第3話 同類


 最近は夜風にあたりながら、一日の振り返りをすることが日課になっていた。


 今日は家の近くの公園に来ていた。ベンチには先客がいた。


「相席、いいですか?」

「えぇ、どうぞ」

「ありがとうございます」


 その人は男の人で、周りに色がなかった。私は共感覚の人の色は見えない。

 つまり———


「あなた、感情の色が見えるの?」

「いや、味がするのさ。君もだろ?」

「えぇ」


 同じような人は久しぶりに見た。前見たのは共感覚の集会の時だから、中学生の時か。


 この人は不思議な人だ。私と違って感情が顔に出てる。


「どうしてあなたは感情を失ってないの?」

「そうだね、僕は感情じゃなくて記憶を失ったからかな」

「記憶を?」

「あぁ。あの時はすごく怖かったな」


 そうか、失うのが感情とは決まってないんだ。


「あの時ってことはもう記憶は戻ったのね」

「そうだね」

「どうやって戻したの?」

「難しい質問だな……そうだね……家族のおかげかな」

「家族?」


 私には難しそうだ。


「そう、家族。いつも支えてくれたよ」


 私は支えてもらったことなんてあったかな。


「親父!ただいま!」

「おう、おかえり」


 話していると少し年上かな。一人の男子が走ってきた。


 黄色だ。何か嬉しいことがあったのだろう。


「この人は?」

「たまたま会ったんだよ」

「こんにちは。私は影井結菜」

「俺は黒部龍斗だ!」

「僕は黒部陽太。じゃ、また会えることがあれば」

「はい、また」


 息子さん、うちの高校と同じ制服だったな



    *    *    *



 次の日の昼休み、トイレから教室に帰っていると。


「あ!昨日の子だ!」

「あぁ、どうも」


 同じ制服だったけど、こんなに早く会うとは思わなかった。


 今日も黄色だな。デフォルトなのかな?ごく稀に色がほぼ変わらない人がいる。


 ちなみにくるみちゃんもそうだ。くるみちゃんの色は白。あの色は落ち着く。


「同じ学校だったのか」

「昨日、私も制服着てたけど気づかなかったの?」

「そうなのか?全く気づかなかったぜ」


 まぁ、暗かったし目立たなかったのかな


「お前、親父と一緒なんだろ?クラスメイトは知ってるのか?」


 最悪だ


「一人だけね。誰にも言わないで」

「なんで言うんだ?言う意味ないじゃん」


 いや、まぁそうなんだけど


「とにかく、言わないでね」

「お、おう」


 おそらくみんなに知られたら私と一緒にくるみちゃんがいじめられる。なんでそんな奴に構うのかって。


 私はいいけど、くるみちゃんはだめだ。


「少しずつ戻ってるのかな、、、感情」



    *    *    *



 数日経ったが何もなかったので、あいつは何も言わなかったのだろう。

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