第5話 ~理不尽~

 それから、約1時間後――。


「そう……ゲプッッ!」


 私の腹は、ハーブティーですっかり満たされていた。


 確認がてら、ヤプの長話を要約する。

 

「つまり、(条件を達成させる者)として産まれた・ライリーは、この世界である男性に恋をした」


「ああ」


「でもその相手は、此処とはまた別の異世界へ転生してしまい、彼女は救世主の特権である※転生の権利? を使用して、彼を追う事に決めた」


「そうだ」


「しかし……既に進行中の条件と救世主の器(体)は、継続させるのが鉄則。だからどうしても中身のが必要で、私を選んだと?」


「その通りだ!」



 以下、妖精による補足1――。


 ※転生の権利とは、条件達成が難しくなった際に、1度だけやり直しが効く権利。それまで暮らしていた世界とは異なる世界へ転生し、新たな条件が与えられる。但し権利発動は前条件に対し、達成率30%以上の後任者を探し出せた者に限る。



 以下、私の感想――。


『……自分勝手じゃね?』


 こちらから見れば、単なる駆け落ち(逃げ)でしかない。無責任にも程があるでしょ!?



 因みにこの世は(補足2)、私が元々暮らしていた世界の他に此処を含めて2つの異世界があり、互いが存在することでバランスを保っている。


 トライアングル状の3つの世界……その1辺でも崩壊すれば、他の世界にも連鎖してしまい、全てが元の『無』へ戻るのだ。


 それを阻止するべく、各々おのおのの世界には、複数のがいるらしい。

 選ばれし者達が、数ある条件を『1人につき1つ以上』達成させる事で、3つの世界が破滅(崩壊)へと導かれない様に調整をしている。


 もっと言えば、前・ライリーの恋人も、その救世主とやらに選ばれていた。

 この世の『かなめ』同士に生まれた恋……引かれ合う『何か』があるのだろうか?


 長話の補足2で付け加えられた重大な事実に、私はただただ驚いた。

 


「……結局、私達は捨てられたのよ」


 肩を落とした少女が嘆く。


「ネム! 何度も言っただろ!? 生まれながら(原始)の救世主には『協力者』も条件未達成で処刑される――彼女はお前達を巻き込みたくなかったんだ。いい加減に理解をしろ!」


「でも……それでも私は、一緒に行きたかったっっ!」


『ヤプ・ネム』の口論が激しくなる。

 他の2名は、彼等の仲裁に入った。


「……」


 いやいや、私は?

 グルグルに巻き込まれてますけど!?

 条件未達成で、処刑されますけど!?


 そう怒りのツッコミを入れたかったが、一応新たな救世主? として冷静を装い、どうにかその場を納めた。


 皆の協力が得られなければ、成し遂げるのはおそらく不可能だろう。


 屈辱に耐え、感情を殺す。

 それもこれも全部、森のプリンスと為だ――。



『あっ!』


 イケメン(仮)使用人の顔面を拝み忘れた。

 この空気で言い出すのは……無理だな。

 また今度にしよう。

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