第百九十八話 潜入! 学校の中へというもの
学校の終了を告げる鐘が鳴り響き、しばらく待っていると校舎から子供たちが出てきた。そろそろ門の前で待つかとアニーと共に移動する。
「兄ちゃんとステラちゃん遅いねー」
「だなあ」
基本的に二人が宿題やテストで居残りということはないはずだ。その辺はゼオラにめちゃくちゃ指導されたからね……
遊びまわりそうなアニーが勉強を続けられる理由はそこにあったりもする。
まあ、それはともかく待ってみるかと端に寄っていると、前に見た顔がこちらに歩いてくるのが見えた。
「あ、ウルカ様だ!」
「おや、君は確かアコさん」
「そーそー! 覚えていてくれたのですね!」
「まあ、一昨日のことだし」
ははあ……と妙におおげさな形で頭を下げられ僕は苦笑する。そこで丁度いいかとアコさんに尋ねてみることにする。
「ステラとフォルドはまだ教室?」
「おお、そういえばまだ残っていましたよ。先生から用事を頼まれていたみたい」
「そうなんだ。なら時間がかかるかな? アニーの家に行こうか」
僕がそう言うと、アコさんは指をパチンと鳴らしてからウインクをする。
「でしたら中に入りますか? 一緒に居た方がおもしろ……すぐ終わるかもしれませんし」
「今なにか言おうとしなかった?」
「なにをですか?」
したたかな子のような気がする。とりあえずそれはおいておき、お手伝いなら一緒にやってもいいかな。暇だし。
「でも、学校に部外者が入って大丈夫なのかい?」
「大丈夫じゃないですか? ウルカ様だし」
「適当ー」
アニーが僕の代弁をしてくれた。
まあ、僕もアニーも同じ子供だしそこまでは怒られないかな?
「それじゃ行こう。怒られたらアコさんが入っていいって言ったと言えばいいか」
「え!?」
「いくのー!」
「ちょ、まっ……!」
という感じで僕とアニーが校舎へ向かうとアコさんが慌ててついてきた。
祭りの時に兄ちゃんズと一緒に入ったことがあるので、学生と同じならきっと大丈夫だろう。アコさんが居なくてもステラとフォルドが友達だしね。
「で、では、私が案内を――」
「兄ちゃんのお部屋はこっちー」
「そういえば窓から見えたとか言ってたっけ。アコさん、多分ついてこなくても大丈夫だよ」
「ええー……いえ、こうなった以上最後までお供しますよ……!」
なんの使命感か。
特に困ることも無いし、制服の子がいるのは助かる。アニーに引っ張られて教室へ到着すると――
「いたー!」
「え?」
「お?」
教室を開けるとそこにはステラとフォルド、それとコウ君にファナちゃんが居た。他にも何人か残っていて、一斉にこちらを向いた。
「な、なんだ……!? あ、お前はウルカ……痛い!?」
「ウルカ様でしょう! コウ君は泣かされたのに強がるの?」
「アコ、てめえ……!」
【速いな、あの子】
悪態をつきかけたコウ君に、すかさずアコさんがツッコミをいれた。ゼオラが別のところで感心する。
というかコウ君が少し不憫な気がしてきたなあ。それはそれとして僕はみんなに挨拶をする。
「こんにちは、皆さん!」
「こんにちはなのー」
そこでフォルドが僕達に声をかけてきた。
「そういやアニーを連れて行ったんだっけ。帰って来たんだな」
「獣医さんも連れてこないといけなかったから一日だけの予定だったしね」
「そう。でもよく残っているのがわかったわね」
「外で待ってたんだけど、アコさんから先生に用事を頼まれたからって聞いてさ」
ステラの疑問に答えると、フォルドがため息を吐いた後に僕に言う。
「そうなんだよ。先生に図書室の片づけを手伝ってくれって言われてな。ステラにも手伝ってもらおうと思って」
「ありそうな話だけど、どうしてフォルドなんだい?」
「ウチの担任が図書委員の顧問だから。で、特に部活動をしていない俺に声がかかったというわけ」
「なるほどね」
「大変なのー」
よくあるタイプの頼み事のようだ。時間がかかりそうだなと思っていると、フォルドが手を合わせて僕に言う。
「悪い、ウルカ! 結構大変そうなんでお前も手伝ってくれないか? アニーも」
「うん。いいよ。どうせ暇だし、二人と遊ぶつもりだったからさ」
「ウルカ君、大丈夫ー?」
「うんうん」
さっきのことで心配そうなアニーの頭を撫でてから続ける僕。アコさんではないけど、先生には言っておいた方がいいと思う。
「許可は貰っておいた方がいいかも? 部外者だし」
「そうだな。図書館に先生が居るから頼んでみるか。ステラはクラス違うだけだから大丈夫だと思うけど。というわけでコウ、お前と遊んでいる暇はねえ」
「べ、別に遊んでくれなんて言ってないだろ!?」
「そういえばフォルドは別のクラスだっけ」
「そう。ファナはお家の手伝いで帰ったから仕方なく私が手伝う。でもウルカ君がいるなら嬉しい」
ステラはそう言ってニヤリと笑う。相変わらず口元だけだ。
「そんじゃ時間も勿体ないし、行こうぜ」
「なら私は帰るわね。ほら、コウ行くわよ」
「い、いや、俺もステラ……ぎゃぁぁぁ!?」
「コウは私が押さえておくから、みんないってらっしゃい~」
コウ君が僕達についてこようとしたが、アコさんがすかさずロメロスペシャル……いわゆる吊り天井をかけていた。
うん、パンツがまる見えだけどいいのだろうか? 10歳ならそんなものかもしれないけど。
そんな感じで僕達は図書館へと足を運ぶことになった。このメンバーでなにかするのも久しぶりだ。
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