作戦
クノハがこちらに気づいて手を振ってくる。この状況の深刻さとのギャップで、クレンは頭を抱えた。
(なんであいつここに、なんのつもりで……というかやっぱり父をつけまわしていたのか?)
クノハはゆらゆら飛んでこちらに近づいてくると、クレンのすぐ傍におりたち、クレンを見上げた。
「やはりあなたは勇気あるお人です、こんな危険な場所にお父様のために一人でかけつけるなんて」
「いや……なんでお前父親の事とかしってるんだよ」
「私は、この町の事はなんでもしっていますよ、長くいきていて人の話もよく盗み聞きしたり、よい霊から話を聞いたりしますから」
(盗み聞きって、そんな自信満々にいわれても、調子くるうなあ)
そう思いながらも、悪霊だかなんだかしらないが、一人できたのは心細かったし、少なくとも自分に対しては好意的な幽霊ではあったので、何かしら手助けを受けられるかもしれないと思った。
「クノハ、お前ものを動かしたり、音をたてたりできるか?」
「可能ですよ」
「じゃあ少しお願いしたいんだ、俺はその間に憑き物を払う、できるかどうかわからないが」
「!!!」
クノハはクレンの両腕を胸元にひきよせた。
「ついに、あなた様は能力を使う決心をしたのですね!!」
「……今回だけさ、それに身内の危機だ、しょうがないだろう」
「……それならば、私からもお願いがあります」
「??」
「もし、必要があればですが、あなたに“九十九霊と契約する”といっていただきたいのです」
クレンは、一瞬言葉を失った。
「契約?お前がどんな霊かわからないのに」
「うっ……」
クノハは目を潤ませながら、しかし決意したように告げる。
「だからこそ、もし本当の危機があればの話です」
「よくわからないけど……確かにお前からは悪意を感じないし、信じてみるか」
信じてみる。そう言った瞬間、クノハの目はかがやき、むなもとで手を組み。にっこりと笑いながら返事をした。
「はい!」
クレンは早速作戦にとりかかる。作戦といっても、別段変わったことはしない。クノハが何か音をならし、その隙にクレンはまずできそうなら父親の拘束をとく。無理な場合は、あの犯人の憑き物を払う。あとの事は……なんなら警察にまかせてもいい。
「まず憑き物を払わなければ、憑き物は人を狂わせ、正常な思考力を奪うんだ、少しでもあいつを理性的な状態にできれば、それでいい」
「はい!!」
一方生善は、まるでクレンと意思疎通できているように、犯人の注意を引くよう話かけていた。
「お前、名前は?」
「エイゾ」
「いい名じゃないか」
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