第137話 対話

 ベトナム・ホーチミン


 

 麗奈一行は、車ではなく、ヘリコプターでホーチミンのホテルに降りたち、そこから、ホテルの一室にあるVIPルームに案内された。


 そして、そこからホテル内にある中華料理店に案内され、席に着く。

 陸、大谷、真田は、初めて見る豪華な装飾物の数々に思わず圧倒される。


 麗奈だけは、物怖じせず、席に座り食器類を観察していた。

 (結構趣味いいじゃん)


 そんな中、大きな扉が開き、一人の女性が入ってくる、初めて見る顔だが、誰かはオーラでわかった。


 マダムだ。


 白髪の混じった銀髪のボブヘアー、フォーマルな出で立ちに何処かの政治家か何かに見えた。


 ゆっくり歩き、軽く会釈をし、麗奈達の正面の椅子に座る。

 

 「お待たせしてしまったかしら、せっかくだから食事をしながら話しましょう」


 そう言って、ウェイターに合図を送り、ほぼ同時に目の前には料理が並べられる。


 「毒でも入ってるんじゃないか」


 大谷は、恐る恐る料理を突く、真田は、目の前回転テーブルを回し、目当ての料理を自分の皿に移す。

 「殺すなら、ヘリから落とすさ」


 陸もまた、料理に手を伸ばす。

 「俺は毒に耐性がある、致死量の毒を入れられない限り問題ない」


 マダムは、陸と真田に笑顔を見せる強気な男は嫌いじゃない、そんな様子だ。


 麗奈は、真っ直ぐマダムを見つめる。

 「私の事は知ってると思うけど、自己紹介させてもらうね、私の名は天上院麗奈、天上院我狼の娘よ、何の用で来たかは、私からじゃなく彼から聞いて」


 陸もまた、マダムの瞳をしっかり見て質問する。


 「俺は修羅陸だ、俺の叔父に当たる修羅志天がこのベトナムで殺されたと聞き、羅刹が絡んでると思いこの地に来た、『裏格闘』、羅刹がいるなら引き合わせてもらいたい」


 羅刹の説明はしない、この女ならある程度の事は知っていると判断し、無駄な会話を省く。


 「貴女なら知っているはずだ」


 言い逃れはさせない陸は語気を強めた。


 「わかったわ、でも、初めに確認させて貴方達は『私の父チーホイ』を知っているのか、どうか」


 

 真田と大谷は理解していなかったが、陸と麗奈は理解していた。


 その答えは、より詳しく知る麗奈が答えた。


 「アジアの裏社会を牛耳るマフィア、チーホイ、ジーフイって言われてる人よね、その意味は、『賢い』だったかしら、そして、その下にいる幹部、『チーホイの子供達』」


 マダムは口元を緩める。

 「知っているなら話は早い、私は、その子供達の1人、そして、ここホーチミンで開催している格闘場を管理しているの」

 


 「そこに、『羅刹』がいるという事か」


 マダムは、陸の問に沈黙で答える。


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