第7話 呪わない選択、しかし……

 わたしは今後の呪いの学習について長考をしていた。シスターは立場上として相手を呪う事を推奨している。


 黒魔術を極めるのか。つまりはシスターの同好会に入る事になる。少し黒魔術についてネットで調べてみるか。


……。


 かなりエグいな、具体的になると平和な日常がこいしくなる。シスターはあんなに可愛いのに黒魔術を使うと言う。


 そもそも、この学園に入学する生徒はイジメが原因の生徒が多い。ただメッセージアプリのグループに入れなかったなど最近のイジメは外から見えにくい。


 結果として逃げ出すかたちになるのだ。


 この学園は山奥の全寮制である。そんなこの学園は社会からの呪縛を解き放ち、つまりは個が個である証明に適した環境なのかもしれない。


 わたしは職員室に行きスマホに残っている、一枚だけある生徒会長の写真を印刷する。


 それから、ワラ人形に五寸釘に金槌のセットを手に入れる。呪い用具室に行くと簡単に手に入ったことが怖い。


 わたしも初心者に向いた方法で呪いを体験することにした。ワラ人形専用の林に向かうと、そこは地獄絵図である。辺りは多数のワラ人形が木に刺さっている。


 これで初心者の呪いか……。


 わたしは足取りが重く感じながら、林から引き返す。帰り道に友恵と川菜が待っていた。


「あなたは優し過ぎる、この学園は進学校として使いなさい」


 友恵の言葉が悟った救世主のように聞こえる。この学園はまだまだ奥が深い。


***


 この学園には校内医師がいる。危ない呪いを使い怪我をする者がいるからだ。川菜が手首を切って血の呪いを試したのだ。軽い傷ではあるが念のため校内医師に見せることになった。医務室に向かうと白衣を着た体育会系のマッチョな人がいる。


「すみません、校内医師ですか?」

「はい、そうです」


 わたしと川菜は椅子に座ると校内医師が診察に入る。


「大きなばんそこうがあるから貼っておくね」


 話によると、軽い切傷はばんそうこうでいいらし。


「こんなに簡単でいいのですか?」

「はい、傷口が汚れていたら綺麗にして、ばんそうこうを貼っておくのです。基本人間の治癒力は大きいのでこれと言った治療は必要無いのです」


 はーなるほどね。プロが言うのだからそうなのであろう。


「この傷からして呪いかい?」

「はい、呪いの代償としての生き血です」

「この学園では珍しくないけど、ほどほどにね」


 わたしもこの学園に来て感覚が鈍っている気がする。普通、リストカットなどすればドン引きするだろうに、平気な気分だ。


「さて、川菜、帰るか?」

「はい」


 何だか保護者になった気分だ。しかし、友恵との関係を考えると、どちらかを選ぶのかもしれない。


***


 わたしは深夜自室を出て自販機の前に行く事にした。少し眠れない気分であった。寮の方から校舎に向かい部室棟の隣にある自販機だ。わたしはカードキーを取り出して。


 ピコっと支払う。


 実に便利だが定期的にチャージが必要で時に不便さを感じることもある。


 ガッタン。


 出てきたジュースを開けて自販機前のベンチに座る。ふーもう少しで決断できそうだ。簡単なきっかけが欲しい気分である。


 うん?誰か来た。シスターである。


「星が綺麗ですね」


 はい……?


 シスターが話かけてくる。これは告白なのか?


「はい、綺麗ですね」


 確かに星が綺麗であった。ここは山奥で遮る光が少ないので、星が綺麗に見えるのだ。それから、二人で缶ジュース飲みながら空を眺める。


……。


 何を迷っていたのだろう。わたしは呪いを使わない事に決めた。


「シスター……ゴメン、わたしは呪いに向かないらしい」

「なにを気にしているの?わたしはこの学園のシスターよ。生徒の相談に乗るのが使命よ」

「シスター、ありがと」

「ただし、この学園で呪い教科を取らないとなると本当に京大に行ってもらうわ」

「はい」


 でも、シスターは何故、この夜中に自販機の前にいたのだろう?


「ここはこの学園のざんげ室よ、悩みを持った者は大抵、この自販機の前にいるの」


 わたしはホッコリしてシスターを見つめる。


「ななな、わたしに惚れてもの無いも出ないわよ」


 やはり、シスターエンドもいいかな。


うん?、メールが届いている。前の高校の生徒会長からだ。

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