帰宅
「悪かったよ、クノハ?お前は悪霊じゃないんだな、確かに親父のこととは関係なさそうだ」
「え?今名前で?恥ずかしいですわ」
「それじゃ、学校にでるのやめてくれるか?」
「ええ、でも、あなたの事が気になりますし」
「どうしてほしいんだよ!」
授業がすべておわり、下校するころ、耐えきれずにクレンは、一人ごとをつぶやいた。皆が帰るのをまち、部活を終えて教室にもどった後の事だった。
「私は、あなたが悩んでいるようだったから、だって、そんな力があるのに、力を隠し続けて、我慢しているようにみえて……だから私が手伝いをできればって」
「手伝いって何を」
「人助けの……」
「俺には、そんな資格ない、今朝のは幼馴染が悲しんでいるのが耐えきれずにやったことだ」
「それでも、十分です……」
「何が」
「あなたがどんなつもりでもあなたがしたことが、誰かの助けになることもあるっていう事です」
クレンは少しうつむいた。
「その逆もな……」
「何のことですか?」
「昔……昔の事だ」
そういって、クレンは少し昔の、中学時代の事を話しはじめた。中学一年、二年にセイヤが引っ越してくる前の話だ。その時三年生に、グレている上級生がいて、クレンは霊能力があるということでよくからまれたりした。それに、その上級生は、同級生を脅したりして、いつも仲間をつくって標的をいじめにかかるんだ。その上級生に目をつけられたクレンは、心霊スポットにつれていかれたり、占いをするように命じられたり、さんざんな目にあった。それでも逆らわなかったからまだひどい目にはあわなかったが。だけど、クレンはいつもおびえていた。彼らにいじめられて学校にこれなくなった人間や、転校した人間をしっている。暴力に訴えられたらと、おどおどして学校に行くことになった。そんな時だった。彼の友達が、彼をかばうようになったのは。彼が嫌がって、その頃元気がないのを心配していた友達が“彼はまだ幼く力がない”と訴えてから、しばらく絡まれる事がなくなったが。しばらくしてその嘘がばれた。クレンが人に頼まれ、こっそりと除霊をしたのが、どこかから情報が洩れてしまったのだ。
クレンは屋上によびだされ、襟首をつかまれた。そこには、先につれてこられ、顏を殴られている友人がいた。
「お前は本当に力がないのか?答えによっちゃ、あいつと同じ目にあうぞ」
脅されて、でも友人の様子をみて、彼も嘘をつこうとおもった、だが友人が首をふった。
「あり、ます……」
「じゃあ、嘘をついてたんだな」
友人はまたも首をふった。
「いいえ、僕は、嘘をついてないです」
「僕が、彼に関する噂を流しただけで、彼は何も知りません」
そんなわけはなかった。友人の提案にクレンは乗ったのだ。それなら彼らから解放される、いいウソだとおもった。なのに、友人はすべてのウソの責任をおって、友人はそうして、グレた不良同級生たちにぼこぼこになぐられ、いじめられるようになった。数日たって、彼は転校することに、それでも彼はくったくのない笑顔でわらって、クレンの肩をたたいた。
「君のせいじゃないから」
そういって彼が悲しそうに笑ったのをおぼえている。
「俺は、正直にいえなかった、だから彼に標的がうつった、俺は最低だ、嘘なんて、ずるい奴がつくものだ」
教室に意識を戻すと、和装の幽霊、クノハが目の前にたって目を潤めていた。
「ご友人は立派ですわ」
「そりゃ、そういう言い方もあるが、一番の被害者でもある、それに、それだけじゃない、俺は母親を……」
「クレン!!やばいぞ!!」
その時、教室の扉をあけて、一人の男がはいってくる。セイヤだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます