2-3
目を丸くして硬直するフレックに、
「はじめましてフレック。私はヘリオスフィア・ニューノ。こちらこそ、よろしく」
ヘリオスフィアが優雅に一礼。
周囲の大人が洗練された仕草に関心する中フレックは、
「へりおしふあ、なんではなれたの?」
胸に抱いた疑問のままに行動し、飛び跳ねるように一歩近づく、しなやかに一歩後退される。
「長くて呼びにくそうだ。リオと呼んでくれ」
「うん、りお。なんで?」
ぴょんっと一歩前、するっと一歩後退。
フレックは首を傾げた。
じりっと近寄って、すすっと距離空けられる。
どんどん悲しくなってくる。
「りおは、おれが、きらい、なのか?」
近寄ってその綺麗な顔を、特に空のような青い瞳を見たかったフレックは、近寄ったら近寄った分だけ離れる反応に涙を滲ませた。
「え、あ、そんなことはない!そんなことは、ない」
動揺し否定しそれでも距離は縮まらない。
それは言葉よりも雄弁に、近寄ってほしくないのだとフレックに真実突き付ける。
近寄ってほしくない、というのは嫌われているのと同じだ、そう思ったフレックの目から涙がぼろぼろ溢れ出た。
どうしてか分からないけれど、ヘリオスフィアに嫌われたのがとても悲しかったのだ。
「あ、ああ…泣かないでくれ、フレック」
ヘリオスフィアも泣きそうな表情を浮かべ、フレックの涙をそっと拭った。
フレックに触れないよう注意した指先が離れた瞬間、キラリ光る物が生まれた。
「あえ?いまのなに!りお、いまのみたか!?」
見たことがない物が宙を舞い、フレックは目を見張った。
まだ、今も、ふよふよ、宙に浮いている。
ヘリオスフィアがそれを指先に留めた。
6枚の花弁が均等に広がった幾何学模様のそれは、
「これは氷の結晶だ」
その言葉に温度は無かった。
凍てついていた。
けれどフレックは涙を忘れ、徐々に消えてく透明な宝石に目を輝かせた。
「なんでしってんの?なんでいまでたの?なんで?」
「君の涙で私が今、つくってしまったんだ」
それは特異体質が故の異常な現象。
ヘリオスフィアの特異体質『魔力暴走』が、フレックの特異体質を上回るのかどうか、大人たちは神妙に見守り続ける。
「りおがつくったの!?すげぇ!すっごいな!」
己の異常な体質にヘリオスフィアは嫌気がさしていた。
それ故の零度じみた対応言葉運びになっていた。
なのにフレックの明るさは増すばかり。
おまけにすごい、すごい、と恐れず不気味がらず、一歩また近寄って来る。
恐ろしいと悍ましいと避ける逃げる目を背ける人ばかりだったから。
「すごい、だろうか」
ヘリオスフィアは呆然とした。
「すっごい!かっこいい!きれー!」
「…そう…か」
フレックが笑顔のまままた一歩、ヘリオスフィアに近寄って。
肩が触れた。
フレックはヘリオスフィアが逃げなかったのが嬉しくて、
「どーやったの?てからだしたの?わ、りおのてつめたい、おれのてあったかいからぎゅってしてやる!」
真っ白な手を両手で包み込んだ。
フレックは驚いた。
冷たいのもそうだが、手まで綺麗なんてヘリオスフィアすごいって驚いていた。
「ああ、本当だ、君の手は、暖かい」
ヘリオスフィアはフレックのその温もりが何処へも行ってしまわないようにその手を握り返した。
どうともならないのは、それは、フレックの特異体質のお陰だから。
フレックの特異体質が自分を生かすものだとは知っていた、けれど、それでもこの接触はヘリオスフィアにとって特別だった。
なおフレックは、ヘリオスフィアの手が綺麗ですごいしか考えていなかった。
「なありおってなんできれーなの?」
「それこそ君は、どうしてこんなに暖かいんだ?」
目を合わせ、質問し合う、答えないのに会話が弾む。
その年相応の様子に、魔力がフレックに吸収され自然へと還元される安定性に、周囲の大人たちは見るからに安堵した。
ヘリオスフィアはそれを目端捕えていた。
フレックはヘリオスフィアに夢中だった。
「りおってさぁ、かみのけキラキラしててさぁ!めなんてそらみたいでさぁ!かっこいーしさぁ!」
「フレック」
「うん?」
「これから、ずっと、私と共に居て欲しい」
「うん!おれもりおとずっといっしょにいたいー!」
そんなこんなでフレックとヘリオスフィアは交流を深め、友情以上の絆を順調に育んでいったのだった。
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