第7話 お見合い


「陽太さん!?」

「いや〜、名前と体質を聞いてまさかと思ってたけど、そのまさかだったね」


 衝撃的すぎる。でも納得だ。私の病気を受け入れてくれる人なんて、普通いるはずがない。


「結菜、お知り合いだったの?」

「はい。学校の先輩と、そのお父様です」


 母はとても驚いていた。


 そんな偶然があるのか、と話しながら私たちは料亭の中に入る。


「一応知り合いだとは言え、プログラム通りに行こうか。僕の名前は黒部陽太。仕事はペルソナックというところで働かせてもらっています」

「俺は黒部龍斗。青藍高校3年生です!」


 ペルソナックは大きなIT企業だ。


「私の名前は影井昭子です。トドタで働かせてもらっています」

「私は影井結菜です。青藍高校2年生です」



    *    *    *



 顔合わせは元々私たちが知り合いだったということもあって、スムーズに進んだ。


 母は「お知り合いがお相手さんなら、結婚生活も心配ないわね」などと言っていたが、陽太さんのふところの事しか考えていなかった。


 陽太さんは相当不味い『味』を感じているはずなのに、嫌な顔を全くしなかったのはさすがだと思った。人生経験が違いすぎるのだ。


「いや〜、親父から見合いをするって聞いた時には驚いたけど、まさか結菜が相手だったとはな」


 婚約することや母との区別をつけるためにも私の呼び方は結菜になった。


「龍斗は嫌じゃないの?」

「婚約のことか?まぁ、子供の頃から決められてきたことだしな。良いとは思わないが、結菜が相手なら嫌ではないな」


 心が読めることが怖くないのかな。


「考えていることがわかることを心配しているのなら大丈夫だぞ。親父だってそうだったからな。もう慣れてる。それに知られたところでだろ」

「……ありがと」


 龍斗は正直な人だ。



    *    *    *



龍斗視点

———————


「龍斗、結菜さんはどう?」

「良い人だぜ、親父こそ昭子さんはどうだったんだよ」


 親父は珍しく顔をしかめた。


「僕は苦手だったね。職場を言った途端、僕のお金のことしか考えてなかったよ。結菜さんが感情を無くした理由が、少し分かったかもしれないね」

「うへぇ、考えていることがわかるって、良い様な悪い様な。良くわからないな」


 聞いたことが無かったけど、俺はどんな味がするんだろう。結菜にもどんな色に見えるんだろう。


「そうだね、たくさんの人にが怖がられて、その多くの人が離れていったよ。それはデメリットかもしれないけど、今回のように人の悪意や自分の不利益になるような人がすぐ簡単にわかるのは、良いことかもね」

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