危険
「お前の父親連絡とれないって、変な男が武器もって、人質にして立てこもっているって話もある、やべえぞ!!」
セイヤがかけた言葉に一瞬、クレンは思考をとめた。
「は?何が?それマジ?」
「早くいこう、何ができるってわけじゃないが、お前なら、なんとかしてくれるかもしれない!!」
そう、言われた瞬間に、めをひみらいて、くちをあけ、自分に対する期待に一瞬おどろしてしまった。同時に、自分自身が似たような期待を自分に寄せているのを感じ、退魔師の後継者として期待されていたころの懐かしい感情を感じた。
「警察は?」
「多分かけつけてる、大騒ぎになっているらしい」
そういって二人は全速力で校門をでた。たまに一緒に帰るカノンは、その日は自然に別々にということになっていたし、カノンがパニックをおこしても大変なので、いそいで駆けつけることにした。
その頃、父親“生善”は〝雲林寺〟にて、押し入った男―犯人―につかまり、手足をテープでぐるぐるにしばられていた。犯人は本堂で父親に背を向け、刃物を片手にあぐらをかき、貧乏ゆるりをしていた。ごつごつした顔立ちに、不幸そうな下がり目、熊だらけの顏。痩せこけた頬。
「こんなはずじゃなかったんだ、ただ依頼をして、その依頼をうけるのなら、こんなふうに立てこもる必要もなかったし」
「どうして私が依頼を受けるとおもったんだ」
「ああ!!?ある人に聞いたんだよ、ここは悪いこともやってる寺だってな」
「……??」
奇妙だった。生善は首をひねる。誰がそんな噂を流したのか、そしてなぜ、男はこうまでして自分に“悪行”の依頼をするのか。
「呪いをかけてほしいといったな?」
「ん?そうだ、やってくれるか!!そうすりゃ俺はもう捕まってもかまわない」
「いや、私の矜持としてそうしたことはできない、だがお前さんの話をきいてやろうとおもってな、何が……」
「ふん、癪に障るが、いいだろう、話してやろう」
【俺は数か月前、飲み屋である女にであった。暗い雰囲気をもつ女で、一人で酒をのんでたよ、まだ若干幼く見える女に、俺は勇気をだして声をかけた、“お前さん未成年じゃないか”ちょっとした冗談だったのさ、そしたら女が大うけして、それからよく合うようになったんだ、女はある人間たちを恨んでいるようだった、その恨みみやつらみをぶつける準備をしているといっていた、その女に俺は同情したのさ、そして、彼女が必要だと思うしなを貢ぐようになった、奇妙なものばかりだったさ、骨董品やら、古着やら、女はそんなものを買いだめ手“憑き物、悪霊”を探しているといっていた、俺には、恨みを晴らす手伝いをさせてくれるといっていた、だがある時、やつは何もいわずに姿をけしたのさ、俺はそれ以来女をうらんでいる、なんといったって、きっとあいつは俺を騙していたんだ、俺の両親のように!!】
「恨んでいるのに、その女に貢いだ見返りがあることや、女のかたった呪いを信じているのか」
「うるせえ!!俺はずっと不幸続きだったんだ、親が借金をして蒸発して、この顔立ちのせいで、異性に嫌われ、やっとまともに扱われたと思ったら、こんどは、貢がせるだけ貢がせて、うっ、うっ、どっかいっちまった、もう少し、もう少しだけ幸せな時間があると思ったのに、こうなりゃ、やけおこして呪いであの女ごと、この世界ごとの見込んでやるあ!!」
生善は、男の背後に黒いもやもやがかかっているのを見て、すぐに理解した。
(まいったな、この男、つきものがついてる)
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