第百七十三話 今後に期待というもの
「いい野菜が多いですね」
「ありがとうよ。ナスビをおまけしておくわね」
「やった」
野菜を売る店でトマトやトウモロコシ、ピーマンといったいつもの野菜を確保してバスレさんはさらにナスビをゲットしていた。
近所の商店街みたいなノリでおばさんがおまけしてくれたのはありがたい。
後は大根や人参といった根野菜があったのでそれもゲット。
そろそろ寒くなるし、コンニャクとかあれば『アレ』できるんだけどなあ。
「次は服を見ましょう♪」
「着る機会はあまりないけどな」
「ラースはすぐそういうことを言うわねぇ」
とまあ、淡泊に返すラースさんにベルナさんが口を尖らせる。確かに畑仕事や狩り、採集などが多いためきれいな服を着る必要はないんだよね。
見るだけでも楽しいからいいんだとベルナさんとバスレさんは同時にラースさんへ抗議していた。
「ウルカ様が着るには平民すぎますか」
「僕も仕事が多いからそういうのでいいんだけどね。結構汚れるから着替えが欲しいよ」
「ではシャツとズボンを買っておきましょうか」
「うんうん」
バスレさんはなにも必要ないからと言っていたけどベルナさんが必要よねと下着を買った。僕に見せなくていいのに。後は女性騎士さんの分も買っていたのは流石だと思うよ。
結局それ以外はやっぱり着ないしと断念。続いて雑貨屋に移動するため外へ出る。
「わふ」
「クルルル」
「こいつら餌食べないなー」
「あ、勝手に餌をあげないでね。二頭とも他の人からもらわないように言っているから」
「へえー! 賢いんだな」
「魔物だからね。頭がいいからもし野生の魔物に出会ったら気を付けるんだ」
珍しいから店の外でお座りをするシルヴァとフォルテに構う子供や大人がいる。だけど餌はよほどのことがない限り口にしないよう言い聞かせているので絶対に食べないのだ。
「よしよし、大人しいのは偉いぞ」
「うおふ♪」
「クルルル♪」
「ふふ、頼もしいです」
「アニー達に早くフォルテを見せてあげたいよね」
「クルル?」
「僕のお嫁さん候補だよ。いつか会えると思うけど、もう少し待って」
「わふ」
僕の言葉にフォルテが頷き、シルヴァがどういう感じか伝えているようだ。
そのまま連れだって雑貨屋へ行き、こちらでは軍手……農作業用手袋や鍬といったものを購入。
なんだかんだで自分のことより騎士さん達のことを考えているラースさんとベルナさんだった。僕もオルさん達の為に軍手を買ったりした。
「じゃがいもも欲しかったかも」
「種を買ってみたので育ててもらいましょう」
「そうだね! それじゃそろそろお昼を食べようかな」
そのままレストランに行く……ことも考えたけど、シルヴァ達もいるしテイクアウトできるものを買って広場で食べることにした。
「ピクニックみたいですねえ」
「たまにはいいかと。あのパンのお店の味を見ておくはお仕事にもなりますし」
「ほら、シルヴァ、お肉だよ。フォルテは桃をどうぞ」
「わん! わふーん♪」
「クルルルルル♪」
二頭は嬉しそうに僕の手から食べ物を受け取り喉を鳴らす。
肉は焼いたものの方が好みなので適当に火を通している。桃も皮ごといけるようで、特になにかすることもなく食事が進む。
「それにしてもスピカさんも来るとは思わなかったなあ」
「全員が望んでいたからな。村人……いずれ領地の町になった時に結婚して子供でも作ってくれればテストケースになるしいいことばかりだからな」
「他の騎士さんとくっついたりして」
「それは可能性がないわけじゃないが、その時はその時だろう? グラフがちゃんと掴まえておくかどうかだ」
他人の恋愛事情は気にしても仕方が無い。必要なのは外部からの移住者が増えるかどうかだとラースさんがパンを口にいれた。
それはアニーやステラに関しても言ってあることだ。それはそれだと思うけど、僕は一緒に居たらなるべくちゃんとアニー達と結婚するように立ち回ったはずだ。
難しいものである。
「でも少し人が増えたのは良かったよね。パンはどうやって作っているのかも聞けたし現地に行く人にも話を聞きながらやってみる楽しみもできたし」
「あー、それはグラフにも手伝わせてやった方がいい。さっきも言ったけど、ウルカ君が居なくなった時をなんとかできるようにしておかないといけないからな」
未来のことを考えると確かにそうか。その内、弟子とか増えてくると面白そうだ。
「まあ、まずは町の大きさを決めてからだな」
「ボルカノも頑張っているしね。僕の知らないところでも作業をしているみたいだからさ」
「あ、ああ、そうだな……」
「?」
なんか歯切れが悪いなラースさん?
そんなことを考えているとお昼を食べ終わったので一旦、グラフさん達を迎えに行こうということになった。
そして――
「あ、来たな! 準備できているぜ!」
「わ、私も大丈夫」
「おや!?」
「わふ!?」
グラフさんの工房に来たんだけど、荷物の量が驚くほど多かった!?
工具なんかが多いから仕方ないんだけど、問題はスピカさんだった。
家財道具一式っぽいものがあり、タンスとかテーブルが積まれていたのだ。
「う、うーん、いける? ラースさん」
「分ければいけるけど……」
苦い顔で笑うラースさん。そこへスピカさんのお父さんが耳元でささやく。
「……すまない。嫁入り道具みたいなもんでな。さっき買ってきたばかりなんだ、なんとか頼む」
「新品!?」
フィーバーしちゃったらしい。本人たちはそのつもりはないが外堀から埋めていくつもりか。
するとラースさんは『大丈夫ですよ』と言って受け入れた。
さて、そんなことをしていると他の移住者もやってきた。一旦帰る時間が来たようだ。
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