第133話 出番だ

 こちらで戦う相手は、決めさせてもらう。

 真田は、そう言い、周りを見渡し、大谷の肩を叩く。

 「出番だ、大谷」


 「はぁ、何言ってるんだ、なんで俺なんだ」


 大谷は強く否定した。

 大谷の思いはもっともだ、このメンツの中では、一番実力の無い男だ、麗奈、陸、真田の方が圧倒的に強いのは事実だ。


 その思いに麗奈も同調する。

 「おい、真田、お前事態をわかってるのか、もしここで負けるような事があれば、私達のこの旅の意味はなくなるんだぞ」


 その言葉にも真田は、動じず、大谷を推す。

 「大丈夫だ、こいつで十分こと足りる」


 ジャガーの視線は、大谷にむけられる。

 大谷は、その殺気に気持ちが負け、なんで俺なんだという気持ちに包まれる。


 「いいのかそれで」


 紫のスーツの男は、最終確認し、大谷は、意を決する。


 「いいのか、真田、負けても知らんぞ」


 「大丈夫だろ、お前なら」


 真田の言葉に大谷は、一度深呼吸をする。


 仕方ない、負けるならそのまま帰れるし、大谷はそう思い構えを取る。



 ジャガーは、軽くフットワークを取る。

 打撃系か、麗奈はそう思い、少し安堵した、もし組み技計画なら、大谷に勝機はないと麗奈は思い、真田の勝手な推薦に溜息をつく。


 大谷もボクシングのフットワークを取りながら考える、少なくとも、自分の方が、強いはずはない事、普通にやりあえばタダではすまない事を。



 

 大谷は、相手と間を詰め、左のジャブを繰り出すと、ジャガーの姿が消える。


 正確には、前屈みになりジャブを避けただけだか、大谷の視界では終えなかった。


 ジャガーの左フックが右こめかみを捉え、大谷は大きく吹き飛ばされる。


 「あんな遅い左ジャブ、躱されて当然だ、本気でやってるのか」


 ボクサー最速の攻撃である、左ジャブの遅さに麗奈はあんぐりと声を開ける。


 勢いよく、吹き飛ばされダメージはないだろうが、もし追撃されたら終わっていた可能性もある。


 ジャガーは、追撃しない理由は簡単だ。

 こんな遅いジャブも、避けずに飛ばされたのもブラフだと思ったからだ。


 (そんな誘いにはのらない、寝技の方が、本業だろう、残念だか、それに付き合う気はない)



 大谷は、背中を見せながら立ち上がる。

 (クッソ、痛え、全くこんなんなら、来るんじゃなかったぜ)


 戦いの中で背中を見せるタブーも、誘いと判断するジャガー、噛み合わない戦いはまだ、始まったばかりであった。

 


 


 

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