XXIII

「そうだ、名前付けてよ

いい加減僕もここの軍に仲間入りしたんだから、「お前」としか呼ばれないの嫌だな〜

あ、でも…、やっぱり付けてもらうならQualがいいなー

Qualが一番僕のこと知ってるし。Qualに付けてもらうことにするよ」


猫は私の机の上の端の方で寝っ転がり、欠伸をしながら言った。

…後ろ足で首を掻いたりと、本当にいつに増して気の抜け切っている様子だ。


「Qualは今は仕事の途中で手が空いていないぞ

…、もうすぐ昼休憩が入る時間だ。その時にでも話しかけに行ったらどうだ」

「おっけー

それまで寝てよ。おやすみー」


ころころと考えの変わる奴だな…。

それに、本当に良く喋る猫だ。

…けど、まあ、

仕事の邪魔をされる訳でもないし、余計なことをする訳でもない。

会話に付き合ってやらなければならない程度で、その他のことは特に気にならなかった。

…本当に此処なんかの居心地がいいのなら、好きなだけ居ればいいが…。


「あっ、Qual」


猫はスッと状態を起こし、反応させるように尻尾と耳を立てながら部屋の入り口の方を見た。

丁度、QualがMajorと一緒に部屋に来たようだった。

…Majorが書類を運んでいるのを、Qualが見かけでもして手伝い始めた、と言った感じだろうか。

猫は机から降りると、Qualの足元に擦り付くような仕草を見せ、腹を見せるようにその場に寝っ転がって見せた。


「丁度いいところに来た〜

ねえQual、僕な名前を付けて欲しいんだ

いい名前付けて」

「名前…?そうか、まだ名前すら付けられていなかったのか

どうしようか、覚えやすくて馴染みやすい名前がいいか?

丁度今手が空いたから、風当たりのいい場所なんかにでも行こうか」


Qualは書類をMajorと一緒に置いた後、猫をその場から拾い上げ、私に一礼して部屋を去って行った。

どうやら、Qualもあの猫を気に入っているようで、面倒も積極的に見てくれているらしい。

私としてはありがたいし、あの猫がQualの元を望んでいるのならば私は構わないし、彼の居たい場所に居ればいいと思っている。

…あの猫はかなり自分で考えて行動が出来るようだから、大体は構わなくともも大丈夫だろう。

暇ならば、その場にいる誰かに話しかけたりでもしていそうだ。


「大佐、そう言えば、前に話していたことなんですけど…、」

「ん、…あぁ、次の調査の話か

そうだな…、丁度話も纏まってきたところなんだ」


大佐は机の隅に置いてあったパソコンを手に取ると、画面を開いて映し出して見せた。

僕も見えるように大佐の隣まで行き、その画面を覗き込んでみる。

……これは、

…、人間の、男性の画像…?


「次は、ドッペルゲンガーの軍に関しての情報を集めていこうと思っている

ここの軍が、今度とある場所で開催される催しに参加するらしくてな、いいチャンスだと思ったんだ」

「…ドッペルゲンガー、ですか?

……、でも、大佐、

ドッペルゲンガーって、会ったら死んでしまうのでは…、」


そもそも、何故ドッペルゲンガーの軍の情報を集めるのに人間の男性の情報も必要なのか…。

何か、大佐に考えでもあるのかな…?


「ああ、その噂か

それなら安心してくれて構わない。それに関しては既に迷信だと言うことが発覚しているんだ

実際、見ただけで死ぬことはないと言う情報だ」


大佐はパソコンに繋がったマウスを動かしながら淡々と話していた。

そっか、迷信なら大丈夫、なのかな…。


「…それで、調査に行く前に、少し試したいことがあってな

と言うより、実験…、だろうか

それがこれに関係してくるのだが、」


大佐はパソコンの画面に目配りをしながらそう言った。

…僕はそのパソコンの画面と睨めっこをするように見つめた。

…、どう言うことなのかな。


「まず、ドッペルゲンガーは私達と全く顔が同じだ

すれ違いなどするだけでも正体がバレたり、人に話しかけられたりするだけでも、ドッペルゲンガーがそこにいる事によって話の辻褄が合わなくなる場合もある

つまりは、最低限でも顔や格好は隠さなければならない

…そこで、少し考えたのだが、」


大佐は一旦パソコンから手を離すと、今度は引き出しから二、三枚の書類を取り出した。


「この時のみ、人間の姿になって侵入するのはどうかと思ったんだ」


…人間…。

人間に返信するなど、生まれて一回も想像をしたことがなかった。

本当にそうする場合、実際はどう言った感じになるんだろう…?


「……に、人間に…?」

「能力の力を借りて顔を変えることも考えたが、それだと恐らくそうしている期間が長いせいで能力を使わせた隊員などには負担をかけてしまうことになるだろう

調査の為の用途も踏まえ、ナース達が一定期間人間に変身が出来る薬を製作してくれている

それが最近、丁度完成に近付いているようでな

使用する際にはしっかりと確認をした後のものになるから、実際に私達が使う頃には副作用で害が出る恐れはないものと見る

完成までも、そう長くないようだ

完成次第、一度それを私達が服用してみて、身体に合うか合わないかどうかを確認したい

もしも体調が悪くなるなどの症状が出てしまっては元も子もないからな」


わ…、本当に、人間に変身する機会ってあるんだ。

…想像するだけでも何だか色々と考えてしまう。

…人間になるってどんな感じなんだろう?僕達の身体とはどう変わってくるのかな。

人間には皮膚があって、寒さや暑さ、痛みを強く感じるようになるらしいけど…、それってむしろ身体への影響が増えるって事なんだろうけど、大丈夫なのかな…。

今考えただけでも、不安で心配なことも多い。


「それで、試しに服用してみる日には、

着慣れない服装で外に出てみる事にしようと思う

服用をして、私達の身体が普通に生活を続けられるかどうかを知りたいんだ

その詳細に関してはまた随時連絡を入れるようにするが…、

静かな場所よりも、なるべく調査当日に近い環境で様子を見たい

少し人混みのある場所になるかもしれないな」


も、もうそんなに計画が進んでるんだ…。

そっか、…いつぐらいになるのかな、一週間後…?もう少し先かな、それよりも早くなるのかな……、


「…、まあ、大丈夫だ

また予定が近くなったらしっかりと連絡を入れる。Majorが焦る必要はない」


あ、…、心を読まれたのかな…。

大佐は、少し安心させるような表情で僕にそう言った。

……僕も、何か自分で出来る事はしておきたい。人間の身体や症状について多少は調べておいた方がいいかもしれないな。

予定の日が来るまでに、ある程度の知識は持っておくようにしよう。

…あぁ、でも、

やっぱり緊張する、と言うか、本当にどんな感じになるのかが分からなくて不安だ。

……、そう、思っている僕でも、

ほんの少しだけ、どこか、

興味があって楽しみに思う気持ちもあった。

—————————————————————————

…、今日が、人間になって外に出る日だ。

時は本当に早いもので、この日になるまでもあっという間に感じられた。

今日僕は渡された薬を飲んでベッドに入ったけど、

…効果は、出てるのかな。

僕は目を覚まして、ベッドからゆっくりと身を起こした。

…?

何やら軽くて細いようなものが目の前へ垂れてきて、

ふと、それを手で触ってみる。

……これは…、

それに、何だか肌の触り心地もいつもと違う。

…同時に目に入った自分の手は、

…肌色、肉が付いている。

僕は少し急ぐようにしてベッドから下りると、

部屋の中にある、鏡の前に立った。


「……、」


…見慣れない顔が、そこにあった。

確かに、人間だ。

…本当に、自分が人間に……?

でも、目の色や顔立ちには、どこかスケルトンの時の面影も感じられる。

こんな、一晩で、本当に…、

…。

…僕は、ほんの少し不安な気持ちを抱き、

一旦そのまま部屋を出て大佐の部屋まで向かった。

大佐の部屋のドアを、ノックもせずに開けようとしてしまう。

…いつもノックはもうしていないが、何だか緊張を覚えてしまって、思い留まるようにしてその部屋のドアをノックした。


「入れ」


中から、確かに大佐の返事がした。

…僕も、間違いなく確かに昨日寝る前に人間になる薬を飲んだ筈ではあるし、今の時点で何か異常がある訳でもないけど、

…何だか、慣れない自分や身体を見ると、どうしてか、スッと受け入れるようにはいかなかなくて。

僕はそっとそのドアを開いて、中を覗き込むようにして入った。

……、そこに立っている人が、ネクタイを締めている途中に鏡から目を離し、僕に顔を向けた。


「…、…Major?」


…、大佐…?

僕は返事も出来ないままその顔を見つめた。

…でも、

目の色が、大佐だ。…声も、大佐だった。

それにやっぱり、骨格や顔立ちも、大佐な気がする。

大佐も、人間になれたんだ。


「…、」


大佐は喋らないままその場から僕の方へと近付いた。

…僕は、近付いてくる大佐の顔をそっと見上げる。

…そして、不本意なのか、大佐は僕の頬に手を当てた。


「…、悪くないな」


大佐は、呟くようにそう言った。

…、あったかい。

これが、体温?

皮膚があるから、感じられるもの…?

相変わらず大佐の手は大きかったが、

いつもよりも温かくて、より、包まれている感覚がする。

…そう、される事を、更に求めてしまいたくなるような気持ちに駆られた。


「……、…」


僕は空気に浸って何も言えないまま、大佐の顔を見つめ返し続けた。

大佐の顔も、相当に綺麗なものだつた。

僕達は普段スケルトンとして生きていて、大佐と向き合う時もスケルトンの顔ではあったけれど、

…、人間の大佐も、

簡単に言えば、物凄くカッコよかった。…本当に、綺麗だった。

僕は同じように大佐に「綺麗」などと伝えたかったが、

ウブな気持ちになったように恥ずかしくなり、俯いてしまう。

…。

…人間って、こんなに温かい生き物だったんだ。

今までそうであることを知らなかったのが、勿体無いようにまでも思えてしまう。

僕は自分の頬に当てられた大佐の手の上から自分の手を重ねた。


「…、時間はまだあるが、

まあ、ゆっくりするのは後からにしよう

とりあえず着替えてきてくれ」


…そうだな、

人間でいられるのは少なくとも今日一日まではあるから、後からゆっくりしよう。

…それに、僕の心も落ち着かせる必要がある。

頭が回らなくて喋れないようじゃ、何も始まらない。

大佐にそう声をかけられ、

しっかりと声も出せないまま返事をし、一旦自分の部屋に戻ろうとする。


「あ、待ってくれ

…Majorの着替えは既にこっちにあるんだった」


……?

僕はドアの方へ向かう足を止め、また大佐に振り返った。


「…しっかりと伝えられていなかった

だがまあ、もしかすると断られてしまうのではないかとも思ってしまってな、

若干、お前に言い逃れの出来ない状況を作ろうとしてしまっている」


大佐が何の話をしているのか分からないまま、僕はそこに突っ立ってその話を聞いていた。

…何の話をしてるのかな……?

大佐は部屋の奥の方に置いてあった段ボールの中を開けると、女性用の服のようなものを取り出した。




「………えっ、と…

本気、ですか…?」


なんと、前に大佐が言っていた「見慣れない服」とは、

僕に対しては、ドレス服のことだったのだ。

…しかも、女性用…。

ど、どう言うこと…?


「Majorは女性に近い顔をしているから、少し細工をすればぱっと見女性に見えなくもないと思ってな

もしかしたら今後、女装までして調査に行かなければならない可能性もなくはない

…例えば、男女の組み合わせのみでしか参加出来ない催しなど

そこに調査をしたい軍が絡んでいたら、そうせざるを得ないこともありうると思ったんだ

それで、今日は少し、その日が来た時の為の練習にもなるだろうかと思ってな」


…うーん…。

仕事なら、やらなきゃいけないこと、なのかな…。

でも確かに、これからの為の有益な情報を集める理由なら、そうすることもあるかも知れない。

…けど……。

僕はされるがままに大佐にドレス服を着させられている途中だった。

あまり派手なものではなくて、若干ワンピースのような服に近く、少しフワッとしたボリュームに飾りが付いているようなもので、…ほんの少しだけ、重いように感じるような感じないような……。

……、


「……、うむ、

流石サイズも問題なさそうだ

それに、やはり着てみれば似合わないこともない」


ドレス服を着終え、僕は大佐に身体ごと向き直った。

……。


「に、似合わないこともないって、何ですか…」

「まだこのままでは変装は完成していない

…女装、と言うよりかは、調査の為の変装と言った方が納得はいかないだろうか」


大佐は段ボールの中から、

更にウィッグのようなものを取り出した。

…そして、そのままそれを僕に被せて整えた。


「……、」


大佐が離れると、…恐る恐るすぐ横にある部屋の鏡の方を向いた。


「…、女性にしか、見えなくはないか?」


そこには、髪が長くなったように見える僕が立っていた。

…これが僕…?

……でも、自分で自分を見ても、これが実際いいのか悪いのかどうかなんて分からない…。

正直、似合ってるのか、似合ってないのかすら…。

…けど、

人間になって、髪の毛があるからこそ出来る格好でもある。

スケルトンのままでは、到底出来ない格好だ。

…それに、これ、

本当に、似合わなくはない、のかな……?


「私の想像通りだったのではないだろうか

ここからメイクなどもすれば、完全に女性にしか見えなくなるかもしれない

…私では出来ない変装だからこそ、試してみたかったんだ

勝手に使うようにしてしまって申し訳ないな

今日はこれで外を歩こうと考えていたのだが、どうだろうか

…すまないな、当日に話してしまえば、断ることも難しいだろうと思って言わないままにしていたんだ」


大佐は話しながらまた自分の支度に戻った。

…振り帰り際の表情は、どこか小さく揶揄うように微笑んでいるようにも見えた。


「……い、意地悪してるんですか…?」


また僕の方に振り返ると、大佐は少しの間目を合わせ、また正面に向き直った。


「…多少な」


大佐はまた少し、鼻で笑うように返事をして見せた。

僕は若干引き攣ったような表情を隠せないまま、大佐の方へ振り返った。

……と言うか、これ…、


「…大佐が、見たかっただけなのもあるんじゃないですか…」


はっきりと喋らない状態でそうボソボソと話した。

……思ったことを口に出したとは言え、

…失礼なこと、言ったかな…。

……でも、流石にこれは…、


「そう言うことにしておいても構わないが?」


僕は再度俯いた視線を大佐の方に向けた。

…なんか、ちょっと、煽るような表情…。

……さっきからずっと、揶揄ってる、のかな…。


「やはり、気に食わないのもあるのだろうか

それはそうだろうな、趣味がある訳でもなければ普段から男性として生きているのだから違和感を覚えるのも無理はない

まあこれも、任務の一環として……、

…うむ、そうだな

ならば言い方を変えてみようか、」


引き続き大佐も自分の服を着たりしながらそう話し続けていた。

僕は少し頭が真っ白になりながら、そうしている大佐の横顔をずっと見つめたままでいた。

…丁度今、ワックスのようなもので髪を上げられているところだった。


「いつもと違う環境での、

私との逢引、と言えばどうだろうか」


髪の上げられた大佐がチラッと僕の方に視線を向けた。


「この際はっきりと言ってしまおう

その格好、Majorにはとても似合っている

直球に言えば可愛らしい。本当に女性と見間違う程だ」


大佐は髪のセットも終わると、着替え終わった服装のまま座って待っている僕の前でしゃがみ、訴えるように僕の顔を見た。

……、

綺麗な、顔……。

聞いている筈の話が耳を通ってはそのまま残らずに抜けていく感覚を感じながら、近付いた大佐の顔を見つめていた。

…、何だか、女装をしていることとかどうでも良くなるぐらいに、

大佐の顔が綺麗だった。


「…、聞いているのか?」


はっ、と我に帰り、ぼんやりとしていた視線を大佐の目に戻した。

…一瞬目を合わせた僕だったが、また恥ずかしくなって俯いてしまう。


「…全く

折角こちらも気を振り絞って気持ちを伝えようとしたと言うのに…、

私はこれでも本気で言っているんだ。せめて話を聞くなどしたらどうだ」


大佐は、ほんの少しだけいつもよりもムスッとしたような表情でそう言った。

…だって、大佐の顔が凄く綺麗で……、

…。

僕も、伝えた方がいいのかな…。


「…えっと、あの、

……人間になった大佐も、す、…、

…とても、綺麗です…」


僕は何とか声を出して大佐にそう伝えた。

…別に今まで隠す気があった訳ではないけど、伝えること以前に、頭が上手く回っていなかった。

…、ドキドキするのを抑えるのに、精一杯で。

大佐は少しの間じっと僕を見つめると、

堪えられなくなったかのように、柔らかく頬を緩めた。


「…とうに知っていることだ

さっきからお前の頭の中はそのことばかりで埋まっている」


…あ……、

…そ、そうだよね、バレない訳がないよね。

こんなにいつもより喋れなくなってて、余計に心を読まれない訳がないよね…。

……、お見通し、だったのか…。

僕は余計に恥ずかしくなった。


「……それで、今日はどうしたいんだ?

一応、拒否をする選択肢もなくはないが」

「…あ、…えっと……」


僕は返す言葉に困った。

……正直、完全に嫌とは言えなくて。

でも、だからと言ってこの格好で外に出るのは自信がない。

…それに僕、本当に女の人になり切れるのかな…?振る舞いとか…言動とか……。

そもそも喋るとしたら、声質には無理があると思うけど…。

僕は思わず、俯いたまま悩むように声を漏らしてしまった。


「……、…まあ、

絶対に嫌かと言われたら、そうではないのだろうな」


っ…、また心読まれて……、

視線だけ大佐の方に向けようとした、

次の瞬間、


「っ、!」


突然、大佐は僕の頬にそっと手を添えると、

口と口を重ねてきたのだった。

あまりに唐突な大佐の行動で、僕のソウルは跳ね上がるように大きな音を立てた。

…そして、しばらくしてから顔を離し、再び僕達は目を合わせる。


「…おはようのキスだとでも思っておいてくれ

キスをせずにはいられなかっただけだ」


…そう言って、大佐は僕に向かって笑みを見せた。

……。

今の、キスの感覚。

今までのものとはまるで違った。

何だか、柔らかくて、暖かかった。

やけにソウルが鳴って

…それに、一瞬だけでも分かる程、

今のが幸せを感じる行動だと確信した。

……、…そっか、

唇が、あるからだ。

スケルトンの時とは違って、肉もついて、唇が出来たから感じるものなんだ。

僕は無意識に、大佐の口に触れた自分の唇を指で触った。

…、人間って、凄い、な。


「…さあ、それで、結局はどうしていこうか

メイクをするならば、お前のコピー能力で数秒もかからずに済ませられるのではないか?

それも、自分の好みに

…一日程、私と逢引に付き合ってはくれないだろうか」


冗談混じりにそう言う大佐は、ネクタイを改めて整えて見せた。

…あぁ、

もう、何だか、

何でも良くなってきてしまった。

大佐との逢引、…所謂、デート。

しかも慣れない身体で、こんな格好で、こんな服装で。

…いや、もう、

それでもいいと思えてきてしまった。

こんなに綺麗な大佐をも見られている訳だし、

…若干強引だとは言えど、この、デートのお誘い。

受けてみてもいいと、そう仄かに思えてきてしまっていた。

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