第百二十八話 近隣の町へというもの
「あそこがロッキンの町だ。辺境に近いからなんにもないが、ゆっくりしていってくれ」
「久しぶりの町ねぇ。バスレさん、お風呂に入れますよぅ♪」
「だと嬉しいですね」
ということでボイドさんの案内を受けて僕達一行はロッキンの町へ。
僕の居た町とは違って外壁で覆われているため、外敵の侵入には強そうだ。
程なくして入口へ到着すると、ボイドさんの馬車が先に出ていく。恐らく僕達のことを説明してくれるのだろう。
【我は通れんぞ?】
「どうしようかなあ。オオグレさんも大概な容姿をしているし」
【軽い風評被害!? まあ、馬車を貸してもらえれば拙者たちは外でも構わんでござるが】
「いざとなったらお願いするよ」
【問題ない。この体では入るのはどう見ても無理だからな】
外壁を眺めてそう口にするボルカノ。そういえばと思い、ちょっと聞いてみることにした。
「出る前にアニーが『なんとかするって言ったのに』ってボルカノに聞いていたけど、あれはなんだったの?」
【うむ、背中の羽を見て貰えれば分かると思うが、我は空を飛べる個体でな。本来ならこうやって歩くまでもなくウルカ達を背中に乗せるなりして目的地まで辿り着けるのだ】
……だけど、魔力の結晶である魔石が体内から消えたのでフレイムドラゴンなのに火も吐けないし、空も飛べないのだとか。
この巨体を翼だけで飛ぶことはできないようで、魔力を使って浮き、翼で制御するみたいな感じらしい。
「なるほど。だからアニーは往復すれば僕のところへ簡単に来れるかもって思ったのか」
【この町も簡単に越えられるのだがな】
かつての力が無いことに少しだけ寂しそうなボルカノ。長い年月をかければ魔石はまた体内に作られるみたいなのでフレイムドラゴンゾンビとして力を取り戻せるとのこと。
【とはいえ、拙者もボルカノ殿もゼオラ殿もウルカ殿に復活させてもらっているので、お主が死んだらまた眠りにつくでござろう】
【だな。ま、ヴァンパイアハーフなら長生きするだろ】
「まだ十歳なんだからあまり寂しいことを言わないでよ」
アンデッド組が悲愴感なく笑うけど、居なくなると思ってしまうのはやはり寂しい。できるだけ長生きするつもりだけどさ。
そんな僕達の会話を聞いていた(ゼオラのは聞こえていない)ラースさんが話しかけてくる。
「最初はびっくりしたけど、オオグレさんもボルカノもいいやつだよな。ボルカノに関しては俺がなんとかできるかもしれない」
「どういうこと?」
「ま、それは後のお楽しみってことで」
いたずらっぽく笑いながら僕の頭を撫でてくる。なにか考えがあるみたいなのでお任せしてみよう。
「みなさん! 許可が下りましたので町へどうぞ! ドラゴン殿は申し訳ないが外で待ってもらえるだろうか」
【承知した】
「それじゃ馬車を置いて行くからオオグレさんもよろしく」
「こけー!」
「うおふ」
「にゃーん」
ペット達も『ごめんね』といった感じでオオグレさんとボルカノに挨拶をしていた。とりあえずジェニファーとタイガを抱えてシルヴァにまたがってボルドさんの後をついていくことに。
「おお……シルバーウルフか? いや、フォレストウルフみたいだな。ずいぶん立派だ」
「わふん」
「こけー」
「こいつは……! ただのニワトリだな……」
「こけ!?」
僕の頭に乗ったジェニファーが項垂れるのがわかった。対抗しなくてもいいのになあ。タイガはマイペースなのでシルヴァの頭の上で伸びている。
「わ、広いね」
「そうですね。私達の町よりも少し田舎なのもあるのでしょう。恐らく最初に外壁を広くとったのでしょうね」
「将来、町が大きくなるのを見越したんでしょうねぇ」
僕の感嘆とあげた声にバスレさんとベルナさんが説明してくれた。なるほど、辺境を開拓する時の参考になりそうだ。
見晴らしが良ければ両親の居る町みたいに外壁無しでもいいと思う。その方が拡張性が高いからだ。
「こちらへお願いします。まずは町長とお話をしていただきたい」
「わかりました」
前を進むボルドさんが馬車を広場に置いて案内を続けてくれる。周辺を確認しながらついていく。
「あっちは食堂かな? ギルドもどこかにあるっぽいけど」
「ん? ……いい広場があるな。ボルドさん、少し待ってもらえますか」
「え? はい、なにかありましたか?」
「ちょっと……」
「ほう……恐ら大丈夫ですが……」
とても広い場所を見つけたラースさんがボルドさんへ耳打ちをしていた。なにをするつもりなんだろうと思っていると、何も言わずに来た道を戻って行く。
「どうしたんだろう?」
「うふふ、まあまあ。待ちましょうねぇ」
ベルナさんには分かっているみたいで微笑みながらそんなことを言う。そしてしばらく待っていると――
【む?】
【おや、ここは?】
「あ!?」
しばらく待っていると、急に広場へ大きな物体が現れた!? そしてよく見るとそれはボルカノで、近くにはオオグレさんと馬車もあった。
「お待たせ。大きいからちょっと神経を使ったよ」
「ラースさん! これってどういう……? あ、もしかして!」
「そう、転移魔法だよ。一度行った場所にしか行けないんだけど、これなら大きくても運べるんだ」
「凄いなあ……。めちゃくちゃ便利だ。あれ、ということは僕の町にも……」
「もちろん戻れるよ。アニーちゃんに会おうと思えば会える。けど、距離があるから向こうで一晩やすまないとだけど」
まさか誰かを連れて移動できるとは思わなかった。これ、僕も覚えられないかな?
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