第134話 強さと弱さ
明らかな隙、実力差、大谷はこの場には相応しくない、それは本人が一番感じていた。
ボクシングを始めたのは、弱いと舐められるそれだけであり、『強く』なるつもりはない『弱く』なければそれで良かった。
大谷自身、ボクシングに励んだ事もあったが自分には才能もそれを補おうという気概が無いことも知っていた。
(俺より強いやつなんてごまんといる事なんてしってるんだよ)
手に砂を握りしめる。
(やらんよりはマシかな)
明らかな隙を見逃し、ジャガーは立ったタイミングで距離を詰める。
大谷は、目眩ましの砂をジャガーに目掛けて振りまく。
一瞬の隙でも、出来ればいいそう思ったが、それは甘かった。
ジャガーは、素早く体を捻りながら重心を下げ、回避そして、回転の力で左のフックをコメカミに打ちつける。
大谷はふらつきながらも、自身が目指した場所へ向う。
地面に落ちている棒を拾う、先程の暴漢達が使用していた物の一つだ。
無意味だ、その場にいるほとんどがそう思った。
大谷は、牽制しながら、後ずさりする。
(まずは、これでオッケーだ、後は『あれ』があるはずの所まで)
スーツの男が囃し立てる。
「まさか、武器を手にとって有利と思ってないですよね、対武器は想定してますし、素人の武器なんて意味ないですよ」
麗奈も呆れ顔で場を見る。
「何考えてんだあれは、自分の武器は、身につけた技術だろ、あんな棒きれで意味はないぞ」
真田は、逆に少し笑みを浮かべている。
「あいつのボクシング技術なんて、素人に毛の生えたレベル、あいつの考えは今はわからないが、あいつの強さは弱さから来ている、俺はそれに期待している」
「弱さが強さ、私には理解出来んな」
「まぁ、しばらく見守りましょう」
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