迷子の風船
藤泉都理
迷子の風船
私の身体は非常に扱いにくいものへと変化してしまった。
原因は不明。
危機を察知した時、私の身体は九つの風船に分裂、瞬間移動をしてあちらこちらと散らばり。
しかし、危機が去った時、九つに分裂した私の身体は勝手に融合して元の人間に戻るはずだった。
のだが。
「おいてめこら。さっさと元に戻らねえか」
「危機が去ってないので元に戻らないのかと思いますが」
「ああん?私が来てやってんのに元に戻らないってどーゆ―こった?」
「そのあなたが危機。いえ、何でもございません。あのー。一つの風船は多分、瞬間移動を繰り返し過ぎて迷子になってしまったんだと思います。元々、私方向音痴ですし」
「知ってるよその迷惑な体質のおかげでこっちがどれだけ苦労しているか。人間だった時だけでも厄介だってのに、風船なんかに分裂しやがって。おらさっさとてめえも瞬間移動しろ気配を察知して連れ帰って来い」
「はは、そんな気配を察知だなんて、漫画じゃあるまいし。私はただ無意識下で瞬間移動を繰り返していつの間にか元の人間に戻るだけなのに」
「どうにかしろ」
「どうにかって。あのー多分ですけどー。あなたが居なくなったらー元に戻るような気がーするようなしないようなー」
「そうはいくか。もうてめえを見失うなって首領の命令なんだよ」
「いやーでもー」
「首領の厚意を無駄にする気かてめえ」
「いやー。確かに私があなたたちのやばい状況に遭遇するのが悪いんですけど。そもそもやばい状況を作らないでくれたらこんな厄介な事には………本心を隠す私が迷子になっているせいでですねこんなにぺらぺら喋っちゃうんですよ気にしないでください」
「………よしよしわかった。私が悪かった」
「じゃあ」
「私が今からてめえが緊張が解ける場所へ連れてってやる。どこがいいんだ?言ってみろ」
「あなたの居ない場所」
「却下」
じゃあもう風船は迷子になったままです。
「てゆーか警官のくせにそんなに言動が粗暴でいいんですか」
「警官も多種多様だし、そもそも私は警官じゃねえし探偵だし」
「探偵なら迷子の風船を見つけるのも容易いでしょうに。あ、名探偵じゃなくて、迷探偵………早く見つけてくださいよ!!!」
「逆ギレしてんじゃねえ!!!」
(2022.12.12)
迷子の風船 藤泉都理 @fujitori
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