第7話 ~消えた主(ネムの葛藤その2)~
「申し訳ございません、ネムさん。今日は父も母も不在でして、私のもてなしでは至らないところもあるかと思いますが、どうぞ召し上がってください」
(スゴい、ご馳走……)
屋敷に到着後、想像以上の豪華な料理で歓迎をされたネム。
外見
「ネムさんは、どちらにお住まいなのですか?」
食後のティータイムで、紅茶の入ったティーカップをソーサーに置いたネムが、うつむき気味に答える。
「シンリョクの森
「シンリョクの森……確か『神秘的な緑』で有名ですね。しかし、とても深い場所に位置すると聞いています。国境も越えなければいけませんし、かなりの長旅ですよね? 目的地はどちらですか? 何処へでも馬車でお送りしますよ」
「いえ、森へ帰ります……『耳の形が普通ではない』のに、町へ出た私も悪いのです。気にしないで下さい」
「耳……ですか? 良く似合っていますよ? ネムさんのチャームポイントですね!」
澄みきった青空のような笑顔を見せる、伯爵令嬢。
晩餐終了後、ネムはキュラス家の使用人を志願した――。
「……」
出会いから3年が経過した昨日――
「壊れそうだよ……また助けてよ、ライリー」
3年前のライリーが直してくれた、黒頭巾を握り締める――。
「ネムー! ドコにいるのぉー!?」
「……チッッ!」
今現在『最も聞きたくない声』が、直ぐそこまで迫っていた――。
◇◇
「あっ! 見つけた! こんな所で、何をしていたの?」
ライリー・キュラスとなった翌日――。
ヤプに居場所を聞き、私はクガイを連れて森へ入った。
目的はネムと話をする為だ。
子供が条件達成に役立つのかはまだ不明だが、私の存在(中身)が原因で、12才の心に傷を負わせたのは確かだ。
「そっちこそ、何しに来たの? この際だからハッキリ言うわ。私はアンタが大嫌いよ! 仕事はするけど、他は関わらないで! 鬱陶しいのよ……あっっ!」
強気発言の後に、何故か慌てて頭巾を被る少女。
(髪型が
「……何も言わないの?」
「『言う』って何を? 私が嫌いなんだよね? 理解したわよ」
「違う! そこじゃなくて……今、私の耳を見たでしょ!?」
「耳? ……ああ、自慢をしたいの? ハイハイ。可愛いー可愛いー、
「えっ?」
「まだ足りない? 言われ慣れてるでしょうに……でも続きは後で! もうすぐ日が暮れるから、屋敷へ戻りましょう」
(直ぐに暗くなるわ。早く帰らないと! 来た道は確か、向かって
「右はダメっ! 獣が
「あら? 『大嫌い』なのに、危険は教えてくれるのね?」
「別に……アンタの
「ふぅーん」
(ヤバッ! 母性本能が開花しそう……)
「もうっ! ほんっとに、鬱陶しい人ね!」
顔を赤くしたネムは、怒って先に行ってしまった――。
「……どう思う? クガイ」
「なかなか手強い
「思春期? こっちにもあるのね、懐かしいわー! ……ところでクガイ? 眼鏡を外してくれるかしら?」
『日暮れ時の視界悪化』を理由に、今日もイケメンは拝めなかった――。
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