第二百四十八話 集合してことにあたるというもの

【アニーとフォルド、オオグレも連れて行こう】

「え? なんでさ」

【……力が必要だからだ。予測でしかないけど、きっと必要だと思う】

「だ、大丈夫かなあ?」


 ステラがここに居るということは学校はお休みのはず。僕はフォルドとアニーを迎えに町へと向かう。


「母さんは?」

「私はあなた達を領地へ送ってからになるかしらね。空を飛べばすぐだし」

「ありがとう母さん」


 大きな籠を担いで、片腕を回しながら頼もしいことを言ってくれる。ヴァンパイアロードの力は以前見た通りだしね。

 町へ入りフォルドの家へ行くと、ちょうど玄関先で出くわした。


「うお!? う、ウルカか!? どうしたんだ……?」

「それがかくかくしかじかで――」

【ちょっと手が欲しい。頼めるかフォルド】


 僕とゼオラがフォルドに説明をすると、目を丸くして驚いていた。隣に居た親父さんが腕を組んで唸る。


「うーん……クラウディア様が居るならまあいいが……危なくないんでしょうか?」

「危ないのは危ないかもしれないわ。全力で守るつもりだけどね」

「父ちゃん、俺は行くぜ! ウルカの役に立ってくる」

「ううむ……」

「あんた、いいんじゃないかい? 友達の助けになりたいなら。クラウディア様ならお預けしても大丈夫でしょうよ」

「……そうだな。よし! 行ってこいフォルド!」

「父ちゃん……! おう!」


 フォルド一家はハイタッチをして承認してくれた。アニーの家へ行く間に荷物をまとめてくれとゼオラが言う。


「よし、次はアニーだ」

【あいつは大丈夫だろう】


 ゼオラが苦笑しながら呟き、今度は酒場へと入った。するとお手伝いをしていたアニーと目があう。


「……! ウルカ君だー!」

「うわあ!?」


 アニーは満面の笑みで僕に突撃してきた。慌てて受け止め、ズズズ……と後ろに下がらされた。強い。


「どしたのー?」

「ありゃ、ウルカ坊ちゃん。帰って来たのかい?」

「それが――」


 そしてまた、僕はかくしかをすることになる。

 アニーのお父さんは驚いていたけど、横にいたお母さんが僕とアニーを撫でながら言う。


「大丈夫だと思うわ。ウチの娘は強い子だからね。好きな人と居たいわよねえ」

「うんー! ステラちゃんとお兄ちゃんも行くのー?」

「うん。オオグレさんも迎えに行くよ」

【ボルカノとフォルテも居た方がいいか】


 ゼオラがポツリとそう言い、アニーは大喜びだった。そこでフォルドが食堂に入ってくる。


「待たせたな! 行けるぜ」

「ありがとうフォルド! ならアニーも準備をしようか」

「うんー!」


 お母さんと一緒に部屋へ戻り、ほどなくして戻ってきた。虫取り網などを装備して。


「むふー!」

「遊びにいくわけじゃないけど……まあ、いいか」

【ごめんなさいね。ウルカちゃんと結婚したら盛大にお礼をするわ】

「いえいえ、アニーをよろしくお願いいたします」

「いってきまーす!」


 アニーと手を繋ぎ再び外へ出る僕達。両手はもうステラとアニーで埋まってしまった。


【それじゃクラウディアさん、頼むよ】

「ええ」


 僕達が大きめの籠に入ると、母さんはシュワッチと空を飛んで領地を目指す。

 ブレたりすることもなく、速度もかなりあった。


「うひょー空を飛んでるぜ! クラウディアおばさん流石だぜ」

「うふふ、もっと褒めてもいいのよ? さて、ゼオラ。ひとまず子供たちは連れて来たけど、今後はどうするの?」

【そうだな――】


 母さんが神妙な顔でゼオラに尋ねると、彼女は少し間を置いてから口を開く。

 内容はシンプルで全員揃った状態でカインさんに話を聞く、というものだった。

 ひとまずキールソン侯爵のところへ行っておかないといけないな……


「ただいまー!」

【おお!? ウルカ殿に奥方様!? 旅に行っていたのでは?】

「ござるー!」

【アニーもいるでござる!?】


 領地に到着するとオオグレさんが出迎えてくれた。アニーやフォルドが居ることに驚く。


「ただいま! ちょっとトラブルがあって大変だったんだ。僕は今からキールソン侯爵のところへ転移してくる。オオグレさんはボルカノとカイン……スレイブさん、ラースさん達を集めて欲しい」

【しょ、承知したでござる! なにやら雲行きが怪しいでござるな】

「それじゃ僕は転移してバスレさん達を連れてくるよ」

「なら私は今のうちに王都へ行ってくるわ。パパとお兄ちゃん達は居た方がいい?」

【できれば話は聞いて欲しい】


 ゼオラがハッキリと返すと母さんはウインクしながらサッと空を飛んで行った。


「うわ!? 速っ!? ウルカの母ちゃんってあんなに速く飛べるのか……」

「はは、本気は僕も見たことないしなあ。……さて、それじゃ僕もみんなを連れて帰るよ」

「アニーも行くー!」

「ええ? すぐ帰るよ?」

「あ、俺も転移魔法に触れてみたい!」

「わたしも行くわ」


 遠足感覚のアニー達に困惑する。だけどゼオラはフッと笑ってから僕に言う。


【ま、今度は大丈夫だろう。もう、過去は終わった。次は未来のお前達のことを考えないとな】

「ゼオラ?」

【それじゃオオグレ、頼む】

【承知したでござる!】


 よく分からないけどゼオラはなにかを決意したらしい。オオグレさんはがしゃがしゃと骨を鳴らしてみんなを呼びに行く。

 

「……よし、僕達も行こう」

「「「おー!」」」

「わふわふ!」


 バスレさんやフォルテを迎えに行くため、僕達は転移魔法陣を通って再びキールソン侯爵のところへ――

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