第26話 ~『陰』対『陽』

「それで? 私達に『勝ち目』はあるのかしら?」


「これっぽっちもありません!」


 まほ研全員の声が揃う。


 (そんなで言われても……)


「昨年の参加クラブは39で、クラブ賞は『今年も受賞確実』と名高い『アートフラワーの会』でした。一方で、我がまほ研が得た投票数はです」


 表情(どや顔)を崩さずに、黄髪のフランソワが説明をする。


「たったの……2」


 (底辺人気の『魔法研究』に対し、ライバルは受賞候補(つまりは頂点人気)の『フラワーアート』か)


 の差が激しい。


「とっ、とりあえず偵察に行きましょう。競争相手を知らなければ、も浮かびませんわ」


「はいっっ! ちょうど今、庭園で準備中の筈です」



 私達は裏(庭)から表(庭)へ移動し、校舎の影から庭園を覗いた。


「――げっ! フロレンヌ嬢!?」


「ええ。彼女が120名から構成される、通称会のであり、次期クラブ長です」


「ひゃく……しかも、次期クラブ長って――」


 ショックで放心状態の私に、こちらのクラブ長から厳しい現実が次々と突きつけられる。


「今年のアフラ会のテーマは『服』――作品発表の最後に、学院産の草花で製作されたドレスが披露されるそうです。着用するのはおそらく、フロレンヌ嬢かと……」


 (おいおい……劣勢すぎやしないか?)


 そんな思いで花に水をやる恋敵(フロレンヌ)を眺めながら、私は更なる厳しいを見つけてしまう。


『花……負けてね?』


 相乗効果どころの話ではない。

 大量の草花が引き立て役に回り、圧巻のが仕上がる未来が容易に想像できた――。




「……うーん、どうしたものか」


 教室への帰り道でも、私は脳を酷使させる。


 時間も無い。

 予算も無い(会員人数に応じて上限が決まっている)。

 人気も無い。


 そしてフロレンヌ嬢……状況は明らかに不利だ。勝てる手立てが1つも見つからない。


 引き受けるんじゃなかったわ。

 だからと言って、またのも嫌だし……。

 

 (うぅ、考え過ぎて頭が痛い……)


 そんな時だった。


 

「――!?」


 (今、何て言った?)


 ギリギリまで追い込まれた脳内に、前を歩く数人の生徒から『キーワード』が響いた。


 顔見知りではないが、ある話題で盛り上がっている下級生に声を掛ける。


「貴女達、少しお聞きしますけれど……今は『占い』が流行しているのかしら?」


「――ライリー様!? はっ、はいっ! 特にが……」


「王都では占いを建てる計画もあるそうですよ! ライリー様も占いにご興味が?」


「ええ、まあ……ありがとう。助かりましたわ」


「そんなっ! お話しができただけで光栄ですっっ!」


 後輩達に手を振りながら、私は確信する。


 (、イケるっっ!)


 しかし、それはいばらの道。


 (きっと怒りを通り越して『ブチギレる』だろうな……)




「はぁー!? アンタふざけてんの!? 死んでもお断りよっっ!」


 案の定――。

 屋敷へ帰ってから時間を割いて、事情を丁寧に説明したにも関わらず、使用人の少女は通常の5割増しで『あるじ』相手に、怒りを爆発させた。

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