閑話 おにのおはなし

 むかしむかしあるところに、にんげんを食べてしまうわるいおにたちが、すんでいました。

 そんなおにたちは、まわりの村むらの人たちからおそれられていました。


 ある日、ちのにおいがきらいな、おにの女の子が言いました。

「にんげんのおにく、食べたくない。」

 おにのお父さんは、言いました。

「食べなきゃあ、だめだよ。」

 おにの女の子は、ふたたび言いました。

「ちのにおいが、きらいなの。」

 おにのお父さんは、言いました。

「それでも、食べなきゃあ、だめだよ。」


 それでも女の子は、ずうっと、ずうっと、ちのにおいがきらいでした。

 女の子は、いえ出することにしました。

 それまでなかがよかった友だちをつれて、とおくへ行きました。

 女の子といちばんなかがよかった友だちは、にんげんのおにくが大すきでした。


 女の子と友だちは、いえからとおくの村にある、どうくつにすみました。

 女の子は友だちみんなにたいして言いました。

「にんげんの村ですむのだから、にんげんのおにくは食べないようにしてね。」

 友だちは、しぶしぶうなづきました。


 みんなでなかよくくらしていくには、食べものがひつようです。

 おにの女の子は、村へ行き、食べものをめぐんでもらおうと思いました。

 まずは、やさしそうなおばあさんに言いました。

「あの、食べものをめぐんでくれませんか。」

「なんだい、おにの女の子かい。すまんがあっちへ行っておくれ。」


 つぎに、つよそうなおじさんに言いました。

「あの、食べものをめぐんでくれませんか。」

「おにめ、おまえたちにあげる食べものはない。」


 ひどく言われて悲しくなったおにの女の子は、さいごに同じくらいの年の女の子に言いました。

「あの、食べものをめぐんでくれませんか。」

「まあ、かわいそう。ひどいことを言われたのね。」

 おにの女の子のほっぺたには、なみだがながれました。


 にんげんの女の子のいえは、のうかでした。

 にんげんの女の子は、しんせんなやさいをたっぷりともってきました。

 おにたちはお礼に、のうかのお手つだいをはじめました。


 どうしてもにんげんのおにくが食べたい友だちも、にんげんの女の子となかよくしているうちに、食べたくなくなってしまいました。

 気づけば、だれもにんげんのおにくを食べたがるおにたちは、そこにはいません。


 さいしょは、にんげんの女の子はおにの女の子といっしょにいじめられてしまいました。

 ですが、おにたちがいっしょうけんめい育てたやさいは、ほっぺたがおちるおいしさでした。

 おいしいやさいのおかげで、女の子はみんなと仲良くなり、しばらくすると、おにとにんげんが共にくらす村ができました。

 その村では、おにはおそろしいものではなくなりました。

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