XV

…夜になった。

就寝時間は本来ならば最低でも十一時で、今はそれよりも二時間前の九時。

けど、隊員達はもうほとんど自分達の寝室に入っているような時間だ。

いつもよりも早めに身支度をして準備を終えて来てみたものだが…。

…、あとはもう、寝るだけの筈……。

そんな状態で僕は今大佐の部屋のドアの前に立っていて、自分からノックをするかどうするか迷っている最中だった。

……何故迷っているかと言うと、

やはりこんな時間に、こんな状況で呼び出されるのは胸騒ぎがするし、何だか理由が分かりそうで分からなさそうでもやもやしているからだ。

何となくスッキリ出来ない気持ちのままで、中々思い切った行動が出来ない状態でいた。

そうやって僕がもじもじしてドアの前に立ったままで居たその時。

大佐の部屋のドアが、音を立てて開いた。


「あ」


ドアが開いた先には、僕と同じように就寝用の白シャツに着替えた後の大佐が立っていた。

僕は咄嗟に話しかけることが出来ず、感嘆の声を漏らすだけの形になってしまう。

僕が口籠もっていると、大佐は僕が何かを発する前に部屋の中へと腕を引っ張って連れ込んだ。

ドアが閉まって、僕は若干身を引き寄せられる。

部屋には月の明かりが若干差し込んでいる程度で、中はもう大分暗い状態だった。

…特別に感じるような状況に、少しずつソウルが音を立て始めるのを感じる。


「Major。…明日がお前が初めて戦場に行かねばならない日だと言うのは口説い程言った筈だが、

正直言ってしまうと、生きて帰って来れるかまでは分からないだろう

……だから、今日は少し付き合って欲しいことがある

応えてくれるだろうか」


大佐は静かに僕に話しかけた。

僕は不思議とドキドキする状況に、大佐へ顔を向けられないまま俯いた状態で話を聞く。


「…ぇ、えっと、はい…。…、

…あの、それは一体どう言ったもので———」

「Major」


大佐に話を遮られると、僕は両頬を下から握られるようや形で上に向かせられる。

顔が引っ張られて衝動で目を瞑り、少し苦しさを感じて声を漏らしてしまう。


「…私を見ろ」


そう、大佐に声をかけられ、僕はそっと目を開ける。

目の前には自分の顔から近い位置に大佐の顔がそこにあつた。

…少し動けば鼻先同士が触れてしまそうなぐらいに近い。

僕は恥ずかしい気持ちを覚えて目を逸らしてしまうが、努力を見せるように頑張って目を合わせようとする。


「今からしようとしていることが、まだ分からないだろうか」


…僕は、少し今日の出来事を思い出しながら少し考えてみる。

……。


「…、今日は、やけに私から距離を詰められているのを多く感じていたことだろう

……。

…それは、

今日この時に、少しでも気持ちを楽に持ってもらえればと思ったからだ」


確かに今日距離が近く感じたことは思いついたが、これからのことと中々結び付かなくてまた目を逸らそうとしてしまう。

………、


「…あまり私の口から言わせようとするな」


…大佐、もしかして……、

僕は上目遣いで大佐を見る。

夜にわざわざ自分の部屋に僕を呼び出して、二人きりで、

それに、何だか特別感があって…、…。

……大佐、もしかして今から、

…物凄く、恥ずかしいこと、しようとしてる……??

僕は思わずそのまま目を瞑る。

…ぅ、そんな、…でも……、

…でもやっぱり、まだ全然心の準備が……っっ。


「〜っ、え、えっと……」


でもそんなこと僕の口からも直接言えなくて、結局口籠持ってしまう。

僕は目を逸らした。


「…Major、」


返事を求められるようにして、名前を呼ばれる。

…あぁ、これはもう、

僕が考えていることも、とっくにバレてる、のかな…。

……そう思うと、余計に恥ずかしく思えてきてしまう…!


「…っあ、あの……っ

ま、まだ心の準備が出来て、いなくて……少し、突然すぎて……」


自分の顔は既に真っ赤で、熱かった。

僕はそう小さく大佐に伝えながら、若干大佐の胸に手を置いて身体を離らかそうとしてしまう。

…が、大佐は、

そんな僕の腕を掴んで横に持ちながら、顔を僕の耳元まで近付けた。


「…嫌ではないんだろう?」


大佐の声が、すぐ耳元で囁かれる。

……でも、本当に、

今もこんなに強引に引き寄せられていると言うのに、

何故、何も嫌な気持ちにならないんだろう…。

むしろ、どんどんドキドキした気持ちになっていくばかりで、本気で大佐を離す気になれない。

大佐の、言っている通りで、

嫌ではなく、確かに図星だ。

僕のソウルは大佐のその言葉を聞くと大きく跳ね上がった。

大佐のもう片方の手がゆっくりと僕の腰の方へと伸びていく。


「Major、…もしも嫌ならば、はっきりとそう伝えて欲しい」


僕の腕を掴んでいた手が、やがて僕の頬の方へと移動して行き、

頬からはみ出た指が僕の耳や首筋を撫でる。

僕はそのくすぐったいような感覚に首をすくめた。

…と同時に、腰に当てられた大佐の手の指が、ゆっくりと僕の服の中へと入り込んでくる。


「ひっ、」


僕は思わず小さく声を上げ、身体を反応させてしまう。

情けない声が出てしまった、と心の中で認識する前に、

頬に置かれた手も、ゆっくりと耳や首の方へ肌を伝って移動していき、指でその表面をなぞられる。


「っ、…ん、」


我慢したくても漏れ出てしまう声。

…こ、これは……、

果たして、本当にただのくすぐったい感覚、なのか……??

何か違うようなものと認識してしまっている気がして頭の中がこんがらがってしまう。

そんな大佐の手の上から、止めたいのかそうじゃないのか曖昧な気持ちのまま自分の手を重ねるが、

段々と力が入らなくなっていき下に落ちていってしまう。

さっきからずっと目を瞑ってしまっていて大佐の顔もまともに見ることが出来ていないが、

…今、また大佐の顔が自分に近付けられたのを感じ取る。


「…いい反応だ

もっと見せろ」


僕はそれを聞いてまたソウルを跳ね上がらせ、咄嗟に大佐の方へ顔を上げた。

その瞬間、大佐が僕を押し倒したと思えば、

その直後にテレポートされ、僕は何か柔らかなものに後ろから倒れ込んだ。

咄嗟に声すら出せず、目を瞑ってしまう。

…ゆっくりと、確認するように目を開けてみる。

……、

…大佐は、僕に覆い被さるような体勢で僕を見つめ、両腕を僕の頭の横で掴んで固定していた。

…そして、僕はそんな大佐の下で仰向けになっている。

……。

…もう、これがどんな状況なのかは理解していた。

けど、頭は真っ白で、何か話そうと思っても本当に何も思いつかない程思考が乱れていた。

…大佐はまた僕に近付いて口を重ねようとするが、

僕もまた、気持ちを抑えられないまま目を瞑ってしまう。

…その後すぐにその目を開くと、

……優しく、僕に微笑みかける大佐の顔がそこにあった。

それが一瞬だけ僕の目に写されると、

やがて大佐と僕の口が重なる。

現時点でも分かる程、

優しくて、けど熱く感じるキスだった。

僕は今の状況にまた目を瞑って、頭が真っ白のまま目を開けることが出来ない。

流されるがままに口を重ねられ続けるが、

やはり、嫌と言う気持ちにはならなくて。拒否するように身体が動くこともなかった。

……すると、

何かがヌチャッと音を立て、僕の口の中へと入り込んで来る。


「ッんぅ」


大佐の舌が、僕の口の中へと入り込み、僕の舌に当てがわれる。

…と同時に、

片方の大佐の手が僕の手首から離れ、僕の身体を伝いながら脇腹の方へと移動していき、その指がゆっくりと服の中に入り込んで来る。

それに反応して僕の身体は反るように動いてしまう。

大佐の手はどんどん服の奥の方へと入り込んでいき、追い打ちをかかけるようにして更に僕の脇腹の輪郭をなぞる。

僕は喉に声をつっかえさせながら、細かく息を吸ったり吐いたりしていた。

なぞられる肌からゾクゾクとした感覚を感じ取り、身体はのけ反り、変な部位に力が入ってしまう。

それを大佐に隠し通すことなど出来るはずがなかった。

—————————————————————————

Majorの口に重ねた自分の口を離すと、絡み合った唾液が糸を引く。

一旦、Majorの脇腹に手を置いたまま顔を見つめてみる。

Majorは力が抜けたような様子で私を弱々しく見つめ返していた。

既に、若干息が上がっていて肩をゆっくりと上下させている。

…様子見を見ていても、抵抗してくるような様子は見られなかった。

……、続けて、大丈夫なのだろうか。

私は様子を伺いながら、今度はMajorの首筋へと口元を運んでいく。

Majorはまた小さく声を漏らしながら身体を反応させる。

鼻や口を、その首筋に少し擦り付けるようにして表面に滑らせる。


「んっ、っっ…、」


これだけでもこんなに反応してしまうとは…。

…感情が、揺らいでしまいそうだ。

Majorの首筋に、そのまま舌を押し当てる。


「っっ、ぅ…っ」


Majorはまた、ひっくり返ったような声を漏らした。

…続けて、その舌を首筋の表面にゆっくりと滑らせていく。

……首筋に沿って下から上へ、時折、首筋に逆らって左から横へ。

抑えられない様子で声を漏らしながら、Majorは少し震える手で自分の耳元に置かれた私の手を弱々しい力で握った。

Majorも、感情を抑えるのに必死な様子だった。

…そんなMajorが可愛らしいと感じてしまうのは、

何か、可笑しいことであったりするのだろうか。

—————————————————————————

我慢しなければ、と僕は必死に声を抑えようともがく。

こんな情けない姿を既に晒してしまっているのに、これ以上恥ずかしい一面を見せたくない…。

けど、大佐に触れられる度に、どんどん正常な精神を保てなくなり、身体も耐えることが出来なくなっていっていることは薄々と自覚していた。


「…我慢しない方がいい

疲れるだけだ」


耳元付近で、大佐が静かに、優しく僕に囁く。

また感覚に瞑ってしまっていた目を、うっすらと開く。

……ぁぁ、どう、しよう…。

これ以上、我慢するのは難しいかもしれない。

ソウルも、身体も持ちそうにない。

それでも我慢するようにしか声を漏らさず、余計に苦しくて息が詰まる。

僕の首筋に触れた大佐の舌は、そのまま首筋を伝って耳の方へと移動していく。


「っ、ぁっっ」


身体を波打たせ、やはり変な部位に力が入り、大佐の手を握っている手の力を強めた。

…そして、大佐が舌は僕の耳の輪郭をなぞり始める。


「ひゃっ、あ、」


衝動で若干首をすくめた。

唾液ののった舌先で、何度もその輪郭をなぞられる。

…輪郭をなぞっていた大佐の舌は、

僕の耳の中までゆっくりと入ってきて、ヌチャッと耳元で大きな音を立てる。


「あっ、あぅ、ぁぁあ」


勝手に、声が口から漏れ出てしまう。

自分でもこの声がどう発されているのか分からず、裏返ったような声が漏れていた。

もう、我慢しようとしてもそうすることは出来ず、その感覚に耐え切れていなかった。

大佐の手を強く強く握り、もう反対の手でベッドのシーツを握り締めた。

手の平に指が食い込む程握り締めていないと、

身体が支えられず、壊れてしまいそうな気がした。

…やがて大佐の舌が僕の耳から離れる。

ソウルが、強く早く鳴っていて止まない。

それを自覚すると、余計に身体が熱くなっていくのを感じる。

もう息が上がってしまっていて、酷く苦しい感覚を覚えた。

でも、大佐にこんなに感情や精神を乱されていると言うのに、やはり抵抗する気にはなれなかった。

……何だか、むしろ、

大佐のことが、余計に愛おしく思えてきてしまっているような…。

僕はぼんやりと大佐の顔を見つめ返す。

……あぁ、

…大佐、

もっと、僕のこと、

好きになって欲しい、な……。

もっともっと、僕に愛を注いでくれないかな…。

僕は、今自分が何を考えているのかも上手く自覚出来ないまま、

僕は、少しずつ感情が表に漏れ出てしまうのを感じながら大佐の服の袖を握った。

—————————————————————————

私の身体も、徐々に熱って熱くなっていくのを感じる。

かき始めた汗が、こめかみ辺りを伝っていく。

まだ少ししか事は進行していないと言うのに、Majorは既に疲れてしまっているような様子を見せていた。

…慣れていないMajorからしたら、

少し、段階の進行度が早過ぎただろうか。

私は自分自身も落ち着かせるようにため息をつきながら、一旦Majorに対する動きを止めた。


「っ…、た、たい、さ……っっ、」


Majorが力のないまま私の名を呼び、私の顔を見つめてくる。

まだ落ち着かない身体のまま、必死に何かを伝えようとしている様子だった。


「たい、さ……」


…しかし、そんなMajorの様子に私はソウルを酷く鳴らされ、感情が掻き乱されるような気分になりながら目を見つめ返す。

どう、したと言うのだろうか。

酷く、感情が、掻き乱される。


「たい、さ……」

「…っ」

「たい、さ…っ

す、好きって言って下、さい…っっ」

「!」


その少佐の言葉に、私は口籠もり、まともに身体を動かせなくなってしまう。

…何だ……、この感じは。

ソウルが、変になり始めている。

私は驚いたような表情のまま固まって、手すら動かせなくなってしまう。

おまけに思考までまともに働かず、何かを行動に起こすことも出来ない。

Majorのその、ねだるような言い方で、表情で見つめられ、

ただただ、ソウルの鳴る音だけが身体の中で響き渡る。


「好きって、言って、下さい…っ!」

「っ、…」


息が詰まったように私は何も発せられず、身体も動かせない。

どうすればいいかが、分からない。考えることが出来ない。

Majorのその目を見つめていると、吸い込まれるような感覚になって、思考がまともに働かせられない。

……あぁ…

…なまめか、しい……。


「ねぇ、たいさ—————」


私は無意識のうちに、Majorに口を重ねていた。

…そして、ゆっくりと離れる。

私は、それから一瞬Majorと合った目を逸らす。

深く息を吐いて自分を抑えようとしながら、口から溢す。


「…愛、してる」


Majorはそれを聞いた瞬間、さっきまで力の抜けたような表情をしていた顔の頬を驚かせたように見せ、

そして、やがて若干頬を緩め、

ゆっくりと、私に抱きついてくる。


「…ありがとう、ございます」


Majorの声が、息切れ混じりで耳元で囁かれる。

ソウルが、酷く鳴り続けている。

口からは深く息が吐かれ、正常な判断が出来ずに、自分をコントロール出来なくなっている。

……

…駄目、だ

私は理性を抑えられず、

そんなMajorをまた押し倒した。

—————————————————————————

僕はまた大佐に押し倒され、驚いて声も出せずに目を瞑ってしまう。

大佐は僕に跨り、手を左右で掴んでくる。


「…Major。訊きたい」


大佐は僕に顔を近付け、少し圧をかけるようにして問いかける。

大佐の舐めるような視線に僕は目を合わせることが出来ず、少し斜め下に顔を逸らしてしまう。


「…。誘っているのだろうか」


大佐は、そう静かに僕に訊いた。

大佐の圧に口籠もり、上手く返事が出来なくなる。

…誘った訳では、全然そんな訳ではないつもりだった。

けど、「違う」ともどこか言い切れずに、言葉に出来ない。

肯定することも、否定することも出来なかった。

少し精神が乱れている様子の大佐に、顔を逸らしたまま小さく口を開く。


「た、大佐————」


名前を呼んだ瞬間、黙らせられるようにして口を塞がられる。

そして、大佐の手は掴んでいた手から僕の胸へと移動していき、

口を重ね、舌を這いずり込ませながら、僕のシャツのボタンを外し始めた。

これからされることに察しがつき、少し行き場のない手を大佐の肩に置いた。

ソウルが、酷く鳴って、それしか頭で考えられなくなる。

…大佐は僕のシャツのボタンを外し終えると、

片手を僕の脇に近い胸に置き、そっと肋骨の中に手を入れてくる。

大佐は、僕のソウルに手を伸ばしている。

されることを自覚しつつ、初めての体験に少し身体を震わせ、大佐に舌を当てがわれながら強く強く目を瞑る。

…そして、そこにある僕のソウルに、

大佐の指が触れた。


「ひぅ、ん…っ!」


感覚に力が抜けて身体が反応し、少し目も開いてしまう。

息切れしている上に舌を当てがわれてソウルにも触れられて、

苦しくて堪らない中、妙な快感を覚えてしまう。

大佐の、僕のソウルに触れる手の指がゆっくりと表面に沿ってなぞられる。


「んぅ、う、っ」


感覚で身体が跳ねそうになるが、大佐の片方の手で押さえつけられていて自分で動くことも出来ない。

口の中で舌で遊ばれ、口元で時折水っぽい音を立てる。

ソウルの輪郭をなぞっていた指は、

やがて力を込められて食い込んでいく。


「ふぁ、ぁ、」


少し大きく声が漏れてしまい、その感覚に目を見開く。

身体をのけ反らせ、大佐の肩に置いた手からも力が抜けてしまう。

大佐の大きな手は指を僕のソウルに食い込ませながら、

包み込むようにして優しく触れるようにして握ってくる。


「うあっ、あぁあ…ッ」


ソウルから全身に感覚が感じられ、身体を縮めるようにして反応させる。

ぞくぞくとした感覚に裏返ったような声が口から漏れ、自分の情けない姿を晒し上げてしまう。

しっかりと他の肩を掴もうと思っても、思うように力が入らない。

…このままでは、どうにか、なってしまいそう……っ。

重なっていた口が離れ、また唾液が糸を引く。

口が空いて、過呼吸なぐらいに息切れた。

顔に力が入らなくて、目も半目のまま大佐の顔を見つめ返す。


「た、たい、さ……っ」


大佐も深く息切れながら、相変わらず舐めるような、嫌らしい視線で僕に目を向けていた。

…すると、大佐は僕のソウルを手に持つと、

それを自分の口元まで持ってくる。

…ぃや、待って、それは————


「んぁっ、ああぁっ!!」


大佐の舌が僕のソウルの表面をなぞる。

僕のソウルは既に、形が崩れてしまいそうなぐらいに柔らかく変化し、大量の液体が溢れ出ていた。

その液体を舐め取るようにして、大佐は僕のソウルに舌を滑らせ続ける。


「ひぁあ、あ、うぅぁっっ」


だ、ダメっ、身体が、おかしくなっちゃ…っ!!

永遠とソウルを舐められ続け、僕も喘ぎ声を止められない。

身体が小刻みに震えては波打ち、さらに変な部位に力が入ってしまいのけ反る。

あ、ぁぁ……っ、

身体、壊れ、ちゃいそぅ………

—————————————————————————

酸の味がする液体を舐め取りながら、ほぼどろどろに変形したMajorのソウルに舌をのせ、表面の輪郭に少し食い込ませるようにして滑らせていく。

一心不乱になっていて、自分に動いている自覚があるかどうかすら危うい。

完全に、狂わせられている。

止められない。永遠と動き続けるだけしていた。

私は、頭がおかしくなってしまったのか??

もうほぼ、周囲の音も聞こえていな—————


「たい、さ……っ」


私は、はっと我に帰り、Majorのソウルから離れた。

…Majorのソウルからは、ドクドクと液体が溢れ続けている。

表情を変えないまま、Majorの顔に視線を移す。

…、Majorは苦しむように涙を流し、激しく息が乱れ、表情にも力が入っていない様子で私を見つめていた。

顔が酷く赤く、体温を上昇させて汗だくな状態でいた。

Majorは、力ないまま私の名前を呼んでいる。


「…たい、さ……」


…私は、

何を、しているんだ……。

こんなに、無理をさせるようなことだなんて。Majorの身体に負担をかけてしまうようなやり方をしてしまうだなんて。

初めはこんなつもりじゃなかった、しっかりと様子を見ながら、Majorに負担をかけぬよう、互いに余裕を持った上で愛を確かめ合えるような、そんな…、

…だのに、私は、

思わずMajorの身体を抱き締めた。

…黙ってその身体を抱き抱え、耳元ではMajorの未だ治らない息遣いが聞こえていた。

……こんな、こんなやり方をして、

いい筈が、許される筈がない。

そもそも慣れていないMajorの身体が、耐えられる筈がないんだ。

明日だって大戦の日だと言うのに、まず前日の夜にわざわざ呼び出して、そもそもが無理をさせていると言うのに、

全て、私の我儘からきたものだったと言うのに、


「…た、たいさ、」

「……すまなかった」


最低、だ、

私は、調子に乗ってしまったのか?

私が欲望に、負けて押されてしまったのか??

…そっと、Majorから離れる。

何を、何をしているんだ、私は何をしているんだ

駄目だ、こんな筈じゃ、こんな、

嫌われて、しまう、下手したら嫌われて当然だ

せ、せめて、謝らなければ

しっかり、謝らなければ


「…はあ」


私の口からは、声の混じったため息しか出なかった

今は気持ちを落ち着かせようと、目を瞑って気を改まろうとする。

…ああ、本当に、何なんだ、なんなんだ

私と言う、人物は

そんなことも出来ないのか

自分の気持ちをコントロールすら出来ず、人に迷惑をかけることしか————


「大佐、

…大丈夫、ですか……?」


Majorが、俯いた私の顔をそっと上げさせて話しかけた。

…とても心配そうな表情で、私の顔を覗き込んでいる。


「…Major、すまない、私は————」


すると、私の身体はMajorに抱き寄せられ、温かく小さい身体に包み込まれた。

私は声を漏らすことすら出来ず、その状況に目を見開く。

…Major……?


「…、ありがとう、ございます」


…ありがとう、ございます……だと…?

何に対しての、お礼なんだ……??


「……Major」

「大佐、あの、…僕、

…、…とても、嬉しかったです

なので、ありがとうございます

何にそんなに追い詰められているのかは分からないですが、

自分で思い詰めないで、欲しいです…」


私は耳元でMajorの言葉を聞いながら、ずっと驚いたまま動けなかった。

…私も、いよいよ狂ってしまったのか…?

…いや、それとも……、

Majorは私から離れると、安心させるようにして私に微笑んで見せた。


「…大佐、

大好き、です」


少しぎこちなく伝えられるその言葉に、私は酷くソウルを大きく鳴らした。

…自然と、私の顔が俯かせられる。

……ああ、これは、

…して、やられている。

本当ならば、私が多少でも謝るべきだ。

その筈なのに、

何故、私がこんな気持ちにさせられなくてはいけないんだ。


「大佐。僕、まだ付き合い初めて間もないのにこんなに距離を縮めるようなことをしてくれて、本当に嬉しいんです

僕からじゃきっと、自分から動いて愛を表現するのは難しいと思うので…

…大佐の方からそうして下さって、とても安心出来たんです

許されて、いるんだなって

…なので、ありがとうございます」


何故、私が礼を伝えられなければならないんだ…。

何故、そんなに…

…。

…けど、何だか、

もう、許されているような、そんなような気がする。

…許されて、いい、のか……?

私は、そんなMajorの口に、そっと自分の口を重ねた。

…そして離れると、Majorに向かって言葉を溢す。


「…、愛している」


何故、今このタイミングでこれを伝えようとと思ったんだ。

分からない、何故…?

本当に、狂わされてしまったのか…?

私が伝えたいのは謝罪だとさっきから言っているのに、

何故……、


「…ありがとうございます

…、僕も、

僕も大好きですよ、大佐」


Majorのその笑顔を見つめていると、全てが許されるような気になってしまう。

そんな筈、あり得ないと言うのに。

…何が起こっているのか、分からない。

何故今、

幸せを感じられているんだ…。

気付けば私はMajorに微笑み返していて、

それを自覚した時には、また自分が分からなくなるばかりだった。

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