ものを増やさない究極の方法

 ものの少ない部屋、丁寧な暮らしに憧れて、断捨離を決行しようと試みたが、私には難しかった。ものを減らす、ということが苦手なのだと今さらながら実感している。


 ものを減らすスピードは亀並み、手放す決断も優柔不断。手放すことのレベルは、あまり変わっていないのではないかと思う。


 そんな私だが、少し変わったことがある。こんな私だから、かもしれないが。


 それは、買うことに対するハードルが上がったことである。


 「安いから」「とりあえず」、そんな理由で増えていたものたち。だけど私は捨てられない族の住人。家にものを迎え入れたが最後、手放すことは簡単ではない。


 行き着いたのは、手放させなくても、買わなければものは増えないということだ。


 ものを買うときに本当に必要なものか考える。買うと決めたときにはきちんと調べて買う。納得したものを買う。当たり前だけど大事なことだ。


 間に合わせで買ったけど意外にずっと使ってしまうもの、というのもあるにはあるが、どうにも使いものにならない、ということは多い。そういうものは数回で端に追いやられ、きれいなまま放置される。


 あまり使っていないから、きれいだから、となかなか捨てることができないのだ。いつか使うだろう。いつか、は来ない。来ることもあるが、ほぼ来ない。


 というわけで、手放すことが苦手な人間はまず、ものを持ちこまないことが大事なのだ。自分が手放すことが苦手なジャンルほど特に。


 私の場合は本がそうだ。気になった本を買って読んでいるとうまく手放せず、無限に増えていくだろう。


 出版業界と書店にお金を落としたい、とは常々思っているが背に腹はかえられない。好きな作家など買うと決めているもの以外は、とりあえず図書館を利用する。読み返したいと思った本は、購入する。


 本の増加は、少しはゆるやかなものになる。


 服や靴などは、ためしに買わずに過ごしてみる、という手もある。服はあるのに着ていく服がない問題も越えて、意外となんとかなる。自分がどんな服を着たいのか、何が多くて何が足りないか、傾向も見えてくる。


 増えなければ、傷んできた服を手放すときに必然的に総量は減る。それでもまわせるのか、あるいは必携アイテムで買い替えるのか。むやみにものを買うよりも、変化はゆるやかだ。


 ものの量を増やしたくない、減らしたい、そして自分はものを手放すことが苦手だ。そのことに気づくだけで、買い物に慎重になった。


 妥協がなくなったので、買うときのハードルは高い。本当に今、必要であれば多少の難点に妥協することもあるが、そうでなければ簡単には妥協しない。見極めて買い物をするので増加はゆるやかだ。


 加えて、納得して気に入って買っているので、買い物に対する満足度も高い。これも大切なことで、気に入って使うことができれば、不満から買い足したりということをしない。あらゆるもったいないを排除できるのだ。


 むやみにものを買わないこと、それは今あることを大切にするということでもある。前章にもつながるが、もったいないおばけも納得してくれることだろう。

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