第14話

「で、話っていったい何なんだ? 」

「まず、第一にこの廃墟へと何しに来た? 」


大和たちは町長ジャストンの依頼で調査へ来た旨を伝えた。

この廃墟に対する変な噂が出回っていて、町の人たちはもちろん冒険者すら近付けないと伝えた。


「なるほどな。そこまで困っていて怖がらせていたとは…。それは申し訳ないことをしたな。」

「それであなたはいったい何なんです? 」

「最初に私が言ったことを覚えているか? 」

「最初に行ったこと…? あーっ魔王軍幹部の魔女ってやつですかっ? 」

「おーちっこいの、正解だ。 実はなアレは半分嘘なんだ。」

(ちっこいの…。)

「半分嘘? 」

「そう、私は”元” 魔王軍幹部なんだ。」

「は!? “元”幹部だって? 」

「そうさ。今はただの魔女さ。」

「それで、元幹部さんがなぜこんなところに? ここで何をしているんです? 」

「離せば長くなるが…。端的に言えば私は人間が好きだ。」


そう話すルマリーザは少し悲しいような目をした。

ルマリーザはここまでの経緯を話してくれた。

数十年前の王都軍対魔王軍では魔王軍に属していた。

だが、その時から人間と分かり合えないものか、寄り添えないものかと苦悩していたという。

魔王に直訴して戦争をやめさせようともしたらしい。

だか、魔王軍にはそのような思想の持ち主はいなかった。そして彼女は仕方なく魔王軍として戦ったのであった。

魔王が討伐されてからは、色々な街を転々としており人間との交流を深めようとした。

ただ、彼女は王都軍の指名手配となっていた為、隠れながら行動せざるを得なかった。

そうしているうちにこのセイルの廃墟にたどり着いたという。

そしてセイルの町に結界を張り、密かに町を守っていたのである。

廃墟に対する噂は、セイルの住民などが近づかないようにとルマリーザが仕掛けた演出であった。


「あの違和感はその結界のせいか…。」

「よく気が付いたね。 私は今回の魔王復活の騒動には関わっていない。 まあ数十年前の戦争の時の魔王軍の連中には私の顔も生きていることも割れている。 だから廃墟に潜伏し魔王軍に協力するふりをして、セイルの町を守っていたのさ。まあ信じてくれるかは君たち次第だがね。」

「なるほど…。確かに今思えば魔物討伐の依頼がたくさん出ていた割に町自体に被害はなかったですもんね。」


白の言う通り魔物退治の依頼が多く出されている割に、魔物を危惧しているのは町長のジャストンぐらいで、セイルの住人たちは特に問題なく生活していた。結界のおかげで魔物が寄り付かなかったわけか。


「でもよ魔女のねーちゃん、俺たちを殺そうとしたよな? 」

「ああ、それは君たちの実力を見たかったのさ。試すような真似をして済まない。私がここに潜伏し始めてから誰もこの廃墟を訪れなかった。でも君たちはすんなり入ってきた。そんな人間今までいなかったからな。興味がわいたのさ。余程強いやつらかただの馬鹿なやつらだと思ったのさ。後者なら私のところまでたどり着けず終わりだ。適当なところで外へと逃がしていたさ。」

「実際、俺たちはどうだったんだ? 」

「そりゃもう申し分ないよ。ここまで来られただけでもちろん並の人間ではないし、分身とはいえ本気で殺しにかかろうとしたさ。でも君たちはいとも簡単に私の分身を倒した。」


ルマリーザは手放しで褒めた。

彼女の表情を見る限り、嘘偽りのない言葉のようだ。


「それでだ。本題に入るが君たち私と協力しないか?」

「協力だって? 」

「そうさ。私と一緒に魔王を倒してほしい。無理にとは言わないし、もちろん私を捕まえて王都に差し出すのも君たちの自由だ。それが君たちの選択なら従おう。」


ルマリーザの思いがけない提案に困惑する四人。

本当に信じられるのか? 裏切られる可能性があるのではないか?

四人はしばらく相談しルマリーザへと回答した。


「わかった。ルマリーザお前を信じ協力しよう。」

「本当か? 」

「わざわざ自分の危険をさらしてまで取引する内容じゃないですし。」

「そーだな。それにあの強さなら心強い限りだぜ。」

「そうですっ! それにルマリーザさんは本当に人間のことを好きなんだなって思いました! 」

「君たち…。ありがとう。」


彼女は目にうっすらと涙を浮かべているように見えた。

それから軽く自己紹介をし、この後どうするかを五人で話し合った。

まずは町長のもとへと調査の報告しに行く。もちよろんルマリーザも一緒にだ。

それからルマリーザが言うには、セイルの近くの森に魔物の拠点があり、

セイル周辺の魔物を統括する魔王軍の隊長がいるらしく、

その隊長を倒せばルマリーザが結界を張らなくてもセイルやエルク村への被害は出なくなるという。


「よし大体は決まったな。」

「とりあえずジャストンさんのところへと戻りましょう。」

「そうですねっ! 」

「君たち、改めて本当にありがとう。それとこれからよろしく頼む。」

「こちらこそよろしく頼む。ルマリーザ。」


大和一行は廃墟を後にし、冒険者ギルドへと向かった。

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