第124話 陸対麗奈 その1

 2人は、道場ではなく中庭の方で試合をする事となった。


 試合と言っても、マススパーに近く、本当の意味で試し合いといった感じだ。


 グローブにレガースを着用、ヘッドギアはしていないが、怪我の恐れは軽減させての試合だ。


 麗奈は、阿修羅の母のジャージを借りている。


 陸も動きやすい私服といった様子で、戦いに望む感じてはなかった。


 力を見せる、それだけだ。



 麗奈は軽いフットワークとジャブを見せ、柔軟をして準備ができた事を伝えた。


 立ち振る舞いからは、強者独特のオーラは感じなかった、どちらかというとフットネスのトレーナーといった感じだが、天外は注意を外すことはなかった。


 それは、阿修羅も同様だ。


 向き合うと、体格的にはあまり変わらない、陸は軽く構え、麗奈な自重を感じさせないステップを組む。

 

 

 天上院が、2人に簡単にルールを伝える、目潰しと金的、立ち関節の禁止、後、ダウンは一回でも試合を止めることと、時間は5分1ラウンドとつたえ、間合いをはなれさ手を挙げ、合図を伝える。


 

 少し離れた位置からだが、麗奈は思いきり、右のハイキックを繰り出す。

 

 届くのか


 一瞬、思考が入るが反射的に上げた腕の衝撃が、その疑問の答えとなる。


 射程外と思っていた場所からの、『完璧な打撃』であった。


 その事は天外も気づく。


 「まさに、『完璧な打撃』、自身のフォームだけじゃない、力の入れ方、距離感、相手へのタイミング含め、減点なしだな」


 その威力は、陸をガードの上から怯ませた。

 驚いたのは、陸自身もだ、その打撃は重量級のそれであったからだ、レガース越しでの衝撃とは思えなかった。


 麗奈の攻撃力は、蹴りだけではなかった、距離を詰めてのパンチでのコンビネーションでも、その『違和感』を覚える打撃は健在であった。


 気づいたのは天外、そして、それに対し答えを合わせたのは天上院である。


 「あの打撃の体重移動は修羅の基本技術の一つ、あれをこのレベルまで上げるのはまた別の話だがな」


 その発言の通り体格差を埋めるための打撃の威力を上げるための体重移動動作は、修羅の基本技術こ一つだが、そのレベルまでの底上げは天外であっても到達していない域であった。


 打撃の威力が、目方以上だ。


 陸は戸惑いながらも、対処を考える。


 威力の強い打撃と、動きを止める打撃の違いを見分ける。


 (甘かった、しかし、まだ巻き返せる)



 試合が始まり、約2分圧倒に試合を展開される陸にも、反撃の妙案が頭によぎる。

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