奇妙。
昼休み、セイヤとともに昼食をたべ、携帯をみると(親父からレイン(チャットツール)だ)。自分の机で内容を確認するクレン。
「何か付け回されている気がするんだが、お前何か幽霊でもひろってきたか?」
「今朝、子犬のつきものを払って今は保護施設にいる、ちょうど夜親父に完全に払ってもらおうと相談しようとしてたところだけど」
「そんなんじゃないな、もっと大物の気配だ」
「なんだろう、心あたりが……が」
「が?」
携帯片手に口をあんぐりあけてぼーっとするクレン。目の前には公園の幽霊少女、クノハがいた。律儀に教室の外でこちらにむかって楽しそうに手を振っている。
「あいつ、地縛霊じゃなかったのか……」
クレンは初めは無視していたが、次第にきになりはじえめとことことこ、無言で表情を変えず近づいていき、クレンはクノハの手を握って、走り出した。
「ちょ、ちょっと!!」
クノハの抵抗も無視し、やがて校舎の外にでると、校庭の渡り廊下のベンチへとすわった。
「大胆ですわね、クレンさま」
「……なんで学校に?」
「私は、あなたさまの“覚悟”をみて、いてもたってもいられず、今朝は本当にありがとうございました!!あの猫ちゃんは私が見えるらしく、数少ない私の友人でもありました、今は地域の方が保護していて、安静にしていますし、もう大丈夫です!それだけを伝えに来ました、では」
「では、じゃないんだが!?」
「はい?まだ何か?、もしやご家業を継がれる気になったとか?あなたはとても力ある方ですから、それも当然です」
「くっ」
クレンの胸がズキンと痛みをもった。
(何も知らないくせに、それに俺はもう嘘をついたりするのはごめんなんだ)
「?」
クレンは不思議そうに見つめるクノハの前で頭をよこにふった。
「お前、おやじをつけまわしてないだろうな?それに、悪霊と化して人を苦しめたりはしてないだろうな?」
「いまなんと?」
「え?何って、悪霊???……」
クノハは両手を胸元でそろえ、うるうると瞳に涙をうかべていた。
「私は九十九霊です、私は人に恩をうけると、その恩をもとに神通力をつかえます、それは、私も初めは、あなたは自分の力にも気づいておらず、本当に平凡で能力のない方なのかもと思っていたこともありましたが、あなたはやはり力を使いこなす人徳がおありだとおもって、あなたが力ある陰陽師の方だと信じて、あなたに期待していたのに、ひどいです!!がっかりです!!」
クノハの一つ一つの言葉が、わけもわからずぐさぐさとクレンにつきささり、だがクノハはそのままどこかへ走りさってしまった。
それから学校が終わるまで、クノハは時折の行く先々に現れこちらをみて目をうるめているのだった。体育館、廊下、トイレの外。
(本当にあいつじゃないのかなあ……)
と、汗をかきながら、クレンはその様子をみまもっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます