第3話
扉を抜けるとそこには広大な草原。
舗装されてなく決してきれいと呼べない道。
横を流れるきれいな小川。
遠くを見ると森林も存在している。
「ここが異世界…?」
「どうやらそうみたいですが…?」
「なんか俺らがいた世界の田舎と変わらなくね?」
エドの言う通り、何の変哲もない自然豊かな場所にたどり着いた。
俺達が暮らしていた現代的な建物は存在しないが、異世界という感覚はない。
こんな世界に本当に魔王が存在するのか?
「とりあえずどうしましょうか。」
「まずはこの世界の住人と話をしないと。」
「そうだな。俺達にはここが異世界って事と魔法があるってこと、魔王がいるってこと以外なにもわからん。まずは村か集落、町とか探して情報収集からだな。」
道すがらそのようなことを話していると、少し先のほうから少女の悲鳴と助けを呼ぶ声が聞こえた。
「助けてー! 」
「誰か襲われているみたいですね。」
「イベント発生か! 」
「イベント…? まあとりあえずいくぞ。」
三人は少女が助けを呼ぶ方向へと駆け出した。
そこで見たものは三人がここが異世界であることを認識するには十分な光景だった。
赤髪の少女に皮膚が緑色をした人間のようなものが襲い掛かろうとしている。
「なんだあれは…」
「感想は後だ。彼女を助けるぞ」
「ええ。いきましょう。」
三人は少女と緑色の人間の間に割って入る。
「ナンダオマエラワ、ジャマヲスルンジャナイ!」
「こいつらしゃべんのかよっ!」
「大丈夫? お嬢さん。」
「あなた方は...? 」
「それよりあいつらはなんだ? 」
「そ、その魔物はゴブリンです。」
「魔物か…人でないなら遠慮はいらないな!」
その時、奇声を上げながらゴブリンの一人が大和に向かって飛びかかってきた。
「キシャァァァ」
「はぁっ!」
まさに一瞬の出来事であった。
大和に飛びかかったゴブリンの首がはねられていた。
ゴブリンは斬られたことにも気づいていないまま絶命した。
「なるほど、これが剣の天才ってわけですか。んじゃ僕も」
そういって白は一気にゴブリンに詰め寄る。
「セイッ!」
ほぼ目視できないスピードからの顎への掌打。
そしてすかさず追い打ちに寸勁、所謂発勁である。
ものの見事に二体目のゴブリンも撃退した。
「ほう、武の天才ねぇ。俺もちょっと本気出すかな。」
エドは指輪をコンバットナイフにし、ゴブリンの背後に回った。
そして喉元を一突き、そのままナイフで喉をえぐった。
三体目のゴブリンも瞬殺だった。
「傭兵だったのに銃は使わないんですね。」
「まあ相手は武装してねーし、一対一だしな。それに武器に形を変えると言っていたが、弾までついてくるかわからねーだろ? だからナイフが最適だと思ったんだ。」
「あの一瞬でそんな判断を、さすがだな。戦場の天才。」
「異世界での初戦闘にしては、上出来じゃねーの。二人の実力も分かったし。」
「そうだな。」
「お嬢さん、大丈夫? 」
白が襲われていた少女に手を差し伸べる。
「た、助けていただいて、あ、ありがとうございます! このお礼は必ずしますので! 」
少女は深々と頭を下げる。先ほどまで襲われていたためか少し震えていた。
大和たちは少女について尋ねた。
少女の名前はティナというらしい。近くの村に住んでいるようだ。
なぜこんなところで襲われていたかというと、彼女のおじいさんの頼みで薬草を摘みに来ていたところをゴブリン達に襲われていたらしい。
「あの、あなた方は冒険者様なんでしょうか...? 」
「冒険者...? 」
「違うんですか…?」
「実は、僕たちここから遠く離れた田舎の出身で、あまりこの世界に詳しくないんです。なのでお嬢さん、村まで案内してもらって色々と教えていただけますか? それが今回のお礼ということで。」
「そ、そんなことでいいんですか? 私の知ってることなら全部教えます! 」
「頼む。」
ティナと共に村へと歩き始めた。
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