第7話

「頼み? 」

「いったいなんです?」

「ティナを両親のもとへ連れて行ってくれんか? 」

「ティナを? 」


ベイルじいさんの話では、ティナの両親は彼女を生んですぐに、徴兵のため王都に行ってしまったという。ティナは両親の顔はおろか声も分からないでいるそうだ。


「ほんとはすぐにでも行かせてやりたいんじゃが、一人で行かせるには危険すぎる。姉のミールは村を守るために離れることはできん。」

「そうですか…。」

「ティナは強い子じゃ。わしらの前では一切泣き言を言わずに両親ら会いたい気持ちを押し殺しながら、村のため薬草採取などを手伝ってくれていたんじゃ。ただのぉ、彼女が一人で泣いているところを何度も見てきておる。 頼む、ティナを王都まで連れて行ってやってくれんか? 」


ベイルじいさんは深々と頭を下げる。


「まあ、魔法のことたくさん教えてくれたしな。」

「断る理由がない。」

「そうですね。」

「ありがとう。」


三人は快く承諾した。

ベイルじいさんの家に戻ると、ティナとミールが食事の支度をしてくれていた。


「おじいさま! 三人とも! もう食事の支度はできていますよー! 」

「ティナ話があるんじゃ。 この三人たちと一緒に王都へ行き父と母に会ってきなさい。」

「え…いいのですか? お姉さまは? 」

「私は村を守る仕事がありますから。それにティナ、あなたは二人にとても会いたがっていたでしょう? 私のことは気にせず行ってらっしゃい。」

「おじいさま…お姉さま…ぐすっ、うわーん!」


ティナは涙を流して膝から崩れ落ちた。

今まで押し殺してきた気持ちが許され、感極まってしまったのだろう。

その日の夕食はとてもやさしい味がした。

翌朝、三人とティナは出発の準備を進めていた。


「ベイルじいさん、この村から出たらどこへ向かえばいい? 」

「すぐ先に、セイルという街がある。まずはそこを目指すんじゃ。そして王都から冒険者として認可してもらうとよい。」

「認可が必要なのか? 」

「そうじゃ。王都から正式に冒険者として認められないと、依頼も受けられんし報酬も貰えん。」

「わかった。」


三人とティナは準備を整え村の出口まで来た。

ベイルじいさんとミールが見送りに来てくれた。


「いろいろと世話になったなじいさん。」

「気にするで無い。それよりもティナを頼んだぞ。」

「ええ、僕らにお任せください。」

「おじいさま、お姉さま。本当にありがとうございます!」

「無茶するんじゃないわよ! ティナ!」

「元気での。ティナ。」

「はい! 行ってきまーす! 」


ティナは元気いっぱいの笑顔で答えた。

三人とティナはセイルという街を目指し歩み始めた。


「改めて大和さん、白さん、エドさん!。これからよろしくお願いします」!

「おう。」

「こちらこそ!」

「よろしく頼むぜ、ティナ!」


セイルに行く道すがら、色々なことを話した。

ティナは回復魔法を使えて、薬学にも詳しいそうだ。

ティナ曰く、母親の血が色濃く出たという。姉は逆に父親譲りの武闘派らしい。

この先毒を使う敵や、魔力量の枯渇などがあるかもしれない。

ティナはいいサポートをしてくれそうだ。


「あ、あの私からも質問いいですか!? ずっと気になっていたことがあって…。」

「俺たちにわかる範囲なら答えるぞ。」

「えっーとですね…。白さんはなんで女性なのに僕っていうのかな?って。」

「あー…。」

「まあ、そうなるわな(笑)」

「え? え? 」


ティナは頭の上に?マークを浮かべている。


「ティナさん。僕は男ですよ。」

「えっ、えっー!? す、すみません…! あまりにもかわいかったものでつい女性かと…。」

「気にしないでください。よく言われることなので。」

「アッハハハ、俺らも最初女かと思ったぜ。」

「エドさん。笑い過ぎですよ。」


白はエドの足を踏んだ。


「いっでー!!! 」

「ふふっ。」

「フッ…」

「アハハハハッ」


とてもいい雰囲気だ。これからの旅が楽しみである。

そんな話をしながらしばらく歩いていると、セイルの街並みが見えてきた。

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