第123話 黒美と麗奈

 「彼はまだ『子供』ですよ、一人で行動なんて危険です、せめて私が同行します」


 麗奈はそう言うと、また一言付け加える。


 「構わないよね、『お父さん』」


 秘書の麗奈が、天上院我狼を父と読んだことに、旧友の天外も驚く。


 麗奈は端正な顔立ちはメガネを取ることに際立ち、28歳の年齢に見合う大人の女性でありながら、少し童顔というミスマッチが上手く調和されていた、天上院とは似ても似つかない。

 

 「まて、確か娘の名は『黒美』じゃなかったのか、この秘書は麗奈と以前あった時に名乗っていたぞ」


 辻褄が合わない事に天外は指摘する。


 その答えは、意味不明であった。


 「天上院に相応しいとなった時に私は『麗奈』の名を名乗っています、黒美はまだ、認められてなかった時の旧名、本当の所はあまり、世間で知られている名で行動する事にリスクがあるという事で、名を変えて生活しています」

 

 天外は、天上院の妻が先立って事を思い出す。


 「私には兄と姉もいるんですよ」


 麗奈は、天上院の秘密を淡々と伝える。


 しかし、阿修羅も陸もそこまで興味はなく、父の天上院だけ、焦り、麗奈を止める。


 「話がそれてるぞ、お前が同行したいといって話だろう」


 「そうでした、対して危険は少ないから大丈夫みたいな雰囲気でしたけど、でも、彼は一人では心許ないので、私も行きますという話です」


 心許ないその言葉に陸は少しムッとする。


 「心許ないとはどう意味ですか」


 天外や天上院から言われるならいざ知らずただの秘書に言われるのは正直良い気分はしなかった。



 「心許ないとは、『頼りないとか不安』という意味、あなたの実力じゃあ安心できない」



 「これは驚いた、まるで、貴方の方が強いみたいな言い方ですね」


 「ええ、私の方が多分強いよ、私『弟』以外に負けた事一度もないんだから、あっ、天外さん私の格闘技は『キックボクシング』なので決して天上院の流派で修羅に噛みつく訳じゃありませんので、念の為に」


 天上院流武道で戦えば、修羅と戦う修羅つまり羅刹の図式になるので、麗奈はそれを否定した。



 「キックボクシングか、お互い気持ちがひけないのであれば、やり合うしかないな、皆々構わんよな」


 天外はそう行って2人を諭すと、準備を促す、意外な対戦が始まる。


 陸は心の中で呟く

 (全員に強さを証明し安心してもらわないとな)


 対して麗奈は、やはり陸を甘くみているようで、その表情からは余裕が見える。


 

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