第二百三十八話 ひとまずお話をしようというもの
「ごちそうさまでした!」
「いやはや楽しんでもらえて良かったよ」
晩餐は特になにもなく、エビのクリーム煮やふわふわのパンなどを堪能させてもらった。
「これはどうやって……?」
「これはですね――」
バスレさんはレシピを増やそうとメイドさんに今日出た料理のことを聞いていたりする。
「いえ、ご挨拶が遅れてしまったのにこれだけのおもてなしをありがとうございます!」
「ふふ、遠方から来てくれたのにお粗末なものは出せませんもの」
「そ、そうですね」
そういえばセカーチさんが来た時はなにを出したっけ……料理はブラッディサーモンとかあった気がする。
ここまでの料理はまだまだウチじゃ出せないんだよなあ、野菜と牧場、果樹園がきちんと運営できるようになればかなり変わるけど。
そこでキールソン侯爵様のお話が続く。
「さて、話をしたいと言った件だけど、君の領地は現在どうだい? なにか手助けが欲しければ物資を送ることもできる」
「あれ? でも国王様は……」
「はは、まあ陛下はああ言っているけど、私達にはそこまできつく『手伝うな』とは言っていないんだ」
「そうなんですか?」
「ああ」
キールソン侯爵が言うには僕の両親が手伝ったりするのはバツとして厳しくなくなるので注意しているけど、他の町や領主がなにかをすることについて規制はしていないとのこと。
「ウルカ君は罰を受けている身だけど、あそこはあくまで領地だ。国が領地を大きくしたいというのは当然だろう?」
「ああ、そう言われたら規制をする必要はないですね」
「だから一番近い私のところに来たらこのことを話そうと思っていたんだけど、まったく来なくてさ」
「すみません。色々あったもので……」
だからいよいよとなったのでワトスォンさんを派遣してくれたのだとか。忘れていたとは言わないけど、野球や職人さんを連れてきたりと説明をする。
「まあ最初は大変だからなあ。しかし本当に色々あったみたいだ。そういえばワトスォンがとてもいい風呂があったと言っていたな。ヤキュウと言うのも興味があるぞ」
「僕、ウルカお兄ちゃんのところに一回行ってみたいよ父上ー」
「あらあら、すっかりウルカさんに懐いてしまって。その内に行きたいですわね」
「そうだな。それで足りないものなどはないか」
物資は今のところなんとかなるんだけど、足りないものはお店など職人さん達かなと相談する。
「人材か、確かに鍛冶師とパン職人だけでは町としての機能はしていないな」
「まあ、今は住居の作成に追われているのと騎士さん達がたくさんいるので商店というよりは開拓の方が先です。でも必要なものをすぐ手配していただけるのは助かります」
「うむ」
「そこで相談なのですが、ここに転移魔法を仕込みたいと思っています。そうすればここまでの距離を短縮することが――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? て、転移魔法だって? ラース殿が使えるというアレかい!? 君も?」
僕の構想を口にするとキールソン侯爵様が慌てて割って入った。いきなりはまずかっただろうか? でもこれ以外にいい方が無いんだよね。
「ええ、転移魔法を使えるようになったんです。で、例えば転移する魔方式をとある部屋を作って魔力を通すと飛べるようなモノを考えたんです」
「……あの馬車の何千倍もヤバイのが出てきましたわね……」
「さすがウルカ君だ。危険性などはないのかい?」
冷や汗をかきながら微笑むキールソン侯爵は驚きから好奇心へと切り替わったらしく、身を乗り出して尋ねて来た。
「はい。念のため自分で実験をしています。場所さえ確保できればここと領地を往復するのが楽になります」
「いいよ!」
「やはり無理……いいの!?」
キールソン侯爵様はあっさりと承諾した。僕は願ったりだけど、早すぎる。
「あの、領地内の貴族達で話し合いとかは……」
「ひとまず転移魔法は危険であることを知っているからね。広まりすぎて悪用されることも考慮して私のところで一度止めておこうと思う。運用がしっかりできると分かれば広めてもいいかもしれない」
「あ、そうですね」
適当に返事をしたのかと思ったけどちゃんと考えているようだ。それならと僕は頷く。
「次は場所だな。町の中はアレだし、やはりウチの敷地内かな?」
「なら屋敷の横に建物を作りましょうか」
「馬小屋の横とかでもいいですよ」
「いや、ある程度目につくところに置いておきたい。賊が来ないとは限らないからな」
ということでこの話により、僕の要望とキールソン侯爵様の懸念が解消されることになった。
職人さんはまだいいけど、物資は貰っておこうか。
「では明日の早朝から転移神殿を作るので、その間は滞在していてくれ」
「神殿は必要ありませんよ!?」
ノリノリだなあ侯爵様……
そんな感じで転移魔法を領地間に置く試験をすることになった。
まあ、失敗はしないのは確定していて、物資だけ送るなら危険はかなり少ないからね。
「お話は終わり? フォルテたちにご飯を上げに行こうよ!」
「いいね。そろそろ行こうか!」
「うん!」
そんな感じで一日が終わった。
フォルテたちはきちんと大人しく待っていたのがとても可愛かった。
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