第25話 ~目障り~

 文化的交流会まで、後1週間。


「おはようございます!」


「ごきげんよう、ライリー様」


 始業時間にはまだ1時間以上もあるが、既に学院は生徒で賑わっていた。

 どんな出し物でも、開催が迫れば忙しくなる。

 私のクラスも使用人を招いて、朝練(接客術習得)に励んでいた。


『……ん?  何だアレ?』


 廊下側の窓から、が1つ見える。

 

  (色か……ラヴだな)


 何も言わずに、じっとこちらを彼女。

 私は仕方なしに腰を上げた。



「どうしたの? 隠れていないで、呼べばいいじゃない?」


「私達(まほ研)とライリー嬢がだと、色々不都合なのでは……?」


「別に誰とでも、私の自由でしょう? 人目を避けて裏庭へ行くのは、クラスの(催事)準備を抜け出しているからよ」


「それは……ありがとうございます」


「お礼も必要ないわ! で? 用件は何かしら?」


「緊急『クラブ会議』を開きますので、放課後に! 活動室へお越しください」


「へっ? 何で……ちょっ!」


 私の返事を待たず、ラヴはその場を足早に去って行った――。




 その日の放課後――私は『まほ研クラブ会議』に出席をする為、裏庭にあるボロ小屋を尋ねる。


 (そー言えば、名前をだけじゃなかったっけ?)



 そんな疑問を持ちつつ、小屋に到着。

 中へ入って間もなく会員5名がテーブルを囲むと、会議は始まった。


「ライリー嬢……わざわざお越し頂き、申し訳ありません」


「魔法書の返却以来ね、クラブ長。私も一応会員ですし、話を聞きますわ」


「大変な事態になりました……聞いてもらえますか?」


「ですから『聞きます』と言っているでしょう?」


 クラブ長のミラが、わざとらしく咳払いをする。



「では遠慮なく……我が魔法研究クラブは、します!」


「……そう、残念ね」


 静まり返る、元・家畜小屋。


「反応が薄いです、ライリー様。そこは会員として驚くべきところではないでしょうか?」


 青髪のアルデが私の反応に対し、疑問(不満)を投げる。


「所属期間も短いですし、特に動揺もしていません。私の事はどうかお気になさらずに、最後まで頑張ってください」


 私が席を立とうとすると、ミラが拳でテーブルを叩いた。


 (うっわっ、痛そう……)


「しかぁーしっ! 解散を免除させるが、1つだけあります!」


「それは……良かったですわね」


「投票で決まる催事コンクールにおいて『クラブ部門賞』を勝ち獲れば、文句無しに存続が決まるのです!」


「でしたら尚更、健闘をお祈りしますわ」


「ライリー嬢! 私達は何もしていないのに、学院から『今回の様な扱い』を数多く受けています! 貴女は悔しくないのですか!?」


「……」


 やはりそうか……。


 (まほ研へのは、学院のだったのね)


「でも何で、(わざわざ)学院が?」


「理由は学院のだと、考えられます」


「歴史? 歴史って『魔法』の事?」


「はい。約500年前、主に魔法を教えていた5つの学校――モスカトアには、数多くの魔法使いが通っていました。しかし戦争によって、学園は『軍隊』へと変わってしまったのです」


「学校が軍隊に!?」


「ええそうです。魔法使いは戦争において、少人数で大きな成果を与えました。それに味を占めた当時の王国は、全ての魔法使いを軍人に……その決定によって生徒だった子供達も戦場へ向かい、殆どが命を落としました」


「何て酷い事を……」


「大昔の話しなので魔法の存在に疑問を持つ人間も多くいますが、学園が生徒を戦争へ参加させたのは事実です。おそらく私達の活動が、モスカトア学園(王国)の『非』を連想させると懸念しているのでじょう」


「たかがクラブ活動で? 学院もちょっと神経質になり過ぎじゃないかしら?」


「それ程の『罪』という事です。だからこそ、私達ですら『目障り』なのだと思います」



「でもっっ! 私達は負けたくありません!」と青。


「このまま黙って、権力に屈するのは嫌です!」と緑。


「罪は正式に公表をして、国民で反省を共有する事が、真のではないでしょうか!?」と黄色。


「『解散』だなんて、歴代クラブ長へ合わせる顔が……」


 これ見よがしに、紫(クラブ長)が下を向く。


「……」


 (頼むっっ! 誰か私を止めてくれ!)


「もうっっ! わかったわよ……協力をすればよろしいのでしょう!?」


 こうして、厄介な問題がまた1つ追加された。

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