生ける炎
ぱちぱちと焚き火が音を立てる。
焚き火の前にはコットがあって、そこには男女が腰を下ろしていた。高校生くらいの彼らの名前はユウとトウコと言った。寄り添うように座っている二人は焚き火よりも熱々で、季節外れの寒さをまったく感じさせない。
「近くないですか?」
「そうか? もっと抱きつきたいくらいなんだが……」
「やめてください」
しゅんとなるトウコは、悲しげなレトリーバーのよう。しっぽをだらりと下げてくうんと鳴くところが見えてしまいそうなその姿は、普段の彼女からは想像できないもの。
これが、ユウの普通だった。むしろ、リビングファイアの頭としての玖珂トウコの方が、ユウにとってはおかしい。こうやって目をすがめてうれしそうにしている彼女の方が、ユウは好きだった。
「いつもそうしてればいいのに」
「ば、バカ。人前でこんなことできるかっ!」
お前だけしかいないからできるんだぞ……とかなんとかごにょごにょとトウコが言う。人前で抱きつかれるところを想像して、ぽんっと、ユウの顔が真っ赤に染まった。
「違いますよ! 来る人来る人を睨むように見なくてもいいじゃないかって話です」
「そんなことしたら、舐められるだろ。あたしは仮にもトップ張ってるんだから」
「三人しかいないですけどね」
「あーバカにしたな。三人しかって言うが強いんだぞ? 三人で十分なわけよ」
リビングファイアは、この辺の不良集団の中では一番小さなグループだ。
頭の玖珂トウコと副長の玖珂扶桑、それから浅座歩。以上三人で構成されている。ちなみにトウコと扶桑の名字が一緒なのは二人が姉妹だからだ。
つまり、姉妹で不良ということになる……のだが、話はそう単純でもない。
「でも、扶桑さんって不良って感じじゃないですよ。大好きなお姉ちゃんがしてるから所属してるってだけで」
「そうかもなあ。あたしとしては願ったり叶ったりなんだが、そろそろ姉離れしてほしいところだよなあ」
アイツとは仲良くなったか、という問いかけがユウに投げかけられる。ユウはなんともいえない表情を浮かべた。
正直なところ、仲良くなれたとは言いがたかった。
扶桑は実の姉のことを溺愛している。トウコの言うことなら何だってするだろう。死ねと命令されたとしても二つ返事で実行しそうだ。そんな扶桑からすれば、ユウはライバルなのだろう。
トウコを奪い合う相手。
――わたしは認めないから。
犬歯を剥き出しにして睨まれたのは一度だけではない。扶桑にとっては、姉を奪った人間ということらしい。別にそんなつもりはなかったから、ユウはたじろいでしまう。告白したのは、ユウからではあったが。
「やっぱ無理か。誰かあの子を好きになってくれるような奴がいればいいんだが」
「なかなか話しかけづらいですからね……。『お姉さまお姉さま』っていって、先輩のことばっかりだし」
「だよなあ。あと、先輩じゃないぞ」
ユウは、まじまじと見つめられる。
トウコのルビーのような瞳が寂しそうに揺れる。なにを望んでいるのかは分かっていても、なかなか口にはしづらい。恥ずかしくて。
「トウコ……さん」
呟くように言うと、トウコの目の色が変わった。完熟したトマトのように赤みが強まって、すぼまされた口からふうと甘い吐息が漏れる。
「呼び捨てじゃないのは気になるが、まあ今回はそれで許してやる」
許されて、ほっと一息。付き合っているとはいえ、他人の前で見せる苛烈な性格を見ていれば、呼び捨てするのは躊躇われた。ついうっかり、ヒトの前で呼び捨てにしてしまえば、トウコが烈火のように燃え上がってしまいそうだ。――羞恥心で。
しばらくの間、トウコはもじもじとしていた。なんだか話しかけづらくて、ユウも口を開けない。
トウコが熾した火の周りには、串刺しになったマシュマロ。真白な肌からは艶が失われ、茶色を通り過ぎ、今にも焦げてしまいそう。マシュマロを皿にとって、クラッカーの上に。さらにその上にチョコレート、クラッカーでスモアの完成。トウコに差し出すと、無言で食べ始める。
「……キャンプは楽しいか?」
「楽しいですよ。トウコさんと一緒ならどこでも」
「ユウ……」
こてんと、トウコがユウにもたれかかる。その表情には安堵が浮かんでいた。敵対している不良へは、大した緊張もせず啖呵を切るくせに、今は不安でしょうがないようであった。トウコにはそういうところがあった。気の強い人だと周囲からは思われているが、実はちゃんとした乙女なのだ。
ユウがふふっと笑えば、トウコがむっと頬を膨らませる。
「おかしいことでもあったか……?」
「やっぱり、トウコさんは今の感じの方が好きです」
「す、好きっ!?」
ガタっと立ち上がったトウコの、オレンジ色の髪は、どこか逆立っているように見えた。
しばらくの間、そわそわしていたトウコはふいに座った。そんなことをいきなり言うな、という小さな声がやってくる。ユウはすみませんと小さく返す。
またしても、沈黙が訪れる。
ちらりとトウコの方をユウは見る。やはり、その表情には少なくない不安とためらいがあった。何かを打ち明けようとしていて、それができていないかのような。
「――何か、あったんですか?」
「別に」
「先輩が『別に』って言うとき、大体嘘ついてますよね」
「う、嘘だっ!」
「嘘ですけど、やっぱり何か隠してますね」
うっ、とトウコが言葉を詰まらせる。いつもは眼光鋭い目も、タジタジとばかりに泳いでいた。
じっと見つめていたら、降参とばかりにトウコはため息をついた。
「大したことじゃないよ」
「それでもいいですから」
「……この世界って何かおかしくないか」
「何がです?」
「いやさ。理由なんてないんだが、なんとなくこう、第六感が叫ぶんだ。本当はこんな世界じゃなかった。あたしはあたしじゃないって」
「それはどういう……」
当の本人にもわからないらしく、トウコが肩をすくめた。
この世界は本当の世界ではない。
――じゃあ本当の世界というのは一体?
「なんだか哲学めいてます」
「あたしもそう思う。そもそも証拠なんてありゃしねえから、わかんねんだよなあ」
ガシガシと頭を掻くトウコ。普通なら、そんな第六感は気のせいだと切って捨てるだろう。だが、彼女の第六感は的中率が高い。こっちから何かが来るからと構えていたら、不良グループがカチコミに来たくらいには。
そういうわけなので、一概に気のせいともいえない。トウコの第六感が働くところを目前で見たことがあるユウからすれば、なおさらだ。
ふむと腕を組んで考える。
マシュマロの香ばしい香りが、冷たい風に乗ってどこかへと運ばれる。
「で、だ」トウコの表情はいつの間にか真剣なものになっている。「ユウには言ってなかったが、このキャンプに来たのにはもう一つの理由がある」
「もう一つ……?」
呟いて、すぐに気が付いた。
どうして、先ほどの――第六感の話をしたのか。
「直感が本当かどうかを試してみるため」
「その通りだ。あたしのことをよくわかってんな」
「そういうことなら、最初から――」
「今回ばかりはいまいち信用しきれなかったんだよ。自分の勘ってやつが。……それに、申し訳ねえだろ。キャンプデートのつもりで誘ったのに、仕事だったなんて。だから、黙ってようと思ったんだよ。何かしらの反応があるまでは」
言ったトウコは、口を閉ざす。
先ほど悩んでいたのは、このことを話すかどうか。
隠し事をしていたのが、どうにも心苦しかったのかもしれない。
こういうところが、ユウは好きだった。乱暴なようで、その実、誰よりもまっすぐで情に熱いところが。
「気にしないのに」
「……あたしが気にすんだよっ。ほっとけ」
「それで、何か分かったんですか」
ユウの問いかけに、トウコは天を指さす。
漆黒の空は、街から見上げるよりもずっと星の数が多く見える。人工の眩い光がなく、空気が澄んでいるからだ。
星々の一つをトウコは指さしていた。
「あれはフォーマルハウトだ。ちっと思い入れのある星なんだが、あれは本来、秋に見られるものだ」
「え……?」
ちなみに、今の季節は春だ。
春なのにもかかわらず、秋の星が天を泳いでいる。
よくよく見てみれば、他にも異常はあった。肉眼で見えるはずのない冥王星が、今やはっきりと見えたし、月はいつもよりもどこか大きく、ギラギラと光を反射させている。それに何より、教科書で習った星の並びではない。
「何か異常なことが起きてんのは間違いない――」
がさり。
周囲の木々の向こうで音がした。
トウコが立ち上がる。その瞳は爛々としていた。
「噂をすればなんとやらだな。何かくるぞ」
あたしから離れるなよ、という言葉にユウは頷く。もとより離れるつもりはない。ユウは戦闘とか運動とか、そういったものはからきしなのだ。
がさごそと、草木をかき分ける音が、静謐な森に響く。その音は一つ二つではない。どんどん増えていく。森の中だから、クマかもしれないとユウは思ったが、クマにしては数が多い。それに、連携を取っているように感じられた。
足音が聞こえる。
瞬間、森の中が青白く光った。光はジグザグ折れ曲がりやってくる――。
「危ねえっ!」
トウコが、ユウを押し倒す。
空気が震える。
直後、二人の頭を電撃がかすめていった。
髪がチリチリと焦げ、同時に青臭いにおいを感じる。顔だけを上げて光がやってきた方を見れば、顔を仮面で覆った人々が立っていた。焚き火に照らされたその人々は、少なくとも十人はいた。誰もが能面のような無機質な仮面をつけていて、その顔はわからない。だが、髪の長さ的には、女性――それも自分たちと同じくらいの歳なのではないか。
一人の手には、少女が手にするにはあまりに大きく禍々しいジャベリンが。ある少女は、目の錯覚か、月明かりのない空を、硝石が付着した翼を動かし飛翔している。また別の少女は緑色に発光する蜘蛛の巣のような鎧を身にまとい、その手にはほのかに青く光る銃のようなものが握られていた。銃口と思しき場所はスパークしている。あれから、電撃は飛び出したのか。
そんな仮想大会の面々のような人たちに、ユウとトウコは囲まれていた。
「ちっ、まさかここまでしてくるとは思ってなかった。こんなことなら、ユウを連れてこなかったってのに!」
トウコは舌打ちをして、そう言った。ユウは言葉を発せなかった。息が詰まるような緊張感と、言葉にできない不快感をひしひしと感じる。今に襲い掛かってこようとしている人々を見ていたくない。恐怖からではなく、なぜか目をそらしたくてしょうがない。外見は一部を除いて確かに人間だ。だが、何かおかしい。トウコの言っていた違和感のようなものが恐怖を増大させる。
「おいっしっかりしろっ!」
我に返ったユウは、目の前のトウコが、自分の手を掴んでいることに気が付いた。自分は放心していたのだろうか。すみませんと呟いている間にも、トウコは真っ黒なジャケットを脱ぐと、ユウの頭へ被せた。
「それ、かぶってろ」
「これは……?」
「難燃性のジャケットだ。オーダーメイドだから絶対なくすんじゃねえぞ」
「は、はい」
「あと、何があっても外すな。……それさえありゃあ燃えることはねえから」
――何が起きるっていうんですか。
訊ねるよりも前に、変化は生じていた。
トウコの髪が、静電気を浴びたみたいにぶわっと広がる。ロングの髪は、火口からこぼれ出した溶岩のように幾重にも分かれてうねり、意思を持っているかのように、それぞれが別々の方向へと動く。その動きは炎の揺らめきのよう。
「あたしが何者か知ってのことなんだな。――敵対行動だと判断するぞ」
返事はない。鋭利な槍が持ち上がり、朧月に照らされた先端が鈍く光る。銃口から電撃が待ちきれないとバチバチ音を立てる。飛行する少女が何事か――トウコへと向けられたものではなく、どこか違う場所にいる神様へと唱えるかのように――呟く。各々やっていることは違ったが、敵対の意思を見せているのには変わりなかった。
――ああ、そうかい。
トウコが吐き捨てる。
次の瞬間、熱風が吹き荒れた。トウコを中心として生まれたその強い風は、熱とともに上昇気流となって渦を巻く。あまりにも強い風に、ユウは、ジャケットが飛ばされてしまわないように体へと押さえつけて、その場へうずくまることしかできなかった。
視界を覆ったジャケットの向こうで、熱を伴った光が生じる。その光は球のように飛んでいったかと思えば、爆発したみたいに眩い光となってあたりの闇を払った。ジュっという不気味な音がし、聞いたことのない悲鳴とともに、バタバタ暴れる物音も聞こえた。だが、その音は徐々に小さくなっていった。
遅れて、空気が震える音と何かが飛んでいく音が断続的にした。入れ違いで、熱が飛んでいくのもなんとなくわかった。悲鳴とともに、時折、肉と肉とがぶつかるような音さえもした。
何かが確実に起きている。
でも、それを確認する余裕は、今のユウにはなかった。
それに、トウコが負けるとは思えなかった。余計なことをしたら、トウコの迷惑になってしまいそうだから、ユウはじっと待つことにした。
ただ、トウコを信じるだけだ。
焦げ臭さとオゾンの何ともいえない臭いに混じって、肉の焦げるいい匂い。何の肉が燃えているのかは考えないことにした。
鞭のようなオレンジ色の光が伸びて、バーンと一際大きな破裂音がしたのちに、森は元の静かさを取り戻した。
足音が近づいてくる。ユウの心臓が跳ねる。誰だろうか。頭の上からかぶったジャケットを取っ払ってしまって確認したかったが、相手がトウコかは断言できなくて、ユウは指一本動かせなかった。
焚き火に照らされてできた真っ黒な影が、ユウへと伸びてくる。
ジャケットがはぎとられる。隠されていた周囲の惨状が露わとなる。
はたして――目の前に立っていたのはトウコだった。
「心配をかけたな」
トウコが手を差し出した。ユウはその熱い手を取って立ち上がり、まずはトウコを上から下まで眺めてみる。服はぱっと見、変わっていなかったが、よくよく見てみると袖口が黒くなっていた。いたるところが焦げてボロボロ、まるで火の粉を受けてしまったかのよう。焚き火に当たっていた時はできていなかったのに。
森の中のキャンプ場は一変していた。木々はいたるところが焦げ、葉っぱはくすぶっている。緑だったはずの地面は焦土と化し、火の手を免れた木々の間には人型の物体が転がっている。遠くから眺めているだけで気持ち悪くなってきて、ユウはその物体から地面へと目をそらす。黒くなった地面はある地点――トウコが立っていたところ――を中心にえぐれている。
それはあたかも、爆弾が爆発しありとあらゆるものをその炎によって吹き飛ばしていったかのよう。
「全部トウコさんが……」
「まあ、な」
短い返答。そこには一抹の不安が感じられた。
重苦しい沈黙があたりを覆う。
ユウがトウコのことを見ると、すっと背を向けた。
「…………怖いか?」
ユウは、トウコを見た。いつもなら自信に満ち溢れたその背中は、心なしか小さく映る。
「こんな怖い力を持っている奴が彼女で――」
「それは違います」
「本当……?」
「だって、そういう怖いところを含めて、トウコさんだから。それに、僕を守ってくれるためですよね」
不良グループと争っているときは、己が拳だけで戦っていた。爆弾と見紛うほどの威力を秘めた能力は使っていなかった。手加減しているというよりは、使いたくなかったのではないか。
バケモノ呼ばわりされるのが嫌だったのではないか。
そう考えると、怖いとは思わなかった。――むしろ、いじらしいとさえ感じた。
「命の恩人だからじゃないですよ。好きだから怖くないのかな……? 自分でもよくわからないんですけど、嫌いにはなりません」
トウコが振り返る。その顔は俯いていてよくわからなかった。
ぎゅっと抱きしめられる。強く、きつく。服越しに伝わってくる体温は、カイロのようにあったかい。
とくんとくんと心臓が脈打つのがはっきりとわかる。それは、どちらのものかはわからなかったが、
少なくとも、彼女は人間。少し変わっているだけで、おそらくは人間なのだ。
どのくらい間、二人は抱き合っていただろうか。トウコが口を開かずに離れていったときには、焚き火からは火がなくなっていて、ほのかに赤い炭は細い煙を異常な星々へ向けた狼煙のようにたなびかせていた。
「ありがとな」
「僕は何も……。というか、感謝したいのは僕の方です。守ってもらって」
「うん。まあ助けたといえば助けたかもしれねえが、別に助けなくてもよかったのかもしれねえ」
「え……僕が死んでもよかったってこと」
「違うわっ! むしろあたしが死んでもお前だけは守ってやる。――じゃなくて、あれだよ。さっき戦ったときに思ったんだが、お前に攻撃行かなかっただろ?」
「確かに……」
最初の電撃を除けば、ユウをめがけてやってきた攻撃は一度だってなかった。ユウの頭の上を通り過ぎていくばかりで、攻撃しようと思えば、置物のようになっていたユウを狙うことはできたはずだった。
だが、そうしなかった。
「つまり、最初から目標はあたしだったってことになる。あいつらを差し向けてきた誰かさんは、よほど世界の異常を調べてほしくないらしいな」
「でも、そのおかしさっていうのは、僕も聞きましたけど……」
「それなんだよなあ。お前も知ってるはずなのに、狙わなかった。何もできないと思っているのか、それとも……」
腕を組んだトウコが、しかめっ面になって考え込む。
不意に着信音が鳴り響く。その音の発生源は、トウコが着ているジャケットのポケット。
「おっと、歩から電話だ」
なんだ、と電話に出たトウコは、電話の相手である浅座歩と何事かを話し、すぐに通話を終えた。
「何の話をしたんです?」
「キャンプ地の方で爆炎がしたから何かあったのか、ってさ。もう終わったって伝えておいた。あと、扶桑が来るってさ」
「でしょうね」
木々の向こうから、扶桑の舌ったらずな幼い声が聞こえてきていた。恐らくは、歩と同じように爆炎に気が付いて、慌ててやってきたのだろう。ほかでもないお姉さまが何かに巻き込まれたのかもしれないと、今頃、血眼になってトウコの橙色のジャケットを探しているに違いない。その姿が目に浮かぶようだ。
トウコも呼び声に気が付いたのか、ため息。ユウもため息をつきたい気分だった。
「おねーさま! いらっしゃったら返事してくださいっ!」
「……誰かあいつのことをもらってくれないかなあ」
「僕も同意見です。でも、返事しないでいいんですか」
「あっちが気が付くまで黙ってよう。折角二人っきりでキャンプに来たのに、こんな終わり方ってないだろ」
確かに、とユウが相槌を打てば、トウコが笑う。つられてユウも。
指に柔らかな感触。温かな指が、そっと触れては離れてを繰り返す。間合いを窺うように、そうしていいかを逡巡しているかのように。
何度目かのタッチの時に、その指に、ユウは自らの指を絡みつかせる。
逃げ出そうとする細い指に指を絡ませて握る。
びっくりしたようなトウコの視線に、ユウは笑いかける。
トウコに似た少女が大声を響かせながらやってくるまで、その手はしっかりと繋がれていた。
神話生物を擬人化させてきゃっきゃうふふするだけの話 藤原くう @erevestakiba
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