第43話 ~軽い決意~

「呪い!? そんな話は初めて聞きました。命に危険が及んだのは、てっきり深い傷を負ったからかと……」


 驚いたセージは用意された椅子から立ち上がり、ブレイムと私を交互に見る。


「はい。王家への影響を考慮し、この事はあえてお伝えしませんでした」


「そうでしたか……ご配慮いただき、ありがとうございます。呪いなんて不可解なものを国王以外の耳に入れては、大きな混乱を招くところでした」


「私もそう思いますわ。魔術師(敵)も、王城に潜んでいるかも知れませんし……それで、犯人について何か思い当たる事はありませんか? 後、殿下を1人で森へ行かせた理由を教えてください。貴殿方(従者)や護衛は何をされていたのです?」


 少し問い詰める形になったが、私にはそれが1番の疑問だった。


「これまで殿下が命を狙われる様な事は1度もありませんでした。ですから暗殺者については検討もつきません。私は急遽開かれた会議に出席をしておりまして、戻った時には従者や護衛は皆、殿下の自室で眠っていました」


「眠らされたって事!? 一体誰が?」


「それが……おそらく殿下本人の仕業かと思われます。従者達はベッドやソファーに寝かされ、毛布まで掛けられていましたから」


「殿下が? 誰かに呼び出されたのでしょうか? やはり探る必要がありそうですね?」


「はい。既に国王の指示で動いております」


 (へぇぇー、流石は王家……私も負けていられないわ!)



「クガイ、部屋に入って!」


「失礼致します。何でしょう? ライリー様」


 クガイがセージに対し、軽く会釈をする。

 

「アケビに聞いたわ。貴方はこの国で最高峰の剣士だそうね?」


「はい。国内でだと自負しております」


「……だろう、クガイ? 私を忘れている。脳の一部が溶けたのか?」


 セージが参戦。


 (おぉっと、これは?)


「セージ殿こそ、脳の一部が欠如しているのでは? 私は今も厳しい鍛練を続けております。会議中心の騎士様とは実力に差が出で当然です」


「私も訓練はしている。それこそお前の比ではない」


 この2人……ライバル同士なんだ。

 なんて、今はそれどころではないわね。


「その議論は後にしてくださるかしら? そしてクガイ、私に『剣術』を教えてちょうだい」


「ラ、ライリー様!? 急に何故?」


「嫌な予感がするのよ。この先、きっと何かが起こる……犯人が殿下の命を諦めるとは思えないし、関わったキュラス家だって、標的になるかも知れない」


「だからと言って、ライリー様が剣を握る必要はありません! 私が必ずお守りします!」


「その油断や甘えが、危険を呼ぶのっ! 今回の事で自分の無力を思い知ったわ……私もは戦力になりたいのよ!」


 クガイが溜め息を吐く。


「……承知致しました。では、お見せしましょう」


「見せる?」


「はいっ! 我が国が誇る、キュラス家の軍事力です!」


「へっ? いや、私は軽く剣を教え……」


 (あっ、聞いてない)


 興奮をすると周囲が見えなくなるタイプか……。

 クガイは瓶底眼鏡を曇らせて、大きく何度も頷いていた。

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