛ばされる。
「グハッ!」
「大和! 大丈夫か!」
「ゴホッゴホッ…。 ああ大丈夫だ。刃は刺さっていない。柄の部分で殴打されただけだ。」
「毒などもうどうでもいい。この姿になったからには叩き潰すまでよ! 」
アロンが大和に襲い掛かろうとする。
それをルマリーザが瓦礫を念動の魔法で飛ばし、攻撃を仕掛ける。
しかしアロンは片手でいとも簡単に瓦礫を砕いた。
「ルマリーザ邪魔をするな! それよりお前から死ぬか? 」
アロンは標的をルマリーザへと変え、突撃する。
ルマリーザも瓦礫や矢で応戦するが、肥大した筋肉に弾かれ間合いを詰められてしまう。
「死ねぇぇぇぇ! 」
「くっ…。」
アロンがルマリーザへ槍を突き刺そうとしたとき、まばゆい光があたりを照らす。
そう、大和が閃光弾を投げていたのだ。
アロンはその眩しさに一瞬怯んだ。
「なっ、なんだ?」
その隙に大和はルマリーザを抱えアロンと距離をとる。
「助かったよ大和。ありがとう。」
「ああ、間一髪だった。」
「いくら逃げても同じことよ! 」
「もう逃げはしない。次で終わらせる。」
「ぬかせ。」
凍り付くような緊張感の中、大和とアロンの勝負は最終局面を迎えた。
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