第17話

翌朝、セイルの正面玄関には冒険者たちがすでに集合していた。


「揃っていますね。」

「よし、じゃあいくか。大和号令を頼む。」

「わかった。」


大和は先頭に立って冒険者たちに向け号令をかけた。


「みんな! これよりセイル周辺の魔物殲滅及び、拠点の殲滅作戦を行う。準備はいいか! 」

「「「おおー!」」」

「では各部隊に分かれて行動開始!」


大和たちは各部隊に分かれて進行し始めた。


「じゃあ大和、私は先に敵魔拠点に行ってくる。襲撃のタイミングは合図するね。」

「頼んだぞ、ルマリーザ。」


ルマリーザは先に魔物の拠点に向かった。

そしてそれぞれの部隊に分かれた大和一行は周辺の魔物の殲滅を始めた。

ゴブリン、シルバーウルフがどんどんと倒されていく。

大和、白を先頭にどんどんと森へと進行していく。


「ここまでは調子いいな。」

「そうですね。ただ森の中には何が潜んでいるかわかりません。油断せず行きましょう。」

「そうだな。」


大和一行は森までたどり着いた。

そして作戦通り、左右と後方の三部隊に分かれ森を進行していく。

そのころルマリーザは魔物の拠点へとたどり着いた。


「ここか…。」


魔物の拠点は雑に作られた木材の柵で囲われていた。

中に入ると、あばら家やボロボロのテントがいくつかある。

一つの集落ほどの広さがあり、そこら中に魔物がいる。

そして中央に大きな砦の様なものが存在している。


「ナニモノダキサマ! 」

「あーそれ俺の顔見知りだから下がってていいよ。」

「アロン…。久しいな。」


アロンと呼ばれた魔物は、セイル周辺の魔物を統括している魔王軍の隊長である。

ハイゴブリンと言われる魔物で、普通のゴブリンよりも知能が十倍近く高い。

190メートルほどの長身で、身長より長い槍を持っている。


「そうだなルマリーザ。ところで何しに来た? 」

「ああそうだな。お前と話がしたくてな。少し話さないか? 」

「ふっ。話ねぇ…。いいだろうこっちへこい。」


アロンはルマリーザを連れ、砦へと入っていった。

その中はおそらく人間から奪ったであろう物で綺麗とは言えないが装飾されていた。


「んで、話ってなんだルマリーザ。あの戦争以来まったく姿を見せなかったお前が今更何の用だ? 」

「魔王様が復活したようだな。」

「ああそうだとも。実に素晴らしいことだ。もう一度あの方のもとで働けるとは喜ばしい限りだ。」

「ああ…。そうだな。」

「ルマリーザよ。お前も戻ってこい。皆歓迎するだろう。」

「なあ…アロンよ。人間と分かり合うつもりはないか? 」


アロンはルマリーザの問いかけに対して、呆れながらあざ笑った。


「はぁ、ルマリーザよ。またその話か。数十年前から変わっていないな。人間と分かり合うねぇ。そんなこと無理に決まっているだろう。馬鹿馬鹿しい。」

「なぜ人間をわかろうとしない? それに無駄な血を流さなくて済むだろう。」

「それは人間とて一緒だろう。あいつらが魔物の俺達を理解しようとしたか? 」

「そ、それは…。」

「答えられないだろう。奴らは魔物の一生の敵だ。そして今回魔王様が復活し復讐の機会ができた。そんな好機を見逃すわけないだろう。なあルマリーザ。悪いことは言わない。そんな幼稚な考えは捨てて魔王様のもで人間たちに復讐しろ。」

「やはり分かり合えぬか…。」


そんな話をしているとゴブリンがアロンに報告をしに来た。


「アロンサマ! ニンゲンタチガオソイカカッテキテイマス! 」

「なんだと? ついに森まで侵入してきたか…。」


その時ルマリーザへ大和たちから連絡があった。


<ルマリーザ聞こえるか? 大和部隊いつでもいけるぞ。>

<白部隊も大丈夫です。>

<こっちもオッケーだぜ。いつでもいいぞ。>

<わかった。みんな合図を待ってくれ。>

「アロン残念だ。」

「ルマリーザ? …! 貴様やはり裏切ったなっっっ! 」

「ああ、そうとも。私は人間たちと共に魔王を討つ! 」

「貴様ぁぁぁ! 」


ルマリーザは砦から飛び出て空へと浮遊し、魔物達へ矢を放った。

それを見ると同時に大和たちが拠点へと突撃を開始した。


「行くぞ! 」

「「「おおー!」」」


拠点内にいた魔物は突然の襲撃に慌てた。

そんななかアロンが魔物達へと指示を飛ばす。


「魔物たちよ落ち着け! 敵は左右から来ている! 慌てず迎撃しろ! 」

「キシャー!」

「ルマリーザめ! 貴様絶対に許さんぞ!」

「知ったことか。」


冒険者軍対魔物軍の戦いが始まった。

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