第七十話 事後処理であるというようなもの
――お祭りから数日が経過した。
翌日にと思っていたけど集計が間に合わないと少し待つことになったからだ。
で、取り急ぎ集会場での反省会と結果についての話し合いに臨んだところ、興行収入はかなり良かったらしい。
「ウルカ様のおかげでかなり稼げたのではないでしょうか? 普段お店をやらない者に屋台を任せて賃金を払うというのも町人と町両方が得をしております」
ボーナスみたいなものだけど労働の対価だからそこまで手放しで喜ぶほどではないと思うんだけどね。
それでも接客が好きな人なんかは他の町や村から来たお客さんと情報交換するのが楽しかったらしい。
「屋台に卸す材料の仕入れが大量になり単価が安くなったのも強いですよ。さすがはロドリオ様だと思いました」
「昔から交渉ごとは慣れているからね。ウルカの案を聞いた時、すでに策は練っていた」
「父さんかっこいいや」
「おお、そうだろうそうだろう! パパはお前達のために頑張ったんだよ!」
父さんが僕を抱きしめて声高らかに言う。真面目に経費とのバランスをとっていたみたいなので商人としての質は高いようだ。
……ちなみにあまり数字について話すと子供っぽくないので『なんか数字が大きい』くらいの感想に留めている。
「将来が楽しみですな。すでに算術もかなり出来るようですし」
「ああ。ウチの息子たちは優秀で助かる長男と次男は好きなことをするかもしれないし、ウルカに店を任せることになるような気がする」
「まだわからないけどね」
という終始和やかな雰囲気で話は進み、総合的に大成功を収めたということで問題ないようだ。
しかしもちろん問題点もあったわけで――
「やはり酔っ払いの乱闘が問題だったな。酒を提供する場合は店の中かステージのあった広場に限った方がいいかもしれん」
「料理の提供をした後、器が戻って来ていないことも多かった。コップとか皿な。十出して七くらい戻って来てはいるが、ゴミみたいになってるとちょっと困るんじゃないか?」
「住宅地で騒いでいるのも居たらしい。お祭りブースと分ける必要はありそうだ」
「迷子はどうする? 警護団とギルドに預かってもらったりしたが一か所にした方がいいと思うぜ」
――といった意見が見受けられた。
次回開催時には集めた情報を議事録にして集会場に保管となった。これにて第一回ウルカティヌス祭の幕を閉じることに。
「あ、その前に一ついいですか? 盗人とか誘拐みたいな犯罪行為は大丈夫でした?」
「その辺は俺達警護団と」
「冒険者が目を光らせていたから問題なし! とは言ってもそもそもそんなに犯罪をするやつは居ないんだけどな。ゲーミングチェアみたいに珍しいものならいざ知らずってな」
動員している人数もそうだけど、リスクが高い行動をする理由があまり無いってことなんだそう。貴族も居たけど当然、護衛がついているので誘拐なんてとても無理だとか。
まあ、きちんとした町だったら当然か。小説とかだと随分悪い奴がピックアップされるから僕もそのつもりになっていたようである。
その報告で今度こそ集会は終了。
次は寒くなってからかな、などと言い合いながら町の人たちは帰って行った。
「突貫仕事の割には上手くいきましたね」
「そうだなクライト。冒険者も臨時収入になったなら良かったが」
「そこは商店の人間達が寄付してくれた護衛費用を分散したから問題なく。支払った分の利益にもなっていたようですし」
「うむ。村の人たちも楽しそうだった、彼等の作物も貴重だ。息抜きにはいいのかもしれん」
クライトさんと一緒に集会場を後にする僕達。
村はここから徒歩で10分くらいとそれほど遠くないらしい。町に住めばいいのにと思うけど、大規模な畑を町に作るのは難しいからだそうだ。
だから専用に村を別に設けている。農場も町にあるけど、村はもっと大きいんだって。ちょっと見に行ってみたい。
「では、また。ステラちゃんが遊びに行くと思うからよろしくねウルカ様」
「もちろん!」
「では私も店へ戻るか。バスレ、後は頼むぞ」
「はい。旦那様、命に代えてもウルカ様をお守りします」
「そんな大げさな。ハリヤーも居るんだし町中はもう安全だと思うけど」
僕の言葉にハリヤーが『そうですよ』と言った感じで鳴き、そのままバスレさんと一緒に乗って屋敷へと戻った。
「もう少し暑い日が続きそうだねえ」
「ええ。でも明日で灼華の月も終わりです。すぐに寒くなりますよ」
「秘密基地の暖房を考えないといけないかな」
「お屋敷でゆっくりされてください」
まああれは趣味みたいなものだからどっちでもいいんだけどね。折角作ったので活用はしたいんだけど。
「あ、灼華の月が終わりということは明後日から兄ちゃん達も学校か。今日と明日は二人と遊ぼうかな」
「良い提案だと思います。動物達のお散歩もしないといけませんし」
バスレさんが微笑み、僕もそうだねと笑い返す。
ここ最近は国王様が来たり、お祭りがあったり、ゼオラが目撃されるなど忙しいのが続いたからしばらくはゆっくりしたいね?
「ゼオラに魔法をもっと教えてもらおうかな。ねえ、ゼオラ」
【んあ? 攻撃魔法ならいつでもいいぞー】
「ああ、やっぱり居るんですね」
そして程なくして屋敷へ到着。
「わわん!」
「こけー」
「にゃ」
早速動物達が僕に集まって来て撫でるのを要求してくる。ああ、次のお祭りは動物達の催し物もいいかもしれない。
そんなことを考えながら僕は兄ちゃんを呼びに屋敷へと入るのだった。
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