第15話

廃墟を出るとあたりが暗く、すでに夜になっていた。

いつの間にかだいぶ時間がかかっていたのである。

大和たちは朝から何も食べていなかったため、今日は宿に戻ることにした。

宿へ向かう途中、ギルドの受付と出会ったので、翌日ジャストンへ報告に行くと伝言を頼んだ。


「お、旦那たちおかえり。ん? 一人増えているな?」

「今日の依頼中に仲間になった。主人、今日から一人泊まるやつが増えるが問題ないか? 」

「ああ、問題ないぜ。」


一行は夕食をとり、それぞれ部屋へと戻った。

部屋割りは男性組と女性組に分かれた。


「ティナさん大丈夫でしょうか?」

「ん? ああ、ルマリーザか。」

「大丈夫だろう。あの目は噓をついている目じゃない。」

「そうですね。」


そのころ女子部屋では…。


「あー彼らはまだ私を信用しきれてはいないみたいだ。まあ、肩書上こうなることは予想ついていたけどね。 ティナよ、私と同じ部屋で大丈夫か? 」

「そんなことわかるんですか? でも大丈夫ですよっ! ルマリーザさんは人間にひどいことするなんてしないと私信じていますから! 」

「ティナ、ありがとう。君は優しいな。君たちのような人間に出会えてよかった。」

「ルマリーザさん…。」

「そういえば、あの白とやら男部屋に行ったが女ではないのか? 」

「あ、白さんは男の方ですよっ。」

「えっ!? そうなのかい? 」

「そうなりますよね~…。私も最初そう思いました。」


二人は夜深くまでしばらく談笑していた。


「さあ、もうそろそろ寝るとしよう。明日に備えてな。」

「はいっ! 」


そして翌日。

宿での朝食を済ませ、早速ジャストンのもとへと向かった。


「おー待っていたぞお前ら。 んー? 何か増えておるな。」


ジャストンへ廃墟の調査報告とルマリーザについて説明した。

セイル近辺の森に魔物の住処があり、そこを潰せばこの町は平和になることも伝えた。


「はぁ? その女が元魔王軍幹部の魔女で、廃墟に潜んでセイルを守っていたじゃと!? 情報が多すぎて飲み込めん…。大体そんな怪しいやつの言うことを信じれるか! 即刻王都へ引き渡すぞ。」

「まあ、そうなるとはおもっていたさ。 すまないね君たち。 私からお願いしたのにうまくはいかなそうだ…。」


ジャストンはこちら側の話を真っ向から否定する。

ルマリーザは悲しそうな顔をして、ジャストンの指示に従おうとする。

が、その時大和がキレた。


「おい貴様。町に魔物が寄り付かず被害が出ていないのは、誰のおかげだ? 」

「そ、それは冒険者共に決まっているだろう。」

「本当にそう思っているのか? あれだけ依頼が出ていて町まで魔物が来ていないんだぞ? 」

「そ、それは…。」

「何より、彼女の表情を見て何も思わないのか? 彼女は数十年前の戦争の時から悩み、苦しみ、そして人間に迷惑をかけまいと、たった”一人”で潜伏して町を守ってくれていたんだぞ? そんな彼女の気持ちを踏みにじるつもりか貴様は! 」

「大和…。」


大和はジャストンの顔に拳を突き立てる。


「これだけ説明しても信じられないのか? どうなんだ! 」

「ヒッ、ヒィィ。」

「大和、もういいよ…。やっぱ私が人間と分かり合うなんて無理だったんだ。諦めて素直に捕まるよ。」

「ルマリーザさんっ。本当にそれでいいんですかっ? それに私たち四人はルマリーザさんのこと信じていますよっ! 」

「ああ、そうだな。」

「同じく。です。」

「皆…。 嫌だ…、嫌だよ。私は人間が好きだ! ただ人間と仲良くなりたいだけなんだ! 」


ルマリーザは泣きながら自分の思いを叫んだ。


「ジャストンどうする? これでも王都へ引き渡すか? 」


しばらく沈黙した後、ジャストンはこう答えた。


「わ、わかった。その魔物の拠点及びセイル周辺の魔物を殲滅したら信じてやろう。」

「ああ、必ずやるとも。」


大和一行はジャストンへの報告を終え、いったん宿へと戻っていた。


「良かったなルマリーザ。」

「ああ、君たちには感謝の言葉だけでは足りないよ。本当にありがとう。」

「大丈夫ですよ。」

「さて、魔物達の討伐についてだがどうする? 」

「問題はそこだな。」


大和たちは魔物討伐へ向け会議を始めた。

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