第132話 紫のスーツとモヒカン頭

 「あんたら何もんだ」


 タクシー運転手の男は地面にへたり込みながら、冷や汗をかいていた。


 過去に韓国人に同じことをしようとした時に返り討ちにあった事があった、韓国は徴兵制がある国、一般市民に見えても強い事がる為、極力ターゲットは若い日本人観光客を狙うようにしていた。


 只の優男2人とチンピラ風な男、そして、引率の様な女性、脅せばあっさりとお金を差し出すはずだったし、お金を貰えば手荒な事もしないつもりだったが、結果として、自分達が返り討ちに合うことになってしまった。



 「さぁ、只の日本人観光客よ、質問には答えてあげたんだから、今度はこっちの番」


 麗奈はゆっくりと近づき、囁くように話しかける。

 「見ての通り私達、ちょっと腕に自身があって、それでね、ここらで、腕試したいんだけど、いい場所知らない、知ってそうな人、紹介してもいいし」


 お願いする様な素振りを見せる麗奈であったが、実際は脅迫に近いお願いだった。


 運転手が答えに窮していると、拍手と共に別の方から声が聞こえた。


 「いやはや、まぁ、ギリギリそこそこの実力はあるみたいで、良かった、良かった」


 紫の派手なスーツ、金髪の髪をオールバックで後ろにまとめた男、小脇に杖を挟んで拍手をしながら笑顔を見せる。


 麗奈が気にしたのは、そのスーツの男の横に佇むモヒカン頭に、刈り上げたサイドに卍の入れ墨をいれた眼光のするどい男。


 釣り針にかかった、陸はそう思った。


 入国したタイミングでマークされていたのだろう、あちらからアクションがあるのは、正直手間が省けた。


 「多分私達を調べにきたんですよね、いえ、確か『羅刹』ですかね」


 陸はの表情が少しだけ険しさを増した。


 「せっかく、来ていただいたのですが、私達の舞台に上がりたいなら、それなりの実力を示していただかないといけませんよ」


 「別に、戦いに来たわけじゃない、お前等の羅刹の正体がわかればそれだけでいい」


 陸は、そう答えた、情報収集が任務である事間違いはない。


 「だから、私達と同じ世界で話したいなら『実力』を見せて下さい、これはチャンスを与えているんですよ」


 意図は分かりかねるが、今はその力を見せるのが、一番早いと麗奈は理解した。


 「わかったわ、で、相手っていうのは、その卍モヒカン君」


 「彼の名は、ジャガー、私達の格闘場のDランクの格闘士です」


 麗奈は、鼻で笑う。


 「A、B、C、D、Dって、下のランクだよね、私達のこと舐めてるの、せめてAは無理でも、Bランク連れてきなよ」


 「Dで十分ですよ、これは試験ですから、ルールはなんでもあり、武器を使ってもいいですよ」


 スーツの男の視線は真田に送られた。


 「舐められたものだな、偉そうに一方的に指名できる立場か」


 真田は、手に木の棒を持っていたが、構えは取らなかった。

 代わりに言葉を返す。


 「戦う相手は、こっちで決めさせてもらう」


 


 

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