第二百四十九話 カインさんの話というもの

「とう!」

「わー!」

「うおお!?」

「えい」

「わんわん!」

「ウルカ様!? ……と、皆さん!?」


 僕は家にある転移魔法陣を使ってキールソン侯爵のところへ戻って来た。

 僕が帰るのを待っていたようで、そこにはバスレさんやフォルテが居た。


「クルルル♪」

「こけー!」

「わーい、フォルテにジェニファー!」


 早速アニーが動物に寄り添い撫でまわしていた。バスレさんだけかなと思っていると、そこにはフェリオ君も居た。


「ウルカお兄ちゃんおかえり! いっぱいお友達を連れて来てくれたんだ!」

「あ、ただいまフェリオ君! いや、そういうわけでもないんだけどね……パパにお話がしたいんだけどいいかな?」

「え? あ、はい!」


 フェリオ君に頼んでキールソン侯爵を呼んできてもらうことにした。呼びつけるのはどうかと思ったけど、アニーやフォルドも居るし屋敷に入れない方がいいだろう。

 しばらく待っているとキールソン侯爵が屋敷から出てきてくれた。

 すぐにかくかくしかじかすると、顎に手を当てて考え事を始める。


「あの?」

「ん? ああ、すまないね。……かなり昔の伝承で、そのドラゴンについて聞いたことがある。私の遠い先祖が会ったことがあるという文献を見たのだ」

「お父様、そうなんですか?」

「うむ」


 フェリオ君が不思議そうに首を傾げていると、ゼオラも腕組みをしてから口を開く。


【可能性はあるが……カインに聞いてみないことには確証が得られねえな。侯爵様もついてくるか?】

「む、声だけが聴こえる……? ウルカ君、私もその話に乗ってもいいだろうか?」

「え、ええ、もちろんですけど……」

「僕も行きたい!」

「お前はお留守番だ。危ないことかもしれないし」

「えー! 女の子も居るし男の子の僕はいいと思います!」

「おお、フェリオが強気に……まあ、話だけなら?」


 話だけなら、というところで僕に視線を向けて来た。なので小さく頷いておいた。するとキールソン侯爵はフッと笑ってフェリオ君の頭を撫でて言う。


「わかった。お前も男だな。でも危なくなったら帰るんだぞ」

「……! はい! フォルテと一緒だよ!」

「クルル♪」


 領地に行けるということでフェリオ君は飛び上がって喜び、フォルテに抱き着いていた。


「わたしはアニーだよ!」

「あ、フェリオと言います! 初めましてアニーお姉さん」

「……! ウルカ君、わたしお姉さんー!」

「まあ、そうだね」

「俺はフォルド。よろしくフェリオ!」

「私はステラ」

「あ、はい! フォルドお兄さんにステラお姉さんですね。よろしくお願いします!」


 続いてフォルドとステラも自己紹介を行い、握手を交わす。


「では妻に伝えてこよう。少しだけ待っていてくれ」

「はい!」


 それからしばらくしてキールソン侯爵も準備をして戻ってくると、そのまま全員で転移魔法陣を踏んで移動する。

 バスレさんや馬車も一緒に移動してきたので大所帯だ。


「ふう……」

「こけ!」

「こけっこー」

「ああ、ただいま、みんな」

「わ、整列している!」


 ニワトリ達に出迎えられ、僕達は家の庭へと到着した。ぴしっと整列して出迎えてくれたニワトリ達にフェリオ君が驚いていた。

 そして庭から外に出ると、キールソン侯爵が感嘆の声をあげた。


「ほう、これは立派な領地だな。いちから作ったとは思えない」

「ウルカ様は天才ですからね。私は馬を置いてからいきます。先に行ってください」

「ありがとうバスレさん! それじゃ行こう」

「「「おー!」」」


 早速、女神像のある広場へと足を運ぶ。今さら急いでも仕方がないのでゆっくりと歩くことにする。


「水路もある……! あれは一体どういう風にしているのかな? 家屋も見たことが無い形だ……!?」

「下水道とかいうのもも作っているんだよな。トイレも凄いんだぜ」

「こら、侯爵様にはちゃんと敬語を使いなよフォルド」

「おっと……そうだった……」

「はっはっは、構わないよ! ウルカ君のお友達だしね!」


 キールソン侯爵はいつもの『新しいもの好き』が首をもたげていたようだ。だけど、今は話を聞く方が先だと立ち止まらずに進む。

 そして――


「わあ!? 大きなドラゴンさん!?」

「あれがフレイムドラゴンゾンビのボルカノだよ」

【む、戻って来たか!】

「かっこいいよねー!」

「はい!」


 アニーがにこっと笑いながらフェリオ君の手を繋いで跳ね回る。お姉さんと言われたのが嬉しかったようだ。


【? どうしたウルカ、我の顔を見て】

「ううん。今から話すことに関係するんだけど、コトルクスって覚えてる?」

【……! そいつは……なんとなく覚えがある……古傷が痛む感じの……】

「ボルカノはゾンビなのー、古傷は痛む?」

【なんとなくだアニーよ】


 嫌味ではなく、アニーは本当に心配して頭を下げているボルカノの顎を優しく撫でる。フェリオ君も恐る恐る触っていた。


【……ゼオラ】

【来たか、カイン】

「お、スレイブの兄ちゃん……? カインって――」


 そこへラースさんと一緒にやってきたカインさんがゼオラの前に行く。フォルドが首を傾げていたけどここは二人に話させてやろうと口を塞ぐ。


【思い出したのだな……】

【ああ。どうしてお前はスレイブなんて名乗ったんだ? あたしを知っているならそう言ってくれれば良かったのによ】

【……】


 口を尖らせるゼオラを見て押し黙るカインさん。ゼオラを真っすぐ見た後、間を置いて話し出す。


【……忘れていても良かったからさ。俺達は失敗した】

【失敗だと?】

【ああ、お前が亡くなったあとも俺達はコトルクスの分身体の行方を追った。国からの依頼でもあったしな】


 カインさんはそれから僕達が見た後のことを話しだした。

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