第122話 修羅と天上院
長い沈黙があったが、その沈黙を破ったのは、部屋の外から部屋に入ってきた、修羅陸であった。
「失礼と思いましたが盗み聞きをしておりました、申し訳ありません、無礼を承知で俺の意見も聞いて下さい」
陸のその無礼は、部屋にいる者誰も咎めはしなかった。
そして、陸は続ける。
「今、阿修羅も天外さんも国外に出るのは得策ではないかと、その相手も正攻法で倒しているとは思えない、どんな罠があるのか」
「ならば、ここは、俺が行ってきた確認をしにいくのが得策かと」
場の全員が、陸の瞳を観る、その瞳には一切の曇も迷いもなく、その覚悟が読み取れた。
しかし、1人納得出来ない者もいた。
阿修羅だ。
「そんな、危険なのは陸も同じ、だって陸も同じ『修羅』なんだよ、あぶないのはかわらないよ」
そんな、阿修羅を天上院が諭す、本当は天外の役目だが言いづらいと思い配慮して間入ったのだ。
「残念だが、お前や天外の『修羅』と陸の『修羅』は違う、本家と分家、狙う意味も変わってくる、それに、正当伝承者以外の修羅はどちらかというと『羅刹』に近い、引き込もうとしても殺す程の事はしないだろう」
阿修羅は、学園長でもある天上院を睨みつける。
「陸兄は、同じ修羅だ、羅刹とは違う」
「そうか、同じであるなら、受け継がれる技が選別されているのは、どういう事だ」
天上院は、厳しい物言いをあえて選んだ、阿修羅は幼い頃から特別に技をいくつか伝授されている、それは次期当主という事もあり、修羅の掟の一つでもあった。
阿修羅は言葉に詰まる。
そんな2人の間に入る様に陸が仲裁に入る。
「俺の技と阿修羅の技は違う修羅、それは事実だ阿修羅、別に俺の修羅を羅刹と言った訳じゃない、『近い』と言っただけだ、本家修羅以外は、羅刹になり得るのは、知ってるだろ、それに、それを一番理解しているのは、天上院流武術だ」
陸は天上院にも目をやる、天上院流も実は戦後、修羅から技を得た武術、実際は修羅の技というより鍛錬方を習ったので、根の部分を共有している感覚ではあるが、亜流の修羅と言われればそうなるのだろう。
陸が冷静に会話をしたので、阿修羅も落ち着きをみせる。
皆、陸に任せようかそんな空気の中1人反対の意思を見せた。
「いくらなんでも、皆さん、簡単に考えすぎではないてすか」
秘書の麗奈であった。
麗奈はメガネを外し、天外と天上院の顔を見る。
その眼差しは、強者2人を前にしても怯む事は一切なかった。
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