第10話

翌日、四人は朝早くから行動し始めた。

エドの提案で、武器屋や素材屋で装備を整えようということになった。

大和は脇差を欲しがっていた。しかし、この世界には日本刀のようなものは存在しておらず、いわゆる西洋の剣の様なものしかないため、とりあえず防具として籠手を購入した。

白は基本的に武術を使うので武器は購入はもちろん、防具に至ってはスピードが落ちるから嫌とのことで、何も購入しなかった。

エドは銃の玉の素材、鉛を欲しがっていたがセイルの素材屋では売っていなかった。しかたなく弓矢ほ購入した。

ティナは、魔力量回復の薬を作るため、薬草を吟味して購入していた。


「よし、こんなもんだな! 」

「いい感じに準備できましたね! まだお金にも余裕があります! 」

「それじゃあそろそろギルドへ行きましょうか。 」

「おう。 」


四人はギルドへと向かった。

今日はどの依頼を受けようか相談をしていたところ、受付に呼ばれた。


「皆様、お待ちしておりました。あなた方に会いたいと仰っている方がいるので、別室までご同行願えますでしょうか? 」

「いーんじゃね? 」

「そうですね。」

「別に構わないが。 ティナも平気か? 」

「私も大丈夫ですっ。」

「ありがとうございます。それではこちらへどうぞ。」


四人は受付に案内され、別室へと向かうと、そこには立派な口髭を生やした恰幅の良い男性が待っていた。


「おー、君達かね。噂の四人組は。」

「噂? 一体何の話だ。」

「そりゃ決まっているだろう。一日でシルバーウルフ80匹討伐の冒険者ともっぱらの噂になっておるぞ。」

「もうそんなに広まっているのか…。」


どうやら昨日のシルバーウルフの件で、噂になっているようだ。

ギルド内はもちろん、町中にも知っている人間がいるようである。

そういえば今日もギルドに入った時、周りが騒がしかった気がする。


「まあ、それはそれてとして、おっさん一体何者なんだ? 」

「おーすまんすまん、紹介が遅れたな。わしはこのセイルの町長、ジャストンだ。よろしく頼む。」

「町長さんが僕たちに何の用なんです? 」

「まあそう慌てるな。とりあえず楽にしたまえ。」


ジャストンは紅茶をすすりながら話し始めた。

セイルでも最近の魔王騒ぎを警戒しているそうだ。この町の周辺にも魔物が増えてきているという。

ジャストンは王都に軍の派遣を要請しているが、一向に派遣されてこないという。

なのでジャストンは、冒険者に依頼をし、魔物の討伐をしてもらっているようだ。


「セイルの事情はわかった。本題に入ってくれ。」

「そうだったな、お前らに頼みたいことがあってのぉ。この町の外れにある廃墟の調査を依頼したい。」

「廃墟の調査? 」

「そうだ。この町の商店街を東側に抜けて進むとある。」

「どうして俺達なんだ? 」

「それは噂を聞いて、最初はわしも耳を疑ったが、ギルド受付に確認して、お前らが腕の立つ冒険者だと分かったからだ。 その廃墟は数年前から存在しているんだが、実に不気味でな。そして良くない噂もある。」

「良くない噂? 」

「誰もいないはずの廃墟に人影が見えただの、物音がするだの色々な。それで他の冒険者たちは近付こうともせん。依頼をしてももちろん断られる。何もなければそれに越したことはないが、ただ最近の魔王騒ぎもあってほっておくわけにもいかん。」

「なるほどな…。」

「もう頼める者はお前らしかおらん。頼む。引き受けてくれんか? もちろん報酬は弾ませてもらう。」

「すぐに分かったとは言えない。少し時間をくれないか? 明日までには回答する。」

「わかった。」


四人は一度宿へ戻った。

そして依頼を受けるかどうか相談を始めた。

「どうしましょうか。」

「廃墟ねぇ。」

「うーむ。」


三人が悩んでいたその時ティナが言った。


「あっあのっ! 依頼受けるべきじゃないでしょうか? 私たちしかいないんですよねっ? それにこの町の方々の悩みになっているなら見過ごすわけにはいかないと思いますっ!」

「ティナさん…。」

「少し怖いですけど、三人がいれば大丈夫です! 」

「そーだな。困ってる人を助けねーわけにはいかねーな! ティナの言う通りだ。」

「よし、じゃあ受けようか。依頼を。」

「ですね。」

「皆さんっ…! 流石です! 」


四人はジャストンのもとへと向かい、依頼を受ける旨を伝えた。


「引き受けてくれて本当にありがとう。恩に着る。」

「早速調査と行きたいところだが、今日はもう遅い。明日からでもいいか? 」

「かまわない。お前らに任せる。」

「わかった。」


四人は翌日の調査に向け、宿で休んだ。

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