第2話

「神が用意した悪戯だと? 」

「そう! 題名は…ジャジャーン"M.O.T.G(Mischief Of The Gods)"でーす! 」

「"Mischief Of The Gods"...神々の悪戯って英語じゃねーか! そのまんまじゃねーか!

ひねりとかないのかよ! 」


軍人がまたニアに詰め寄る。


「まあまあ落ち着いてエドワード君。君らの世界の言語に合わせただけだからさ~

本当の呼び方なんてあってないようなもんなんだよね~」

「なんだそれ…」


呆れてなにも言えない。

いきなり出てきてお前らは死んでるから、死を受け入れるかゲームに参加するか選べだと...

あと、その前に一つ疑問が残っている。


「ニア、一つ聞いてもいいか? 」

「はいどうぞ、羽須美君」

「俺たちが死んだのはなんとなく理解した。だが、そもそも死んだときの記憶がない。これはいったいどういうことなんだ? 」

「あー...それはねー...じ、実は召喚時の弊害で召喚された人間の記憶がなくなってしまうんだよ。」

「そうか。」


なんとも歯切れの悪い返答だ。怪しい。

が、今起こっていることの方が不思議でならない。

今はそういうことにしとこう。


「ま、まあ、そのうち思い出すよ~。」

「で、ニアさんその悪戯の内容をそろそろ教えてくれるかい?」

「あっ、そうだね! 大事なとこだもんね。簡単に言うと、君達には異世界で勇者になってもらって、魔王から世界を救ってもらいたいと思いま~す! 」


異世界で勇者になって魔王を倒す?

またこの神はとんでもないことを言い出した。


「勇者? 」

「そう、勇者! まあ君らの世界でいう所のRPGみたいなもんかな。」

「あーるぴーじー? 」

「なんでしょうねそれ? 」

「え? お前らRPG知らねーの??? ゲームだよゲーム! 」

「すまん、そういったものには疎くてな」

「同じく」


どうやら軍人曰く、RPGというのは仲間と冒険をして目的を達成するものらしい。

そしてそれを俺達にやれとニアは言っているようだ。

そしてニアの説明によると

・ニアと俺達三人は勇者陣営、魔王陣営側の神も存在する。

・無作為に選ばれた世界で勇者対魔王の戦いをする。

・勇者側は選ばれた異世界以外の、死んだ者でしかならない。

・魔王側は魔王及びその他モンスターについて自由に設定できるが、弱点を作らなければな らない。故に無敵などは存在しない。

・自分たちの陣営が勝利すると、神界での地位が上がる。

・異世界に転移しゲームが始まった後、神側からは何も手助けをしてはならない。


ざっとこのようなものらしい。

詳細なルールは神側のものなので、俺たちに話しても無意味らしい。

神がやりそうなというか、神にしかできない悪戯である。

ルールを聞いて沈黙をしているその時中国人がニアに問いかけた。


「ねぇ、ニア様。仮に魔王を倒したら僕らにメリットはあるの? 」


確かに、今のところニアにしかメリットがない。

このままだと俺達はただの駒になるだけだ。


「いい質問だね。もちろん君達にもメリットあるよ。魔王を倒した暁には君たちをもとの世界に戻し、生き返らせてあげよう。ただし魔王を倒せなかった場合は、死を受け入れてもらうしかない。まあもっとも魔王に殺されるだろうけどね。さあそろそろ時間だ。君たちはこの悪戯に乗るか乗らないかどうする? 」


俺たち三人は決断の時が迫られた。

俺は二人に問いかけた。


「どうする? 」

「どうするもなにも…」

「やるしかないだろ。」

「そうだな」

「ですね」

「ニア、俺たちは勇者になって魔王を倒す。」


俺たちの回答を聞くとニアは笑った。


「アハハ! 君達ならそう選択してくれると思ったよ! じゃあ異世界に行ってもらうけど、一つ君達の世界と違う事があるからそれだけ教えるね。それは”魔法”だ。」

「魔法だと? 」

「そう魔法。君達にも魔法の素質はあるんだよ。ただ君達の世界に魔法という概念がないだけなんだよね。まあいまいちピンとこないだろうけど、向こうの世界に行ったら確かめてみてよ。じゃあ最後に君達にこれを。」


そういうとニアから三人に指輪が配られた。


「それはアーティファクトリングという代物で、自分の思い描いた武器に形が変形するという代物だ。ほんとはもっといい装備をと思っていたんだけど、君達の元々のステータスが高すぎてこれしか用意できなかった。すまない。」


ばつの悪そうな顔をするニア。

どうやら神側のルールで色々とコストがかかっているらしい。


「まあ武器さえあれば十分だ。」

「僕には必要ないですけど、あることに越したことはないですね。」

「君達ならきっとうまく使えるはずだ。」


そして眩い光と共に一つの扉が現れた。


「さあこの扉の向こうが異世界だ。準備はいいかい?」


俺たち三人は首を縦に振った。


「改めて、羽須美大和。大和でかまわない。よろしく頼む」

「僕は、李 白露。白って呼んでね。よろしくね」

「俺は、エドワード・リックス。エドでいい。よろしくな」


そして扉に向かう三人。

その背中を見ながらニアが呟く。


「君達ならきっと出来る。魔王を救い世界を助けられる。君たちに幸あれ。」


扉を抜けるとそこには、新たな世界が広がっていた。

三人の冒険が幕を開ける。

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