第138話 薔薇の騎士

 1人で使うに、広い部屋で1人、男は1人席に座っていた。


 手元に、あったティーを飲み男はくつろいでいた、長い髪を三つ編みのようにし、整った顔立ちに長い手足、身体にフィットするスーツにまるでモデルや芸能人のようなルックスを持っている。


 彼は、ローズと呼ばれる格闘家である。



 長い手足から繰り出される打撃、そして、その長所でもある手足は関節技においても、有利に働く。



 くつろぎを魅せるその時間は、部屋のノックで終わりを告げた。


 「ローズ様、マダム様がお呼びです」


 ローズは笑みを浮かべ、ティーを飲み干さずにテーブルに戻す。


 「こんな時間に嬉しいサプライズですね」


 椅子から立ち上がり、颯爽と歩く姿もまた、モデルのような彼は、部屋を出てマダムの部屋へ向かう。



 陸は、質問の答えを待ちながら、汗が吹き出しはのがわかった。


 一番可能性が高い羅刹の正体は自分の父、もしそれが現実となるなら、父と生命を賭けた戦いをする必要があるからだ。


 マダムは表情を変えない。


 陸は再度答えを要求する。


 「さぁ、どうなんだ、羅刹はいるのか」


 マダムは、間を取って答えを伝える。


 「その質問の答えは、イエスでありノーよ」


 「どういう意味だ」


 その瞬間、扉が開いた。


 扉に全員の視線が移る。


 そこに立っていたのはモデルのような男、ローズであった。


 「マダム様、お呼びでしょうか」


 「ローズごめんなさいね、時間外に今は、貴方の大切な時間だったでしょう」


 ローズは大げさに片膝をつき、忠誠を誓うように答える。

 「何をおっしゃいます、マダム様の為なら、たとえ如何なる時間出会っても直ぐにお側へ、それでご要件とは」


 ローズの視線は、麗奈達へ向けられた。

 もてなしている事から、敵ではないと思っていたが、不穏分子である事には変わらない、ローズは怪訝な表情を見せた。


 マダムは一度、ローズに待つように伝え陸の話の相手をする。

 「ごめんなさいね、羅刹は以前は私の所にいた、でも今はココにはいないの」


 「いたとはどういう事だ、じゃあ、今は何処にいる、勿体ぶらずにわかっている事を」


 興奮する陸を言葉の途中で麗奈は制止する。


 感情的になりすぎている事もあるが、理由はもう一つあった、それは、ローズと呼ばれた男の殺気であった。


 ローズは、今に飛びかからんといった様子で、陸を睨みつける。

 彼を抑えているのは、この場を荒らす事は主であるマダムの顔に泥を塗る行為と考えからだ。


 「貴様、何者かわからんが、殺されたくなければ、口の聞き方に気をつけろ」

 

 麗奈は、陸の変わりに謝罪する。


 「感情的になってしまった事は謝るわ、こっちも事情があっての事で理解してくれると助かる」


 ローズは納得はしないが、矛を収める。


 「羅刹と名乗った彼は、半年前に、フラリと裏闘技場に現れたの、戦いと名を聞いてピンと来た、日本には『修羅』と呼ばれる使い手がいて、それに相対する『羅刹』がいる事、彼は何名かの戦いの後、『ここでやる事は終わった、ここに用はなくなった』と姿を消したの」



 「次の対戦相手は、私だったのだが、恐れをなして逃げだのだろう、とんだ腰抜けだ」


 陸の変わりに麗奈が何処へ行ったのか訊ね、マダムがそれに答えようとした時、ローズがそれを、マダムに再度跪き言葉を止める。


 「失礼を承知で、貴方様がここまで、この無礼な者達に教えて上げる理由は私には分かりません、貴方様と話をする資格を持っているとも感じません」



 ローズは陸達を睨みつけ、立ち上がる。


 「お許し頂けるならば、この私に彼等の『格』を試させて頂く機会をお与え下さい」



 麗奈の参ったなと感じた、羅刹の実力を知ってなお、戦いを決めさせた男であり、自身の腹心、かなりの実力者である事は、間違いないからだ。


 しかし、ここから先情報を知るなら、避けて通れない、覚悟を決めるしかなかった。


 

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